お名前は知っていたものの、初めて読む作家さんでした。
なるほど〜!一番有名な作品の表紙のイメージから勝手に爽やかタイプの作家さんかと思っていたのですが、コミカル+少女漫画タイプでいらっしゃったんですね!
1話目の「この縁談ぶち壊してやる——!!」からの「チュキ…」までのテンポ感たるや、まさしく即落ち2コマ(笑)。シュールギャグ系の話かな〜とここを読んだ時点では思っていました。
でも、本質(?)はド王道の少女漫画で、1話目のシュールギャグ風味はだんだんと薄れていったように思います。
主人公2人の恋路は案外すんなり両思いに至って(2人とも素直ないい子だったので特に拗れることもなくくっついた)、あとはスカッとジャパン^_^
しんどくなりがちな、オメガであることの苦悩もテーマにはあったのですが、主人公がすでに前向きに逞しくなった後だったので、特にドラマチック要素につながるわけでもなく。
肩の力を抜いて、ゆる〜い話を読みたい時にぴったりです。
読み終わった後に帯を見て思ったのですが、書かれていた「SEX禁止!?」も「運命の番」も「そういやそうだね…」程度のスパイス(?)だったので、先に見てたら先入観に繋がってノイズになってたかも(笑)。
すごい、なんというか、振り切れた作品ですね。
楽しく書けたのであれば何より、という気持ち。
ただ、作家さんの作風の持ち味が活かしきれてないのではないかな〜…と感じました。
作家さんの独特のコミカルさと、色っぽさを要求される設定の相性はあまり良くないと感じました。
1番の問題は受けかな…?
凄い元気(笑)。能動的なドM。明るい。エロシーンはエロいけど、キャラクターに色気がない。
ただ、それが悪いわけじゃなくて、コミカル全振りの作品だったらハマるキャラだったと思う!とにかく明るい日常モノとかだったら絶対好きなキャラ!
でも「ドSを演じてた人間が、隠していたドMを、ゲイではないのに男に暴かれてしまう」なんて設定を前にしたら、私は色っぽさを期待せずにはいられなかったのです。
多分、トキメキ・ドキドキシーンだけでも、キャラクターが落ち着いた言動をしてくれたら違う味がしたんだと思うんですが、ずっと元気で…。
なのでずっとハマれない感覚に脳が支配されたまま終わってしまいました。
あとは、突然生えてきた感がある元ドM設定とか、元ご主人様=上司とか、その設定必要だったかな…??こういう展開にするにしても、もっといい設定あったんじゃないかな…??という気持ちが拭えなかったです。
でも、まぁ、楽しく描かれたみたいなので、なによりです。
MODSを気に入ったので、スピンオフにあたるこちらも購入。
一言で言えば、まさしく神作品でしたね。
相変わらずクールでどこか廃れた雰囲気ながら、本筋は純愛。読んでいて胸が苦しくなる作品でした。
以下がっつりネタバレ含みます。
愛した人の死を自分のせいだと悔やみ、真っ暗な鳥籠の中に囚われていた春さん。
自分の存在意義、未来、何も見えず自暴自棄になって暴れる雪鷹。
その本質が優しい人であるがゆえ、自らが犯した罪に弱り苦しむ時雨さん。
MODSの時からシロにとってとっても大きな存在だった時雨さんが如何に周りを救ってきたのかを知ることができました……なのに(結果として)この人は救われなかった。切なすぎるキャラクターでした。
本カプではありませんが、時雨さんに思いを馳せてみようと思います。
時雨さんは本当に優しい人で、生まれが違えば、愛する人を一生一途に愛して共に笑いながら暮らせるような人だと思います。
ただヤクザの家系に生まれてきてしまったがゆえ、この世の暗部に囚われて抜け出せなくなってしまったのかと思うと、あまりにも切ない。
また、春さんもシロも雪鷹も時雨さんに助けられたけれど、そのお返しとして春さんは彼の弱さを受け止めることで束の間の安らぎを与え、シロは未来への希望を与えてくれたのかな。そう思うと少し救われたような気持ちになれます。
シロと逃げて新しい未来を…この願いが叶わなかったのも時雨さんという存在の悲しさを一段と深めているように思います。キャラは深まったと思うけど、思うけど!余りにも切ない…!
雪鷹にとっても唯一自分に優しく接してくれた時雨さんは大きな存在だったと思いますが、時雨さんが弱っているときに突き放されて絶望してしまいます。
ただ、時雨さんがいなかったら雪鷹はもっと荒んでいたと思うし、春さんにあれほど真っ直ぐにぶつかることはできなかったと思う…やっぱり大きすぎるよ時雨さん…
時雨さんのことを考えれば考えるほど苦しくなって泣きそうになります>_<
次はメインカプの二人について。
愛した人に11年間も囚われたままの春さんと、誰からも愛されない自分の存在意義を見失っている雪鷹が、まるで化学反応を起こしたかのように変化していき、現実に根を張って互いを愛そうとするその姿があまりにも愛おしい、そんなカプでした。
大きな時雨さんという存在を心の中に抱えている春さんが、不眠症の薬無しで眠れてしまうほど優しく包み込んでくれる雪鷹。
誰からも愛されない、きちんと向き合ってもらえない、そんな感情を抱いていた雪鷹にちゃんと向き合ってぶつかってきてくれる春さん。
二人の中で互いの存在が大きくなっていく描写がとても美しかったです。
特に、ヤクザとの繋がりを切りたい春さんを助けるために、雪鷹がなりたくもないヤクザになるという終盤の展開が一番暖かいのに切なかった。つい、それじゃあ二人はくっつかないじゃないか…!と叫んでしまいました。
雪鷹の誰かと一緒になって幸せに…なんていう願いは、優しいようで残酷に聞こえました。春さんは雪鷹と一緒に幸せになりたいと願っているのにぃい!と。
でも神様(作者様)の優しさで、最後にはくっついてくれたので良かった良かった。愛してると伝える春さんの背中があんまりにも寂しそうで泣きそうになりましたよ、もう。…生きてて良かった!
エロシーンも◎でした。かなり分厚いコミックスの割には少なめですが、一回一回のエロさはすごい。(笑)
切ないシーンも多幸感あふれるシーンもあり、最高でした^_^
愛を知らずに育ったシロに熱情を持ってぶつかる虎。
唯一愛した人を失ったシロのまっすぐな虎の愛に怯える姿があまりにもいじらしくて、涙が出そうでした。
そんなシロを包み込むには虎はあまりに真っ白で、私の中で「そっとしておいてあげて…」と思う気持ちと「助けてあげて…」と思う気持ちの両方がせめぎあって苦しくて仕方なかったです。
シロの名前は最初は白というより黒だな、と思っていたのですが、読んでいくうちに、いや真っ白…この子は真っ白だわ…と思い直しました。
先生のシュッとしたカッコいい絵柄と退廃した雰囲気で少し惑わされるけれど、切なすぎる純愛物語でした。彼らが陽だまりで微睡むような関係になってくれて本当に良かった。
ただ、どうして春さんがシロにウリを続けさせていたのかは疑問でした。
ウリしか知らないシロからそれを取り上がることはできなかったのか。シロに陽が当たる世界での生き方を教えることはできなかったのか。
まぁ春さん自身が元ヤクザで、足を洗ったとはいえその筋の仕事をしている身だから、無理だったのかな。
……なんて考えていたのがNights before nightを読む前の私。春さんの心の内を知れるのでMODSを読んだ方は是非読んでみてください。
可愛い! そういう感想がまず出てくるような作品。
所々織り込まれているコメディチックな描写のおかげが非常にテンポがよく、また起承転結がはっきりとしていて、読んでいて爽快さを覚えます。
エロも過不足ない描写に収まっていて、全体的にスッキリとまとめられている印象ですね。濃厚なエロをお求めの方には不十分だとは思いますが… 私的には最初のセックスのみさきが可愛くて仕方ないので、それだけで満足です。
攻めである御門の懐の深さというか、ここまできたら寧ろ無関心なのではと思うほどの優しさには感動します。彼は彼でカッコいいのにちょっぴり残念と言った具合に可愛いキャラクターになっています。
ただストーリー自体には捻りがないのが少し残念なポイントかと。見方を変えれば、安心して読むことができるストーリーとも言えますが。キュンキュンしたい気分だな! という日に読むのがオススメです。
話は変わりますが、こちらのドラマCDも最高にみさきが可愛いので非常にオススメしてます!
ジェットコースターのような展開と、まるで綱渡りをしているかのような不安定な関係。
上では巽と三木の関係が変質していく様子が描かれているだけですが、非常に先の展開が気になる上手い構成になっています。
痛いセックスの描写も多く、それも愛情なんてないような、読む人を選ぶ作品であることは間違いないでしょう。
しかしながらダークで痛々しく、ぐちゃぐちゃでドロドロな物語が大好きな私にとって最高の作品です。
プレイ自体もあまり酷すぎると感じるようなレベルではないと私は感じました。
もし、私と好みが被っている人ならば非常に楽しめる作品になっていると思います。
ただネタバレになってしまうようですが、これだけは言わせてください。甘々でハッピーな展開を求める人には絶対に向いていない。王道とは離れた、路地裏のような物語です。