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chuukagai no kurosuishou
真式マキさんの本を読むのは3冊目です。
何だろう?この感じ……読んだ本の全てがかなりドラマチックと言うか『異常(下手すれば『無理目な』ほどの異常さ)な状況』なんですよ。
これだけ異常な状況を書いていて、それを『物語の約束』として読者に信じ込ませる筆力を持っているのですから、もっと劇的に盛り上げる方向にお話を持っていくことだって出来るんじゃないかと思うんですよ。でも、真式さんって、お話を盛り上がらせないんですよね。
だからこの『熱くない感じ』っていうのは確信犯だと思うの。
失礼を承知で、私が付けた真式さんの二つ名を書きますね。
曰く『低体温の作家』。
もうひとつ、この方の特徴は、お話の底に常に不穏な空気が流れていること。
「お?BLだよね?あたし今、BL読んでいるよね?大丈夫?これ、ちゃんとハッピーエンドになる?」と、今回も何度不安になったことか。
登場人物の殆どが(モラルの基準が『普通』と違っているから解りづらい場合もあるのですが)『純』で『一直線』なので、逆にハラハラするのよね、この不穏さが。
そのくせ、登場人物に向ける眼差しは優しいんですよ。
だから、冷たいんじゃないんです。熱量が低いの。
そして『完全なるハッピーエンド』っていうものを書きたくないのかもしれないなぁ、と思います。
それは真式さんの照れなのかもしれないし、もしくはとんでもなくリアル志向なのかもしれないし、私にはよく解らないのですが……
ジュエリー作家の青は人が苦手。大好きだった母は子どもの頃に病死し、尊敬する父は知人に騙され、脆いくせに汚い人間というものは、青にとっては恐怖の対象です。人が沢山いる所には、帽子とストール、マスクで武装しないと出られないほど、彼は他人が恐いのです。そんな彼が納品の際に立ち寄る中華街の茶房で、作り物の様に美しい青年に声をかけられます。真琴と名乗るその青年は、以前から青が気になっていたと言い、作り直す予定の青の作品に対して的確な批評をし、ずっと話をしたかったから嬉しいと礼を言い、そして「僕とセックスしますか?」と告げます。驚いて逃げ帰った青ですが、洗練された物腰とは印象の異なる汚れのない風情と、どこか世慣れない真琴がどうしても気になり、彼に会うために茶房を再度訪れます。出会った真琴は、自分には主人がいると告げ、彼を迎えに来た『主人』東方は「真琴はセクサロイドだ」と青に言います。その後、真琴も自分はセクサロイドだと認めた上で青に純粋な好意を向けて来ます。「自分が存在する意味はセックスだけだ」「綺麗な心の青が好きだ」「セックスは肉体的快感を得るだけのものではない」と言いつのる真琴に、青はどんどん惹かれていくのですが……
うーん、ちょっと書いただけなんですけれど、哲学的ですよね?
事故によって生まれ変わった真琴は『5歳』の設定です(セクサロイドなのに!)。だから青臭いことを恥じらいもなく言うんですよ。強さとは何か?人間とはどういうものか?愛とは?そしてセックスとは?
熱量が少ないから良いんです。
これ、ドラマチックに語られたらかなり暑っ苦しくなっちゃうもの。
ハラハラさせたくせに、結構肩すかし的な『問題の解決』も、むしろ「劇的じゃないのがイイ」と。
前作の感想にも書きましたが、この熱量のなさを好む人がマジョリティだとは思いません。でも、個人的には真式さんには「この方向で書いていって欲しいな」と思います。
サキとかロアルド・ダールとかフレドリック・ブラウンとかと、ちょっと似た匂いがするんですよね(あれほどブラックではないですが、仄かに)。
そして、BL界の『ビックマイナー作家』になって欲しいな、と思っているんですが……
ああ、長くなっちゃったよ。ごめんなさい……
初読み作家さんです。
試し読みで興味を引かれて購入しました。
で、こちら、中華街が舞台となるからか、その設定からか、何だか浮世離れした雰囲気なのです。
その中で語られる、主人公達の純粋なラブストーリー。
セックスの為だけの存在である真琴。
そして、人間恐怖症の青。
二人が恋に落ちたのは必然だったのかー。
失礼ながら、やや盛り上がりに欠ける印象はあるのです。
が、主人公である青のひたむきで純粋な想いなんかに心を打たれるんですよね。
まぁそんなワケで、個人的に好みの作品でとても萌えました。
内容ですが、中華街の茶房で出会った謎の美青年・真琴×人間恐怖症のジュエリー作家・青による純粋で真っ直ぐなラブストーリーになります。
シリアス寄りです。
仕事での納品帰りに立ち寄った中華街の茶房で、謎の青年・真琴と出会い、親しくなった青。
人間恐怖症の自分が、真琴には心を許せる事に驚きを感じます。
心を通わせ合い、ごくごく普通の恋人同士のような時間を過ごす二人。
しかし、真琴と青が共に生きられない理由ー。
実は真琴は、中華街の娼館で生きるセクサロイドでー・・・と言うものです。
こちら、二人が出会って早々に、真琴の主人である東方から彼がセクサロイドだと告げられます。
正確には、事故で亡くなった青年の身体と、人工知能で動く生き物なんですけど。
真琴と言う存在ですが、生まれてから5年と言う歳月しか立っていないんですね。
そのせいか、それとも存在理由からか、すごく純粋なのです。
真っ直ぐで。
過去の経験から人間恐怖症の青。
しかし、純粋で無邪気な真琴に対しては恐怖心を覚えず、いつしか心を惹かれてゆくー。
キモとなるのが、セクサロイドと人間が、恋を出来るかなんですよ。
このあたりがとても丁寧に書かれてまして、純粋で真っ直ぐな気持ちを青に向ける真琴ー。
そして、こちらもまた、純粋な愛を真琴に向ける青。
人間ですらないと迷いながらも、自分は真琴を愛していると、自身の気持ちを真っ直ぐ見つめる青に、心を打たれるのです。
また、セクサロイドである自分が、好きな相手に与えられるのはセックスだけー。
だからこそ、性的快感だけでは無い、誰かと交わる事で得られる幸せを知って欲しいと、とても純粋な気持ちで青を求める真琴。
なんだかですね、二人のあまりに純粋な想いに、胸が痛くなっちゃう感じなんですよ。
私は普段、エッチシーンを「エロいな~」とウハウハ読んでますが、エッチって、愛を確かめ会う為の神聖な行為なんだと、改めて思い出させてくれると言うか。
なんかもう、これまでのエロシーンを邪な目でばかり見ちゃってて申し訳ない・・・。
と、互いに心を通わせる二人。
しかし、セクサロイドである真琴は、仕事として客と寝なければならない。
また、そんな中で突然、真琴に異変が起こりー、と話は続きます。
で、この後ですね、とある衝撃の事実が分かります。
展開としてはとても面白いのです。
が、惜しい・・・!!
これだけのネタなのだから、もっと読者に対して、劇的に明かして欲しかったと言うか。
何だろう・・・。
あまりにアッサリと簡単に明かされちゃうので、衝撃の事実のハズなのになんかサラッと流されちゃうんですよ。
あと、娼館の主人である東方。
彼がイマイチ理解に苦しむと言うか。
好い人にしちゃわず、最後まで悪人のままが良かったんじゃないでしょうかね。
じゃないと、彼のやってる事が矛盾しちゃう気がします。
真琴のことを本当に思ってるなら、そもそもセクサロイドとして働かせないよ・・・。
これまで、この透明感のある独特の雰囲気で酔わせてくれただけに、終盤でのちょっと強引過ぎる持って行き方やご都合主義に終わっちゃった所がもったいない。
と、ちょっぴり引っ掛かる部分はあるものの、全体としてのストーリーや、二人の純愛には大変萌えました。
*初読み作家さんではありませんでした(>_<)
デビュー作、めちゃくちゃ好きです。
Ciel先生の挿絵目当てで購入したものの、なかなか読めずにようやく。中華街が舞台になる、黒髪長髪謎イケメンと人と交流を持つのが苦手なジュエリー職人の、ちょっとファンタジーじみたお話でした。本編260P超+あとがき。萌え上がる?というものはあまり感じず、朝もやの中で夢でも見ているのかといった不思議な感じなお話でしたので萌にしました。
週に1度、納品のついでに立ち寄る中華街の茶房。この数か月の間に何回か目にしたことのある美形スーツイケメンが今日も座っています。リテイクで持ち帰るところだった宝石を見かけて、その男は声をかけてきたのですが「何回か見かけてとても気になっていました。どうやって話しかけたらよかったのか分からなかった」と告げてきて・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
攻めが主人と呼ぶ男、受けの年の離れた兄みたいな存在の男 ぐらいかな。
**内容にふれる感想
主人と呼ばれる男も、攻めも最後の最後まで、ちょっと常人離れしているように感じられて、中国マフィアさん?と思いました。そんなヤさんものでは無かったので、それは良かったんですけど、とにかく最後の最後まで、中華街の怪しい煙の向こうのお話のように、ちょっと夢がかった印象で、不思議テイストでした。
受けさんは手酷いコミュ障系ですが、キレイな攻めさんにはやっぱり惹かれちゃったんでしょうね、最初っから他の人とは違う感じで、少しずつ心を開いていきます。ちゃんと攻めに近づこうと自分から行動起こしているので、好印象でした。
攻め受けキャラは良い方だと思うのですが、うーん好き~といった萌え上がりまで神秘の煙にくるまれて、どっか行ってしまったように思います。不思議テイストお好きな方には、読んでみて~とおススメしたいお話でした。