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mimotohikiukenin
「すっごく好み!」と言うほどではないのに『共鳴』が心に引っかかってしまっていたので手に取った今作。実は途中までは共感できずに「?」と感じる部分も多かったのです。
ところがどっこい、話が展開し出してから、丁寧な心理描写に引き込まれる、引き込まれる……気がつくともう泣きそうに。良いものを読ませていただきました。
日下部遼一は15歳の時、母とそのお腹にいた妹を暴走する自転車に轢かれ亡くしている。新しい家族の誕生を楽しみにしていた遼一は自暴自棄に陥り、高校も辞め、喧嘩で金を巻き上げたり、暴力団の下っ端でこづかい稼ぎをしたり、男に体を売ったりと荒んだ生活をして来た。彼の望みはただ一つ。母を殺し、家族の幸せを踏みにじった杉本順を見つけ出し復讐をすること。ある日、体を売った男に乱暴されそうになりやり返したことで警察に逮捕された遼一は、釈放の為の身元保証人を求められる。少し前に亡くなった父から「何かあったら頼れ」と言われていた片桐智行という男が引き受けてくれたが、今まで会ったこともないのに「放っておけない」と親切に世話を焼く片桐から「復讐のために生きるのは傷をさらに広げることにしかならない。君が愛し、君を愛したものの代わりになりたい|と告げられ、遼一は激しく動揺する。今までの生活に戻ろうと、行きずりの男に身体を売ろうとした遼一はかつてない嫌悪感に襲われて逃げ出した後、母と同じように自転車に轢かれそうになってしまう。激しいショックを感じた遼一が向かったのは片桐のマンションで「あんたの顔を思い出したら何もできなくなった。だから、あんたが責任を取ってくれ」と言うのだが……
ただ頑なに復讐をすることだけを考えて来た遼一が、片桐の献身に触れることでどんどん『ほどけていく』様が、痛々しくも感動的なんです。本当は素直な良い子なんですもの。
それと同時に『片桐が何者なのか』という謎は最終盤まで明かされず、これがね、とってもサスペンスフルなんですよ。一旦、幸せに近づく遼一の前途が安心できないんです。
そんでもって「そう来たかーっ!」という謎の解明の後に「だったらこの後、どうなるの?」という、不安でいっぱいになる正体なのね。
だから、最後まで気が抜けない。
私、長距離移動中に読んでいたんですが、もう、我を忘れちゃったもんね。
完全に心を奪われてしまっていました。
私は「面白ければ色っぽいシーンがなくても平気」なタイプなのですけれど、このお話のセックスシーンはなくてはならないものだと思いました。
『同じセックスでも、心が痛くなるものと、そうでないものがある愛とはそういうものだ』ってことが書いてあるのですもの。
いや、ホントだよね。
133ページ、10行目の遼一の科白!
同じような科白を何度も読みましたが、こんなに相手を必要として縋り付かなければならない心が言わせているものは、初めて読んだような気がします。
是非、ご一読を!