イラスト入り
warui otona
電子短編。
年若い少年を喘がせる中年男性・島崎。
少年は、島崎の同級生の息子だ。
そして、島崎は少年が女の胎内に仕込まれた瞬間に立ち会っていた…
…とは一体どういう関係性なのか。
少年・出流(いずる)の父親は出雲。
出雲は政治家の妾の子で、島崎は代々医者の家の子。2人は名門校の同級生。
物語は2人のゆがんだ関係性を炙り出していく。
出雲は島崎がゲイである事を脅して、自分が女を抱く時に呼び出しては見せつける。
一方島崎はそんな脅しなど全く意に介さず、逆に面白がって出雲の言う事を聞いているテイ。
と言うより出雲の隠された欲望を嗅ぎ取って、女との行為の最中の出雲のアナルに指を挿れ、前立腺を責め立てて。
傲慢な出雲と、内面は出雲よりもはるかに残酷な島崎。
行動と精神のバランスを崩したのか、高校生の出雲はその後自殺する…
さて、13年後。
島崎はその時に作られた子供である出流を引き取り、出流の方から自分に堕ちてくるのを待っている。
そして思惑通り…
この島崎という男の底知れない人間性が怖気持ち悪い。
今は大学の准教授になっている秀才の、本当の人間性。タイトルの「悪い大人」の一言では言い表せない深い闇。
ただ、ラストの一文で。
島崎の方にも隠されていた、いや自分でも気付かなかった気付こうともしなかった愛と哀しみがあふれる。多分島崎も遅すぎたんだと思う。
これから島崎と出流はどこへ向かうんだろう?
短編ならではの「答えを出さない」感じにゾクっとする。
発売当時に読み、2年ぶりに読み返しました。
やはり神評価。前回と同じ。
陵辱系が好みというのもあるけど、それだけじゃダメ。
痛さの中にもラブがないと。
そういう意味でも、本作は条件をみたす作品。
最後の一文が秀逸。
グッときた。
是非、手に取ってもらいたい作品です。