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otoko futari de 12kagetsu gohan
最近、書店さんのツイートで紙本の存在を知り、さっそく購入しました。ちるちるさんのサイトではなぜか「電子専門」になっていました。私のような紙本派の方にも読んでもらいたいので、微力ながら修正を依頼しました。電子版が先行だったのかしら。
物語は、亡き祖母の古い日本家屋に一人住む眼科医・遠峯の元に、高校の後輩で、都会の生活に疲れた駆け出しの小説家・白石が居候することから始まります。自然豊かな芦屋が舞台。
タイトルと帯からレシピが主の作品かと想像したのですが、違いました。アラサーの好男子二人が、気取りない手料理と地元の隠れた名物惣菜やスイーツをモリモリ食べる“ごはん小説”です。恋もエロもありません。でも、美味しい!って食べる二人が微笑ましく、こちらまで笑顔になります。
料理の作り方は、文中にコンパクトに書かれています。イラスト付きのものもありますが、細かな分量はなく、コツを抑えたシンプルなもの(きっと、このコツが肝なんですね)。美味しそうだし、作ってみたくなります。
神戸スイーツも登場しますが、高級グルメ的なものではなく、季節感のある、おそらく椹野さんお気に入りのものが紹介されていて、地元愛を感じます。食べてみたいです。
ドラマティックなことは何も起きないのですが、白石が少しずつ立ち直って新しい小説を書き上げたり、散らかり放題だった遠峯の家が片付いたり。二人の距離も近づいて、読後はほっこり心が温かくなります。“美味しいごはん”は、体にも心にも大切なんだな、元気をくれて、暮らしを整える力があるのだな、とあらためて思いました。
白石は楽しんで料理するし、遠峯も自分がスイーツ好きなので、「相手のため」と気負っていないのが、読んでいて心地良いです。互いへのさりげない気配りがちょうどいい。
それに、二人はいつも一緒に食べるわけではなくて、一人飯の時も食べることを楽しんでいるのが、よかったです。
二人の同居の相性は、とっても良くて、「ラブはないのに相思相愛みたいで不気味だなあ」、「不気味やけど楽しいからしゃーないなあ」、なんて笑っています。
でも、遠峯が数日留守にしたら、白石は寂しくて料理する気にならなくて。遠峯も、他人の気配があると気が休まらないたちだったはずだったのに、白石と暮らすのを心地よく感じています。二人が恋に発展する可能性はゼロではないな、と思いました。
白石が小説の書き出しに試行錯誤したり、気分転換のために無心に料理したりと、椹野さんの執筆活動がほの見える描写も、興味深いです。こうして日々一人で原稿に向かっていらっしゃると思うと、作品を読ませていただくのがしみじみありがたいです。
椹野さんのツイートによると、料理の試作とお店の取材に大変な手間がかかったそうで、今のところ続編はないそうです。残念。
二人のその後が読みたい気もしますが、これから恋に発展するかも?という期待がかえって萌えを感じさせて、ここで終わりでもいいかなという気もします。ショートストーリー、いつか読めたら嬉しいですけど。
ひたきさんの描く遠峯はイケメンだし、白石は可愛いです。お料理とスイーツもすごく美味しそう。私も美味しいものが食べたくなってきました!エリンギ入り白菜ミルフィーユ鍋、作ってみようかな。