イラスト入り
eizanyawa
最近、短編小説の良さに気がつきました!
これもすごく良かったーー!世界観が耽美で物語に厚みがあり、ラストはしびれました。エロがなんとも官能的。
鬼×美貌の稚児、救済の物語。
不憫な生い立ちで、その美貌ゆえに毎晩年老いた高僧の夜の相手をさせられている受け・香寿丸(こうじゅまる)。心無くただただ性具として扱われる辛い日々の中で、鬼と出会います。
身体を差し出す代わりに願いを叶えてもらうことに…。高僧は不能なので、鬼との交わりで新しい快感を得ていく様も官能的でしたし、2人それぞれの救済になる展開も素晴らしかったです。
2人のやり取りの中で、鬼が容姿、動作、考え方すべて人間とは違う異質の存在であると感じさせられます。それでいて、段々と鬼のことが好きになってくる。短い物語の中でしっかりと説得力を持たせる先生の筆力がすごいなと思いました。
全体的に甘さ控えめ、ヒリヒリとした空気が漂うけれど、2人の間にほのかに甘さや優しさが漂うところは心が和むシーンでした。
また、激しい絶望からの怒りや憎しみが中和されるのでなく、きっちりやり切るところも良かったです。
ラストは歴史の闇を感じる終わり方で、とてもしびれました!
夢乃先生の短編で「鬼の子の 人恋ふる」という作品があるようなので(関連性は無さそう)、そちらも読んでみたいと思います。
比叡の山寺を舞台に繰り広げられる物語です。
鬼の出てくるファンタジーではあるのですが、歴史もののリアリティがあり短篇だけれど読み応えも抜群でした。
文章や表現がなんとも耽美で、話の雰囲気にも合いますし挿絵もぴったりでした。
ーーーーーーー感想とネタバレーーーーーーー
山寺で年寄り坊主の専属稚児として奉仕し、そのことに絶望していた香寿丸。
1日の役割を果たし、身体を清めていた彼の前に現れたのは、異形にも関わらず美しい美貌をもった鬼でした。
香寿丸が中性的な美しさなら、鬼は男性的な美しさがぴったりくると思います。
鬼は、心を読むことができ、どんな感情を持っているのかも筒抜けです。
鬼の美しさに驚きつつ「食われたい」と思うものの、”食われることを簡単に考えている人間を食う気にはならない”とあっさり去られてしまいます。
絶望の日常に戻ったかと思えた香寿丸の前に、鬼は時々現れては人外ならではの思考を展開していきます。この部分が、人外感を強くしていて良いなと思ったポイントでした。
鬼には願いを叶えることができる力があり、1日だけ奉仕を休むという願いを叶える代わりに自分の身体を差し出した香寿丸。彼との行為に、奉仕とは違う気持ちよさを覚えます。
鬼が徐々に優しくなってくる心境の変化は最後にならないとわからないのですが、不憫な香寿丸が鬼の優しさに触れるところは甘い雰囲気が漂っています。
ある事がきっかけで、香寿丸は絶望からの大きな怒りを覚え鬼に自分の願いを叶えてもらいます。
鬼と出会ったことがきっかけで、自分の状況から抜け出していく香寿丸。
「食われたい」と思っていた気持ちが変化していく様も良かったです。
鬼にも彼なりの過去があり、香寿丸は稚児としての境遇が不憫すぎたので、お互いに出会って幸せな結末を迎えたので良かったです。