イラスト入り
eizanyawa
比叡の山寺を舞台に繰り広げられる物語です。
鬼の出てくるファンタジーではあるのですが、歴史もののリアリティがあり短篇だけれど読み応えも抜群でした。
文章や表現がなんとも耽美で、話の雰囲気にも合いますし挿絵もぴったりでした。
ーーーーーーー感想とネタバレーーーーーーー
山寺で年寄り坊主の専属稚児として奉仕し、そのことに絶望していた香寿丸。
1日の役割を果たし、身体を清めていた彼の前に現れたのは、異形にも関わらず美しい美貌をもった鬼でした。
香寿丸が中性的な美しさなら、鬼は男性的な美しさがぴったりくると思います。
鬼は、心を読むことができ、どんな感情を持っているのかも筒抜けです。
鬼の美しさに驚きつつ「食われたい」と思うものの、”食われることを簡単に考えている人間を食う気にはならない”とあっさり去られてしまいます。
絶望の日常に戻ったかと思えた香寿丸の前に、鬼は時々現れては人外ならではの思考を展開していきます。この部分が、人外感を強くしていて良いなと思ったポイントでした。
鬼には願いを叶えることができる力があり、1日だけ奉仕を休むという願いを叶える代わりに自分の身体を差し出した香寿丸。彼との行為に、奉仕とは違う気持ちよさを覚えます。
鬼が徐々に優しくなってくる心境の変化は最後にならないとわからないのですが、不憫な香寿丸が鬼の優しさに触れるところは甘い雰囲気が漂っています。
ある事がきっかけで、香寿丸は絶望からの大きな怒りを覚え鬼に自分の願いを叶えてもらいます。
鬼と出会ったことがきっかけで、自分の状況から抜け出していく香寿丸。
「食われたい」と思っていた気持ちが変化していく様も良かったです。
鬼にも彼なりの過去があり、香寿丸は稚児としての境遇が不憫すぎたので、お互いに出会って幸せな結末を迎えたので良かったです。