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hangure hanamuko to kitikuna wana
『電子専門』の書籍って冒険しやすいんですかね?
いや、このお話もかなり変わっていたんですよ。
「ここが好きだーっ」と、空に向かって大声で叫びたいっていうタイプのお話じゃないんですけれどね、何か気になってズルズル付き合ってしまったら、最後に「思っていたのとは違う処に連れて行かれちゃった」的な、どんでん返し、どんでん返し、どんでん返しが続きます。
萌えは少なかったんですけれど、あまりにも予測が裏切られ続けて、変な快感が生まれてしまいました。
『爆発しないトンチキ』とでも言うか。
これ、ちょっと癖になりそうな感覚です。
暴力団のフロントの金貸しをやっている亮司(元族)が、返済が滞っている客である漣の所に回収に行く訳です。「返せなかったらウリに落としてやる」という気持ちで。ところが逆に、亮司がハメ撮り画像をネタに脅される羽目になっちゃう。仕方がないので部下に「俺のオンナにする」と宣言して漣を軟禁するのですが、こいつ、新婚気分丸出しで朝に味噌汁を作るわ、お弁当を持たせるわ、お掃除ロボットを欲しがるわで、亮司としてはどんどん気が抜けて行ってしまうんです。そして、ちょっと目を離すと、マンションのベランダから飛び降りるんじゃないか、とか、手首切るんじゃないかとか、やたら危なっかしいマネをして、放っておけない。おまけに、ギャンブルで身を持ち崩したはずなのに、他のシマにある雀荘で馬鹿勝ちをしたりするので、亮司は彼に振り回されっぱなしです。そうこうするうちに、上部団体の勢力争いに巻き込まれて、亮司に絶体絶命のピンチが訪れるのですが……
『漣の不安定さ』が、次々と読んでいるこちらを裏切って行くのがこのお話の面白さなんだと思います。暴力団のケツ持ちのはずの亮司が、思いもかけず『真面目ないい男』なものだから、余計に。
見た目や性格が、所謂テンプレ的な作品とは受け攻め逆なのも『据わりが悪い』形で書かれているのもそう。
この不安定さを、種明かしのラストまで引っ張っていったのは、まさしく力業。
私、このお話は「決して内容を忘れないだろうなぁ」と思います。