電子限定
owari no nai koi wo ageyou
2002年8月に小説B-Boyに掲載された高遠さんの作品。未読でしたので勢い込んで読了。リブレは単行本未収録の作品を電子化していますが、読んでいないものも多いためファンとしては嬉しいです。
「もう恋はしない」と決めているイラストレーターの槇(無愛想メガネ)が、独身用キッチンツールのシリーズの企画で一緒に仕事をすることになった葦原(気配り上手のワンコ)に、押しつけがましくない優しさでアプローチされ気持ちが動いていく様を、高遠さんらしい繊細な表現で物語っています。
ストーリーとしてはそれほど目新しいものではないと思うのですが、槇にすんなり感情移入が出来て「ああああ、槇、幸せになって欲しいっ」と思わせるところが高遠さんの上手さ。
槇が恋をしないと決めるのは、勿論、哀しい結果に終わった恋愛を経験しているからなのですが、失恋したから哀しいのではないのです。ここでは書きませんが、その理由、解る。
恋は高い所から落ちる様にいきなり始まって、布がすれきれる様に少しずつなくなっていくもの。だからこそ、終わりのない恋は全ロマンチストの夢だよなぁ、と思う訳です。
美しいドリームを見せてくれた高遠さんに拍手!
攻めの葦原がとても魅力的で、かなり早い段階から引き込まれた。最初はストーカーを疑ったり裏がありそうだと思ったりして、何かがありそうに見えたが、どちらに転んでも良い男には変わりないと思えるくらい好きになる。
受けの槇は人間味がなさそうでちゃんとある感じが良かった。
ストーリーは地に足が付いているので安心して読める。二人の関係性同様、葦原が物語を引っ張っていってくれる。強引さとあざとさを見せながら、とても頑張っているのが伝わってきて、応援したくなった。
順調とはいえないまでも関係性を進めていく二人に萌え、ついに槇の気持ちと涙があふれ、これから!というところで急激に萌え度が下がる出来事が。
杉下のアレは一体何だったのか……。槇の反応もここだけ何か変。これ入れる必要あったか?と一気に冷めてしまった。ここまではめちゃくちゃ良かったのに!
女子キャラを可哀想なままにしておかない、振られても仕方ないところまで持って行くという、BLの嫌なところが存分に出ているシーンだった。
伏線っぽく書かれていたいくつかが特に回収されることもなく終わっていたのも気になる。
「この男は、たとえば人を傷付ける時にも、こんなふうに笑うんじゃないかなと思った」この一文がとても好き。そういうシーンが見たかった。