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kimi no shohousen
もうかれこれ十数年前、私が高校生のときに購入し、その後の人生でも転機があるたびに、何度も何度も読み返している作品です。旧版も新装版も電子書籍も全部持っていて(旧版と新装版は少し違うところがあったりするため)、結婚して子供も産んだ今でも本当に大好きです。(夫にはBL好き内緒にしてるのに、これだけは手放せません…)
攻の智朗目線で話は進んでいきますが、その視点が本当にその当時高校生だった自分にピタリとはまり、同様に脇役の女の子、草子の気持ちも痛いほど伝わってきます。
あのヒリヒリとした、何かにずっと飢えた感覚をここまで描写できる人がいるのだな、と、この頃からずっと大ファンです。
何度も何度も作中の克己の言葉や智朗の成長する姿に救われてきました。高校生だったあの頃からずっと、私の人生を変えてくれた大切な作品です。
「いいことばかりではなく、こんな生活、と思いながらも、その日常が案外かけがいのないものだったりする」
もともとは1997年に刊行された本なんですね。
それが約20年の年を経て、2018年に電子化されたみたいです。
でも古さは感じられませんでした。
強いて言うなら、「連絡がつかない」みたいなシーンで、あ!携帯のない時代か……!と思ったのと、伯父さんがやたら手が出る人なので、そこに昭和の頑固オヤジみたいなのを感じたくらいかな。
父親を知らず、母親に「たやすく謝るな、たやすく礼を言うな」と叩き込まれて育った智朗は、心臓疾患を抱えていても底抜けに明るくて、屈託がなく周囲から好かれている従兄弟の克巳の眩しさが疎ましい。
智朗は育ちのせいで屈折してて露悪的な言葉を吐く少年なんだけど、伯父一家の元で暮らし他人と関わり合っていくうちに、狭い視野というか屈折してたフィルターが外れて新しい視野を得られる。
「傷つける言葉ではなく、癒す言葉を、自分もいつか使いこなせる日が来るだろうか?」と思うまでになった智朗の成長にジーンとなる。
攻めとか受けとか当て馬とか萌えとか、そういうわかりやすい立ち位置を与えられたキャラによるお話ではなく、主人公たちやその家族、そして脇役の女子に至るまで、大小差はあれど皆、エゴや悩み、苦しみがある一人の人間として描いているところが良かったです。
「100%悪い人間も100%善い人間もいないと思う」という言葉通りの本だった。
「cross my heart」は自虐的な草子と克己の主治医とのお話で、完全にNLなんだけど私はすごーく好き。
印象的な表紙の絵は、克己。
1997発刊 ヒーリング・ロマンス ⇒ 2004年に短編を追加して再編刊、
レビュー評価が高いので、古い作品だけど読んで、ジンワリ感動しました。
官能シーン無し。
テーマは、愛と絆。
親を失った智朗や、登場人物全部が夫々が持っているトラウマを癒す処方箋。
誰かのために生きる、絆=生きる甲斐を見つける話。 心理描写重点。
★同じ事象でも、角度を変えて見る。
自分のことで一杯でも、相手の事情を知って思いやれば、人生を違うものに感じる、という示唆本。
読んでみて。
智朗:
父親のことを母が言わずに、死亡。伯父に引き取られるが、伯父と喧嘩ばかり。
克巳から言い寄られるのが嫌。捻くれている。
克己:
伯父夫婦の子。心臓病になった動機が、この物語の鍵。
優しくて、我慢強い。笑いながら隠れて泣く子。
美姫:克巳の同級生:男勝りだけど優しい子。
草子:克巳の幼馴染:「どうせ私なんか...」な、妬み深い陰気で嫌なカマッテちゃん。
克巳の父:内科医。頑固というより、不器用な優しい人
克巳の母:隠し事をしない、正直で優しい人。
由紀:克己の妹。甘えん坊の幼稚園児。
cross my heart :構って欲しい病の草子が「誰かの為に生きる」絆を得る。
ヰタ・セクスアリス:克己が「セックスの許可」を担当医に尋ねる。
病めるときも健やかなるときも:草子が結婚。
医大に入学、独り暮らし中の智朗。克己は公立大文学部を卒業後、司書になる。美姫は留学。
★気持ちが落ちたときに、パラっと開いて読みたくなる本。
電子版で購入したけれど、紙版も揃えるつもり。
月村先生の作品は他に数冊読んでいるけれど、読後何度も再読したのは、この本が初めて。
登場人物の立ち位置が様々で面白い。
受けも攻めも区別をつけなくてもいい。
そんな二人のやりとりがとても楽しい。
2人を取り巻く叔母や叔父。
妹、施設で育った女の子。
全員の心情が過不足なく伝えられていて、暗すぎもせず明るすぎもせず。
すごい悪人やひどいエピソードが出てこないにも関わらず、読ませてくれる。
性善性悪、自分の心を省みてしまいました。
その点は痛かった。
秘密の部分はネタバレ読まずに読んで見てください。
え?と思って読み返したくなると思います。
業の深い愛の深いお話。
この作者さんのお話は、いつも胸がぎゅっとして切なくなる。
私が持て余してる感情に共鳴して、言葉を与えられる感覚がすごくするので、胸が苦しくなります。
今回の話はたった一人の家族だった母親を亡くして、ほとんど会ったこともないおじに引き取られた智朗と従兄の克巳の話。
おじに引き取られても、なかなか素直になれなくてぶつかってしまう智朗。
対照的に、持病があるにも関わらず、明るくて人気者の克巳。そんな克巳には、智朗が考えもしなかった秘密があって……という話でした。
とにもかくにも切ない。
こんなにも一生懸命に必死なのに、なんというか、所詮高校生の悪あがきでしかなかったのだな、と突きつけられる現実が苦しい。子供の一生なんて、必死なんて、これから広がる世界の中ではちっぽけなものっていうのを突きつけられる。
だけどそこには愛情があって、その上での救いがある。
そんな苦くて甘いお話です。
心の中の子供を殺せてない大人にオススメします。
たった一人の家族だった母親を亡くした智朗は、引き取られた伯父の家で暮らしている。
身体の弱い二つ年上の従兄弟、克巳は屈託なく彼に懐いてくるが、智朗はこの明るくて誰からも愛される従兄弟がどちらかというと苦手だった。
けれど、そんな彼には秘密があって・・・・・・
両親を亡くして叔父の家に引き取られた智朗。
誰に対しても頑なな智朗に病弱な従兄弟の克巳は臆面もなく好きだと言う。
病弱で色々事情を抱えている克巳の強さと優しさがとにかく切ない。
長い時間の中ではぐくまれた二人の絆にはきゅんきゅんします。
コンプレックスと意外性のある結末には一読の価値ありだと思います。
どっちがが病弱設定でもびっくりするくらい簡単にエロに突入してしまうこのジャンルで、そこにいかない優しさには感動した。
BLではないけれど、草子と葛西先生の話が大好きでした。
すべてに投げやりになっている女の子と、彼女のことを放っておけなかった克巳の主治医のお話。
単純に男同士の恋愛だけで終らない物語って貴重だと思います。
ほぼ全編智朗視点で書かれています。
智朗は自分が従兄弟である事、本当の父が誰であるか知らない事、母親から感謝や謝罪を他人に容易にしないように育てられた事、母親が数年前に亡くなった事、などの理由から頑なな人間に育ってしまいました。引き取られた叔父の家で叔父とそりが合わず度々殴られ早く自立したいと思っています。対して克己は心臓に疾患があるにもかかわらず、常に明るく病気のことも笑えるような性格で周囲を照らす太陽のような存在です。智朗は克己が明るく前向きでいられるのは良い家族がいてくれるからだと思い、克己を心配しつつも大人気ない態度をとってしまう自分に劣等感を感じています。
でもそんな克己にも秘密があって...
まず良かった点は克己の会話がウイットに富んでいて会話にリズムがある事。これは、月村奎さんの小説の特徴でもあると思うのですが、会話が自然で機転が利いていておもしろいです。次に克己の病気もあって重い話になりがちな設定なのに克己という人間がとてもステキなことです。健気なところも健気と思わせない演出がニクイです。また智朗が劣等感や自己憐憫に感じていた部分に成長があった事も良かったですし、メインの二人以外の叔父や叔母、死んでしまった智朗の母、克己の幼馴染の草子、克己のクラスメートの美姫などの心理がとてもよく描写されていて登場人物が薄っぺらくない事が素晴らしいです。また智朗が克己の病気を思って安易にエッチに走らないところも良かったです。
出来れば大人になった二人の話も読みたかったです。
2004年の作品ですが古さは全く感じられませんでした。
とてもステキな二人の話です。オススメです。
家族を亡くして親戚の家に引き取られた智朗と、そこで暮らす1歳年上の従兄弟で心臓に疾患を持つ克己の淡い青春のお話。
こういう設定ときくとせつなくて痛いお話なのかと想像してしまいそうですが、全くそんなことはありませんでした。
智朗は父親を知らず、母親との折り合いもよくないまま死に別れ、引き取られた親戚の家では厄介者になっているのでは・・・と思い込み意固地になっています。
実はいろんなことに恵まれているのに、最初の時点ではそのことに気付かず意地をはって、周りに心を開いていない感じです。
一方の克己は激しい運動ができないというハンデを背負いながら、屈託なく明るくいつでもしたいことをする!という前向きな性格です。
この2人を囲む家族や友人のお話で、少し暗い設定ながら明るく可愛いノリは同作者さんの秋霖高校第二寮のような感じだなぁと思いました。
克己はずっと智朗が好きだと言っているのですが、自分が厄介者だと感じているせいで智朗は克己にたいしても素直になれない。
少しネタバレになりますが、後に智朗は克己も実は引き取られた子供だったと知り、施設出身の草子と知り合い、折り合いがよくないと思っていた叔父の本音もわかり、自分がいかに卑屈に生きてきたかを知り、次第に心を開いて前を向き始めます。
BLというよりヒューマンドラマに近い作品でした。
でもその分恋愛要素は薄めです。
ラストのあたり、医者になって克己の病気を治すという智朗と、初めて智朗にあった日の事を話す克己の間にあるものにはじんときましたが、でもこの二人の間にあるものは友愛でも成り立ちそうな気もしました。
その後のおまけで草子のその後のお話と2人のその後のお話が入っています。
こちらではきちんと恋人として暮らしている2人の生活が垣間見えます。
草子のその後もちゃんとケアされているのが良かった。
月村さんのこういう、子供がハンデを追い、弱さを嘆きながらもしたいことを見つけて前向きに生きるお話って本当描写がすばらしいと思います。
死のうと思えば何も怖くない、生きるのが怖いと思ううちは大丈夫という、克己の主治医であり医者である葛西の言葉が本当にしっくりしきました。
皆子供のころの境遇に負けず生きてきた結果、大人になってしたいことをして生きているんだよという素敵にまとまったお話でした。