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senakaawase no kuchiduke
舞台は禁酒法時代のアメリカ、シカゴ。
不安定な子供と過去に苦しむ青年の歳の差のカップルです。
ギャング映画を思い浮かべるような舞台設定で、登場人物もなかなかレトロな気がしました。元軍人の主人公に、まだ10代の殺し屋、ギャングの女ボスにストイックな神父に口のきけない女の子…。
お話はよかったんですが、殺し屋って設定が暗いイメージがするからか、今まであんまり読んだことがなく、リアリティがないから最初はピンときませんでした。
今まで読んだ真瀬さんの本が全部よかったから手に取ってみたんですが、ふだんならあんまり手にとらない内容かも…とあらすじを読んだときに思いました。
好きだった人を戦地で亡くした主人公・アロンと、そのアロンに拾われ同居を始める殺し屋ショーン。
もちろんアロンは彼が殺し屋と知って拾ったわけではありません。
ショーンはアロンが昔好きで、戦場で亡くなった青年に似ています。
その二人が街をしきる二大ギャングの抗争に巻き込まれていくお話です。
殺し屋だし、人をぽんぽん殺してしまうような内容だと苦手で、怖い人ならやだなあと思ったのですが、設定は暗かったものの、殺し屋のショーンが可愛くて可愛くて…思っていた以上にかなり萌えました。
ただ、表題の「背中合わせのくちづけ」は攻めのアロン視点になっていて、萌え度はそこまででもありまでんでした。
どちらかというと書き下ろしの「KnockKnock」がよかったです。
表題はショーンを殺し屋と知らず拾ったアロンが、意思とは関係なく、身体の関係を持ってしまう…
ショーンは可愛くて、19歳にしては子供ぽくぬいぐるみが好きでわんこキャラで素直で健気。
でも殺し屋として育てられ、人と同じような感覚や価値観がありません。
殺し屋と知って、アロンはショーンを拒み、遠ざけます。
この前半のお話、ギャングの抗争や登場人物らの思惑が少しややこしく、ショーンとその周りの人物らの関係もややこしくてあんまり糖度はないかな?と思いました。
何より肝心のショーンのことが読んでいてもよくわからなくて、なんでアロンを好きになったんだろうとか、殺し屋として育てられた背景とか、ギャングの抗争にアロンが巻き込まれていく原因にショーンがからんでいたりとか…。
登場人物らの関係もそうですが、わりとぽんぽんすすんでいくお話と愛が育っていく過程がよくわからなかったと感じました。
特にアロンは好きだった人を過去に亡くしているので、いつのまにその人を思い出にして、ショーンを愛するようになったのかとか、ショーンが殺し屋であることも受け入れて愛するようになったのかとか。
でも書き下ろしの「KnockKnock」がとてもとてもよくて、このカップルがいっきに好きになりました。
特殊な環境で育ったショーンに当たり前の価値観を押し付けてはいけないことをアロンは知り、ショーンに近づこうとしては失敗し、ショーンを傷つけ、でも一緒に生きていこうと頑張ります。
人を殺してはいけないことや、男同士で愛し合ってはいけないことや、ショーンは家族も友達もわからずに法律も常識もない世界で育てられたのですね。
でもアロンにふさわしくなりたいと、常識的な価値観を学ぼうとし、失敗しては怯えて泣く様子が恋愛的な萌えと相成って、なんていうか、見ていてすごいなんともいえない気分になります。
アロンもきっとこういう気持ちをかかえてショーンを見ているんだろうなあと…。
ショーンは子供が苦手で、アロンにもらったぬいぐるみを女の子に取られてしまい、取り返したいのに子供が怖くて近づけない。何人も人を殺してきたショーンが、子供が怖いと泣く様がなんともアンバランスでした。
この先の二人がもっと見たいけど、次は主人公が変わります。
この巻では中途半端な伏線が気になる状態で終わっているので、セットで読むのがおすすめです。