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aoi mitsugetsu
丸ごと1冊、表題作です。
冴未と晃貴、両方の視点が混じってストーリーが進んでいくので、心情の動きがわかりやすいです。
冴未(19歳)を、8つ年上の晃貴が監禁する話です。
その理由は父親のために、冴未の父親・友芳に復讐をするため。
原因は、友芳の医療ミスを引き受けたために、父親が医師の道を絶たれたというもので、自殺したとかじゃありません。お金ももらっているのだし、下手すれば逆恨みになるのでは、という私の思いと釣り合ったかのごとく、晃貴の復讐は友芳に医師をやめてもらうという穏便なものでした。しかも罠にかけたのではなく、自ら横領したという体たらくで、あらすじの「復讐」にわくわくして読めば拍子抜けしてしまいます。
そんな晃貴がしたことは、横領の事実を冴未の母・有里子に伝えただけ。さらに冴未の監禁は、有里子の愛人・青木の指示によるものという他人任せな復讐劇でした。
晃貴の行動を許容できるかが、ポイントになると思います。行動派っぽいようで、実行するわけでない。忍耐強いようで、襲うとか意外と短気。冴未を一途に好きなようで、そうでもない(他に経験有り?)。そんな彼を人間らしいと共感できるか、はっきりしなくてイライラしてしまうかは、読む方によると思います。
晃貴はもっと簡単に院長交代がされ、冴未と一緒にどこかで暮らせると考えていたのに、友芳は行方不明になるし、冴未は言うことを聞かないし、どんどん歯車が狂っていくのを何とかしたいと足掻いているのは、何もかもが攻めの計画通りであるより私には面白く思えました。
冴未の偏頭痛の持病も、自分は頭痛持ちじゃないので興味深かったです。冴未が一時期壊れたようになったのと、終盤で友芳が壊れてしまったのも、親子だから似ていると思いました。
イラストでは、中表紙の過去の二人の後姿が、私は一番好きでした。エロ場面は3回ありましたが、作中には晃貴と冴未の幸せなエッチシーンがなかったのが残念でした。ただ、晃貴が冴未を過保護なほど好きで大切なのは、序盤から垣間見えるので、それで萌えられる方には良いと思います。
格好いい攻めだけじゃなく、計画通りに行かずイラつく人間的な攻め、可愛らしいけど従順なだけじゃない年下受け、監禁・ぬるい陵辱ものがお好きな方にお勧めします。
うえださんは義理人情の作家さんだと、私は勝手に認識しているのですが。
そんなうえださんが書く「監禁」ものには、相手の全てを支配したいという情念はなく、
「やむにやまれぬ事情で、仕方なく相手を監禁してしまった」という設定です。
「やむにやまれぬ事情」で、気持ちが擦れ違っていく冴未と晃貴。
親の因果が子に報いというような、親の代の確執が二人の恋の障害となっています。
さっさと親のしがらみを捨てて、二人で手に手を取ればハッピーエンドなのに!と
仰る方が多いと思うのですが。親を捨てられず、恋だけを選べないというのが、
うえだ作品らしくて私的にはツボでした。そこで起こる葛藤がいいのですよ!
監禁ものとして期待し手に取ると、ガッカリ感が否めませんが。
気持ちの擦れ違いや義理と人情で板挟み的な
葛藤を楽しみたい方にはオススメです。
監禁モノですが、うえだ真由さんが書くと監禁モノとは思えないですw
主人公はキャンキャン怒ってるんだけど、ちっとも切実さが伝わってこない、甘ーい監禁生活です。
主人公をレイプするのは、主人公がずっと好きだった相手。しかも最初から『そうせざるをえない事情』がなんとなく分かる。
ご飯もちゃんと食べさせてもらえる。怒った主人公がお皿をひっくり返しても、監禁者は困った顔をするだけ。主人公はまるでスネた子供みたいです。
監禁してる攻めも、最初から事情をまるごと説明すればいいのになァと思ってしまった。
木原音瀬さんや水原とほるさんの壮絶な監禁モノの洗礼を受けてきた身には、甘過ぎましたw
逆にいうと、『痛くない甘い監禁モノが読みたい』っていう方にはオススメです。ストーリーや文章はしっかりしてますし。
うえださんは私にとってはかなりの好き作家さんです。
『好き作家』を挙げて行けば、少なくとも上から5人(場合によっては3人)には入りますから。←だからと言って、著作すべてが好きなわけではありませんが。
商業誌のみならず、同人誌もかなりの確率で持ってます。
でもこれは、個人的にはうえださんで最低クラス(未読も少しあるので断言はできませんが、今まで読んだ中では『最低』です)。
とにかく、晃貴(攻)の身勝手さにうんざりしました。思考回路も言動も飛躍し過ぎで到底ついて行けません。
まあ『病んでる』ってことなんでしょうか?まったく許容不能なキャラクターでした。
これで、晃貴が絵に書いたような『独善的・傲慢』な男だったらそれはそれで理解はできます(やっぱり好きにはなれませんが)。でもそうじゃないから余計にちぐはぐに感じたんです。
作中、晃貴が冴未(受)に対し、冴未の父親について『負い目を感じていたら許されるのか』と言ってましたが、じゃあ自分はなんなんだよ。それこそ『相手のため(それも自分が勝手に想定したものでしかない)なら何をしてもいい』のか!?
終盤、心を閉ざした(壊れた)冴未に『ほかにどうすればよかったんだ』と言うに至ってはどこまで自分に酔ってんだ、コイツは・・・と辟易しました。
『ほかに』って逆になぜこの方法を選んだのかの方が不思議だよ。他はいくらでもあるだろう、と。
ラストで冴未があっさり晃貴を受け入れるのも、たとえ『自分(冴未)のため・愛情から』だったとしてもその想いとあの行為(監禁や強姦)のギャップはどうでもいいのか!?とまさに脱力しました。
ましてや、それがどうして『自分が医者になろうとしなければ~』に繋がるのか。
私は『王道』も大好きなので『予定調和・ご都合主義』もそれ自体は別に構わないと思っています。扱い方(描き方)次第ですね。
その私でも『ここまで寒いご都合主義はないだろう・・・』と思うくらいダメでした。あまりにも酷過ぎてもう言葉にできません。
さらに、私は最初が攻からの凌辱・強姦、所謂『無理矢理から始まるラブ』ってヤツがとにかく無理です。キライなシチュエーションのトップに来るんじゃないかと思うくらいなんですが、それさえたいして気にならないくらいにもうすべてがダメだった。
うえださんは、たとえストーリーはヌルかったとしてもキャラクター造形や心情描写はいつもしっかりして安心して読めるんですが、これはもうどこをどうしても無理でしたね。
実はこれ、番外編同人誌が2冊も出てるんですが(両方持ってる自分が哀しくなる・・・)、作家さんにとっては思い入れのある作品だったんでしょうね。
ただひたすらにつまらなかったです。好きな作家さんだからこそ本当に残念としか言えません。『痛い』というより『イタい』作品でした・・・
そして、イラストもまったく合ってなかったと感じました。如月さん、もともと絵柄も好みじゃないんですが。