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yawaraka na yami wo daite
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
『やさしく殺して、僕の心を』シリーズの世界をよりハードにしたような短編集。
暴力団蠢く繁華街を舞台に三つの話が入っています。
力のない者が暴力を受けたり、命を落としたりする様が
特にセンセーショナルでも感傷的でもなく、ただ淡々と描かれているのが印象的。
メインの登場人物たちの恋愛・生き様といった個人的問題よりも、
人の死、暴行などイレギュラーな出来事を内包して続いていく日常、みたいな俯瞰的なテーマがある気がしました。
そんな世界が描かれているから、
登場人物たちが見つける小さな幸せ、安らぎが心にしみるのかも。
影の主役は、すべての話に登場するヤクザ側近・柚木
と思わせて、実は…?みたいな群像劇の面白さもあります♪
◆【すべては夜から生まれる】
繁華街で母親のスナックを手伝う16歳の誓は、俺様なヒモ男・優司が好き。
16の誕生日にレイプされたことから始まった関係がもうすぐ1年になるとき、
店の常連の柚木に、優司と別れ街を出て行くよう忠告され…。
酷い目にあっても嘆いたり人を恨んだりしない誓の芯の強さが好きでした。
誓が母親と愛人のせいでヤクザから暴行を受けたことで、
やっと自分の気持ちに気付いて超献身的になる優司の変わりようも良い。
トラウマによる誓の接触恐怖症や味覚マヒは本当に痛ましいけど、
治るまで何年でも待つ、と言う優司に甘やかされて幸せになれそうで安堵。
◆【やわらかな闇を抱いて】
ヤクザに雇われ繁華街で働く中国人レイ。
「恭一」という男を探し、街へやって来た吹雪。
ガキに見えて度胸ある吹雪とレイの同居生活が楽しい。
(レイの振り回されっぷりは、最初のクールキャラどこいった?って感じw)
コメディ寄りかと思いきや、徐々に強くなるサスペンス色。
賭け将棋シーンの緊迫感(吹雪がカッコイイv)、
吹雪とレイを見張り逃げ場をなくすヤクザ勢力、
謎の男・恭一とレイの接点(これは自分的に意外でした!)・・・
ビターに終わるのかと思いきや
最後にちゃんとBLらしい?救いがあるところも好き。
これも一話目同様、苦労しつつもラブラブしてそうな未来が見えますv
◆【汝、眠る事なかれ】
部下の椿が何者かに刺され死亡。
犯人を独自に追跡するヤクザ側近・柚木と、
柚木に歪んだ執着を見せる霧生との関係は妄想をかきたてられる♪
そして明らかになる、思わぬ黒幕…。
ええーっここで終わり?と思うと同時に、
なるほど彼がラスボスだったか~とニヤリともできる。
事件の真相が主題なのではなく、
その事件を糸口にこれからも無限に広がっていく群像劇を示唆させて終わるのがシブくて良い。
神奈木作品の中では、個人的には本書と『やさしく~』が双璧(神奈木作品を網羅している訳ではないですが;)。
ほのぼのヤクザやファンタジーもいいけど、こういう硬派な話がもっと読みたい。