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十五歳の遠野陸は、四年前の八月に母と義父を凄惨な事故で亡くして以来、義父の双子の弟でカメラマンの夏生と暮らしている。
それというのも、陸はその事故がトラウマになり、発作を起こしたり、夜一人で眠れなくなったりしていたからだった。
おまけに、八月という月はまた格別で、両親の亡くなった状況を思い出してしまうから、ますます陸は憂鬱になっていく。
そんなある日。
夏生と待ち合わせをしていたところに、夏生の仕事相手であるトップモデルの杉岡章子と知り合う。
彼女は、陸をまるで母親のような目で見つめ、陸に母親を髣髴とさせる。
同時に、夏生と彼女の関係に、疑いを抱き、危機感を覚える。
数日後、再び彼女と会った陸は、彼女の口から「夏生と結婚するつもりだ」と告げられる。
夏生を失うのでは、と焦った陸は、つい冷たい言葉をぶつけてしまう。
ところがその数日後の八月一日、その章子が何者かに殺されてしまう。
という話でした。
ちょっとミステリーテイストの要素もありつつなお話。
というよりは、そっちがメインなのかな?
実は、章子には陸と同じくらいの年齢の子どもがいて、その子どもが章子のことで加熱する報道で間違ったイメージを抱かれるのじゃないか? 自分を見た母親だった顔の章子のことを教えてあげたいと思った陸は、その子どものことを調べ始める――
という感じで。
その過程で、陸は夏生が男の恋人を作れる人間だってことを知り。
自分の想いを自覚し。
夏生とくっつき。
ついでに、自分の記憶の中にある小さな矛盾にも気がつく……という感じで。
どっちかというとちょっと暗めで、しっとりした物語でした。
こういうBLもあるんだなー……という。
肝心のミステリーの捜査の件は、人間離れした設定の探偵さんがほとんどやってくれたので、あんまりそこには関われないんですが。
そこのい至るまでの心情がミステリーのよくあるアレで、なんだかちょっとしっとりしました。
ただ、その分、恋愛の要素はじゃっかん薄くなってしまったので、恋愛そっちのけのBLで構わない人にのみオススメしておきます。
前にこの方の本を読んだときも本格ミステリーで、ぐいぐいストーリーに引き込まれたのですが、このお話もサスペンス寄りの本格ミステリーでした。
主人公の陸はカメラマンの叔父、夏生と同居中。
叔父と言っても血のつながりはなく、両親を事件でなくして一人だった陸を引き取ってくれたという複雑な関係です。陸は両親をなくしたことにより、夜中に発作を起こしたり、夜に一人で出かけられない、血やナイフを見ると貧血を起こして倒れるなど酷いトラウマを持っています。
なかなか痛々しい設定なのですが、叔父の夏生や周りの人々が完全に陸を庇護してくれているので、歳の差カップルが好き、大人が子供を甘やかす関係が好きな方には萌えられる作品ではないかと思います。
陸と夏生はあるモデルの殺人事件に巻き込まれ、警察とは別に独自に犯人探しを始めるのですが、事件と恋愛部分は独立している気がします。
事件そのものは本格的で、誰が犯人なのか気になって途中でやめられなくなるくらいですが、恋愛に関しては紆余曲折はなく、男同士だとか、叔父と甥だとかいう葛藤もなくすんなりくっついているのでラブストーリーの部分だけ抜き出すと少し弱いかも知れません。
陸が夏生に引き取られてから、夏生に叔父としての思慕でなく恋愛感情が芽生えていった過程をもっと描いていたら良かったかも。
ミステリーとしては最後の最後までオチまでよく考えられていたと思います。
両親を凄惨な事故で亡くして4年、15歳の陸は義父の双子の弟でカメラマンの夏生と一緒に暮らしている。
まだ若々しく、優しい夏生が大好きな陸。
たまたま知り合った夏生の仕事相手でトップモデルの章子に束の間母親の面影を見るが、彼女が夏生との結婚を匂わせたため、思わず手ひどい言葉を投げつけてしまった。
ところが数日後、その章子が死体で発見されて……
いつも良い意味であんまりBLらしくない作品を書くのが美樹さんの持ち味だけれど、今回はちょっと着地点を見失ってしまったような感じがしないでもない。
義父(母親の再婚相手)の弟との恋愛と、殺された女優を巡るサスペンスと。
ふたを開けてみればどっちがメインなのかわからないというか、ちょっと軸がぶれてしまった感じというか。
特に恋愛に関しては惹かれあい、さらには肉体関係も含めてくっつくまでにはちょっと色々弱いかなあという印象をうけました。
いっそこの流れだったらBL部分よりもサスペンス部分メインの方が読み応えがあったかも。