薄雲
kuroneko no tame no passacaglia
さよならトロイメライの番外編同人誌。
宗方家の家令であった黒田の過去話です。本編で凄い存在感を放っていた黒田ですが、なるほどその過去は凄絶を極めていて、あの泰然自若とした態度の根元はこうだったのか、というのが判明しました。
何というか黒田の生まれ、宗方家への奉公、そこで出会った奉公先の次男坊惣太郎との出会いから、同じ夢を見るまでの過程、そして淡い恋心を交わしたのに家のために別れなければならなかった苦しみ、挙げ句の悲哀の死に別れ。
もうこれでもか、これでもかと黒田に襲いかかる困難と不幸に私の不憫健気センサーがビンビンに反応しこれ以上ない興奮を覚えました。
不憫な黒田がいとおしいです……。
そしてそんな不憫な主従を第三者目線で語る庭師徳一の存在感がこれまた物語にいいスパイスになっていて非常に面白かったです。
惣太郎を失った黒田が、宗方家と結婚するといった意味、そしてその流れのまま本編での彼の働き、動き、考えをのぞき見てみると、彼が乗り越えてきた悲しみと時間の長さがとても苦しかったです。弓削はまるで黒田の過去の姿を見ているようで、家に生きることを決めた黒田には彼の存在がどう映っていたのかと考えただけで苦しい。
宗方家を下がり質素な庭で過ごす黒田の元に、徳一が訪ねてきてくれた最後のシーンは、彼の長いトンネルの先に穏やかな過去と未来が存在しているようでこみあげてくるものがありました。
黒田の長い人生に、そんなつもりはなくとも鎖を掛けてしまった惣太郎ですが、黒田の死後は迷わず辿り着けるよう闇路を照らし、その先で再会出来ていることを願わずにはいられません。
読んで良かったです。
さよならトロイメライの番外編で、本編のサブキャラだった黒田のお話。弓削のお話ではないので、まだ少し冷静に読めました。黒田には黒田の人生があって、うねるような人の連なりを感じるお話になっています。今なら予約で手に入れることができますのでレビューしてみました。気になる方は是非。
譜代の御家人の家に生まれた黒田。食うにも困る貧乏生活であったため、やむを得ず商家の家令となるべく家を出て、宗方の家に迎えてもらいます。そこで会うなり黒田の髷を切ったのが次男坊の惣太郎で・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
清次(惣太郎の兄)、清左衛門(攻めの父)、円井(番頭)、徳一(庭師)、東山(家令)、朋実(攻めの子)ぐらいでしょうか。徳一がずっと寄り添っているように思います。
++思いをはせるところ
「家を守るということに、ここまで思いをかける時代なんだ」と思うのです。「家がなんだ!」等と突き放せないのですね。華族でもない商家なのに、この時代ではそうではない。
それに苦しみ、最後、黒田に託して先に逝く惣太郎。残された黒田の苦悩。
それがあのさよならトロイメライでの黒田につながるのね・・と感じました。人の業とでも言えばよいのでしょうか。私はなぜか虚しさを感じてしまいました。自分がそういうしがらみが大嫌いで、全部ぶちきってしまうタイプだからでしょうか。
読んで癒されるとか甘いとか、そういうお話ではないです。
人の業、家という縛り、それに翻弄されたとしか思えない方々の思いを読んでみたいと思う方、黒田の人生を知りたいと思う方、是非是非。
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