イラスト入り
電子限定の短編です。
「叡山夜話」が良かったので、こちらも鬼がテーマということで楽しみに読みました。(作品同士のリンクはありません)
赤茶の髪とはっきりした目鼻立ちで赤ん坊のころに捨てられていた笠丸。
美貌の舞い手・朱華に拾われ、村に預けられ育てられるも常に「鬼の子」と呼ばれまともに扱ってもらえない日々を過ごしています。
朱華だけが心の支えで、とうとう申楽(さるがく)の一座に入れてもらい朱華と旅をすることになるが…。
攻めの笠丸の境遇がとにかく不憫すぎて…自分でも素性が分からないので「俺は鬼かもしれない」と漠然とした不安を抱えながら生きています。
そんな彼に「お前は鬼じゃないよ」と優しく諭してくれるのは朱華だけ。朱華が人間扱いしてくれるので、朱華に傾倒する笠丸の気持ちがよく分かりました。
時代的な背景もあると思いますが、主人公がそんな感じなので全体的に暗めで少し哀しい雰囲気です。
笠丸の一途な想いや、物慣れた朱華の笠丸への気持ち…哀しくて寂しさもあるけれど、ラストは2人にとっての救済があります。
佐々木先生の挿絵も素敵でした。
個人的には叡山夜話の方が好みでしたが、こちらも読んで良かったと思います。
しっとりとした昔話のような鬼BLです。夜明けの作品が好きな方にはぜひ。