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kinniro no sakana
つながりなしの短編二編、表題作は1/3、同時収録作の方が長く内容も好みだった。
【きんいろのさかな】
仕事で失敗した波頭がハッテン場に迷い込み、助け出してくれたゲイバーのマスターに惚れるお話。
ちょっかいを出すオネエマッチョゲイや波頭に長年片思い中の同僚医師なども出て来て、波頭は何度もふらふらヤられそうになっている。本人もわりとノリ気になっていて、お坊ちゃまらしいふわっとした箱入りタイプ。
が、気持ちに気付いた後の友人への手のひら返しは結構酷い。最後まで名前も出て来なかったマスターに波頭をかっさらわれた西庵が不憫な印象が残った。
伏線なのかよく分からない描写がちらっとあり、特に回収されることもなかったので気になる。マスターがなぜあんなに頑なに拒み続けたのかも詳しくは語られない。
最後のまとめは妙なお片付け感があり、とても強引な〆。なんともぽかんとなる読後感だった。
【ハニーホットミルク】
とても良かった!少年院を出て今は真面目に働く男が初めて恋を知る様子に萌える。不幸な生い立ちで愛を知らない人間が少しずつ変化して、相手の気持ちを考えられるようになっていく。彼の成長を見守れるのはちょっとした感動だと思う。
九重は不器用で純粋でまっすぐで、自分がどうあるべきかを常に言い聞かせており、更生の跡が見えるのが良い。少年院を出てからは善い人に囲まれているようで、仕事への真面目さや親代わりの主人への想いにほっこりする。
皆本は最近お疲れ気味の医師。物腰が柔らかく常識人で、九重とはまったくの別世界で生きてきたような人。力強く働く牛乳屋の九重達を見ては癒される日々を送っている。
メイン二人はそれぞれ問題を抱えており、両視点でそれらが詳しく描かれる。そんな中での二人の逢瀬は、そこだけとてもキラキラしていた。
恋愛模様は九重の初心さが良い。初めての感情に戸惑い、咄嗟の自分の行動に戸惑い、恋心を知っていく。店で人気のプレミアムミルクを本気で一番良い物だと思っていて、それを皆本に押し付けるように渡す可愛さに萌える。
で、いろいろありつつ……何かが起こりそうな気配がすごいのに何も起こらず、ドラマのように演出されたエンディング。特に九重周辺に不安要素が残っているが、BL的には大丈夫そう。まだ何も知らない同士なので、ここから始まるのかな、という終わり。
今後の二人の話も読みたいと思った。九重の成長をずっと見ていたかったな。