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腕利きの傭兵がアンドロイド捜しの依頼を受けるが、ドールに情を移して逃避行してしまうお話。挿絵多め、作家と絵師の対談多め、本編は短編分のページ数。とりあえず目当ての本編のみ読んだ。
ドールのカイを捜しにやってきたリンチは、カイに関する衝撃的な事実を知ってしまう。今まで何をされてきたかを知っているだけに、依頼主に背いてカイを逃がしたくなる気持ちも分からなくはない。
カイが作られた目的も経緯もその後の扱いも、多くの人間が関わりながら、なぜそんなことができるのか?と恐怖しかない。リンチの人物像が見えづらくとも、人の心があれば誰でもカイへの同情や哀れみが生まれるだろうと思う。
リンチはカイとずっと一緒に緊迫感の中にいたわけで、吊り橋効果的なものもありながら、徐々に愛になっていったのかな。山道でのシーンは挿絵とともにとても良かった。
ラストは説明不足な点も多くすっきりしない。やっぱりこのページ数で描き切れる内容じゃなかったのでは、と思わざるを得ない。
本編の他に、リンチの傭兵時代の過去編も収録されていた。軍隊独特の倫理観というか、野性味あふれる空気感がとても好きだった。
作者さんのこだわりが伝わってくるような小説でした。
私はguilt pleasureのin these wordsが好きで買いました。
私がこの本を読んで思ったのが好きな人と嫌いな人で大きく別れる本だと言うことです。この本を買う前にレビューを見ましたが、辛口コメントも多数ありました。作者さんのこだわりとして今回の作品は、ベットシーンはありませんでしたがキャラクターそれぞれ個性がありかといって読みにくくなくさらさら読めるような作品でした。また、リンチの過去を描いたお話も集約されてありました。そして最後には、このお話に対する思いをナルキッソスさんと咎井淳さんが語っています。
私はBLというよりも普通の小説に近かったかなとお思います。また咎井淳さんのきれいな挿し絵が魅力的でした。生々しいエロや、bl初心者の人にいいかなと思いした。
所々自分の中で理解しにくいところがありましたが、深く考えずにキャラの感情だけで読んでいくと、すんなり入り込めました。 仕事であるアンドロイドを探して連れ戻す依頼を受けたが、そのアンドロイドに出会って惹かれていき、依頼者の元に戻さず逃げるリンチ。 最終的には見つかって連れ戻されてしまうのですが、数年後目の前に現れた人物は… アンドロイドから死というものはないのでしょうが、二度と会えないと思ってたのでよかった。 でもクロフォードの死の謎とか、背景にまだまだなにかありそうなので、続きでその辺がどうなってるのか書かれてるのかな? そちらも早く翻訳してください。
『FATHER FIGURE』に次ぐGuilt|Pleasureさんの小説邦訳二冊目。
前作は猟奇サスペンス的な作風でしたが、本作はアンドロイドを題材としたSF寄りの(現実にも有り得そうな設定ではありますが)作品。
前作程の衝撃はありませんが、アンドロイドの自我や自由意志といった王道のテーマが丁寧に描かれた佳作という感じです。
あらすじ:
ギャラに応じてあらゆる仕事を請け負うリンチ(攻め・『俺』)は、某企業から同社が開発したアンドロイド【Doll(ドール)】の捜索を依頼される。
カイ(受け)と呼ばれるドールを誘拐した研究員を見つけ出すが…
カイは、現存する数あるドールのプロトタイプで、見た目は完全に人間。
客の要望を満たすため実験段階で様々なプレイを試されており、その描写自体はぼかしてあるものの、傷つけられる姿が痛ましいです。
彼を連れ出した研究員・相馬を「パパ」と呼び慕うカイは無邪気な人間の青年そのもので微笑ましいですが、それが彼自身の意志によるものなのか、彼に設定されたプログラムのせいなのかハッキリしないという点に切なさがあり、それが本作のテーマかと思います。
「ユーザー」と認識した相手に尽くすよう開発されたカイはリンチのことを新たなユーザーとみなし、彼を慕うように。
一見プログラム通り動いているカイですが、ふとした瞬間に人間らしい言動をとることが度々あり、その背景には開発当時のある秘密が関わっています。
仕事に情を挟まないドライな雰囲気のリンチがカイに惹かれていき、彼を救おうとする姿にはカッコよさがあり、カイに普通の人間らしい感情を与えてあげたいと願う姿にもグッとくるものがありました。
ラストはややもするとご都合主義的にも見えるハッピーエンドですが、本書の肝は結末自体ではなく、そこに至るまでの前後関係にある印象。
クライマックスのカフェのシーンは挿絵の美しさも相まって鮮烈な印象を残しますが、どこまでがカイの自由意志による行動だったのかハッキリしない点にはやや切なさも。
作者対談で指摘されていたように、あのカフェに一人で座っていたカイこそが誰かのドールでない本当のカイだとしたら、リンチと共に生きることは本来の彼を不活動にしてしまうことに繋がるのかな?という疑問も。
そう考えるとほろ苦さの残る結末ですが、カイのリンチに対する言葉や表情には希望も感じられ、二人の幸せな未来を願いたくなるラストです。
同時収録の番外編は、リンチの傭兵時代のエピソード。
20代の頃のキレッキレのリンチが大変カッコよく、新入り傭兵として登場するビアンキも良いキャラ。
ビアンキは本書の続編(未邦訳)で再登場するキャラクターのようで、彼の活躍も楽しみです。
全体として前作ほどのインパクトはありませんでしたが、アンドロイドを題材としたBL作品としては比較的シビアな描写が印象的で、挿絵の素晴らしさも相まって楽しめる一冊でした。
GuiltlPleasure の小説世界、再来。
とはいえ「FATHER FIGURE」ほど痛くはないので、GP未体験の方は本作から始めるのもいいかもしれません。
物語は、行方不明の青年を捜索して欲しいと依頼を受けるシーンから始まります。
しかしその青年は「ドール」というアンドロイドのプロトタイプで、開発担当の男が連れ出したとみられる。セックスドールを連れ戻す仕事なんて、という内心を抱いていたリンチだが…
リンチは何故か依頼に背いてドール「カイ」と逃避行、依頼主の追っ手に狙われて、というハードボイルド的な展開になっていきます。
BL的にはリンチがカイに惹かれるきっかけがはっきりしません。強いて言えば日本的「もののあはれ」を感じたのかもしれない。確かに2人のセックスシーンはあるけれど、エロを求めると肩透かしかも。
「恋」の甘さよりも、一つの命のようなものの生死(といっていいのか?)を握ってその力を行使する、そこにある種の甘美さを感じる。森の中、カイを抱き締めながら引き金を引くリンチ。この時の2人の陶酔感はセックスよりも強い。
物語のラストは、言ってみればどんでん返しです。一気に恋の甘さが漂う。
暴力・執着・血・死といったモチーフのイメージが強いGP作品中で、この最終章はロマンスの香り。
(長髪受けになります。苦手な方は注意)
「After the Fall」
未発表作品で、リンチの傭兵時代が描かれています。エロ一切なし。
「THE DOLL」続編の「Persona non Grata」という作品に登場するらしいビアンキという狂犬とリンチとの出会い。
隊長リンチの圧倒的な強さにマウンティングを許す新人ビアンキ。こういうのは後々執着をもたらしそう。
「STUDIO NOTES」
ナルキッソスと咎井淳、お二人の対談形式でのキャラ+挿絵解説。非常にわかりやすく、作品理解の助けになります。
下絵02と13はそれぞれクリムトの「ダナエ」と「接吻」を思わせる。
「AFTERWORD」
日本語版書き下ろしの再び対談形式でのあとがき。お二人の萌え所が語られる。