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ieji
後書によると「探す旅」がテーマの2016年発刊の本。
「ロードムービー」(road movie)とは、
旅の途中で起こる出来事で構成する物語。和ものでいう「道行」。
道行といえば、西鶴や近松門左衛門の悲恋を思い出すけど、この話は、ハピエンだった。
後書から、
●高校生・未来:
万年貧乏の母が、有り金全部を持って突然失踪。
母を探す旅が、自分を探す旅になる。
●整理屋・塔馬芳郎:
未来の母の妹・未玖の元恋人。叔母の未玖が依頼した整理屋。
・・・二人は、旅の後、支え合い、生きていく。
「母」に傷を持つ二人。
・未来は、育児放棄を経験(母子分離不安)栄養失調で発育不全の美少年。
母不在中に来る、母の元彼たちに抱かれていた。
・塔馬芳郎は、母と無理心中した生き残り。未来に自分を重ねて不憫に思う。
未来は、母に捨てられ、旅に出て、自我覚醒。
恋を知り、多情な母を少し理解する。
「依存」対象の移動かもしれないけれど、母離れ。
私は面白いと思ったけど、
この作品のレビューは、ちるちるに1件、ホントに2件しか探せなかった。
何冊か水原先生の作品を読んで思うのは、気の毒な作家だと思う。
色々なタイプの作品を描けるのに、
デビュー作の「夏陰」が強烈で、作家イメージにスリコミが強く入っている。
心の痛みがテーマのヒューマン系も上手。
だけど、水原作品に「暴力の痛い」を期待する読者には
「心の傷」系は物足りないのか、評価が低いみたい。
人の好き嫌いは、体験を想起する語彙についての反応が多くて、
作中に「嫌いな言葉」があると、忌避感から私もそれ以上読めなくなる。
私は、この作品中に嫌いな言葉が無かったので、情動せず読了できた。
描写上手な作家なので、人間愛を静かに描く作品も 良いと思ったけどな。
あらすじ:
母親に捨てられた未来(受け・高校生)は、伯母の知り合いで整理屋の塔馬(攻め)に引き取られ、彼と暮らすことに。
やがて、塔馬と共に母親探しの旅に出るが…
アウトローな大人×母親離れできない少年のロードムービーで、主人公の少年(受け)の心の成長を描く物語。
あとがきでいかにも美談風に要約されていますが、そんな話だっけ?と首を傾げたくなる向きも。
各キャラの言動に共感できず、最後まで話に入り込むことが出来ませんでした。
まず未来。
親身になってくれる塔馬や伯母の言葉に耳を貸さず、男好きの母親を一心に慕い続ける頑固さに若干イラッと。
内面の幼さは、母親の育児放棄が原因のため仕方ない部分もありますが、あまりの物分かりの悪さに読んでいてストレスが溜まってしまいました。
また、某詩人を彷彿とさせる「〜もの」口調もわざとらしくて個人的に苦手。
例を挙げると、
「考えたってどうにもならないもの」
「母さんを探しにこんな遠くまで来たんだもの…」
「どうせあの連中にずっと抱かれてきたんだもの…」
「そんなこと絶対にないもの…」
「ちゃんと答えを出してきたもの」
等、ザッと数えただけでも5回は登場します。
受けの口調が女性的(かつやや古い)のは水原さん作品の特徴ですが、今回は発言内容のネガティブさも相まって、いつもにも増して気になってしまいました。
そして塔馬。
未来の成長を手助けする男前攻めなのかと思いきや、この人の行動もなかなか支離滅裂。
旅の途中、未来が行きずりの男に抱かれ旅行資金を稼いできたことを知るや激怒し、俺が教育してやるとばかりに未来を強姦。
それで未来が感動→悔い改めるという展開も意味不明でした。
そうした旅を経て、ラストの母親との再会シーンでは遂に未来の成長が見られるのかと思いきや、これも不発。
塔馬の唐突な身の上語りと説教が主であり、それに心動かされた母親が少しだけ母性を見せるという、未来そっちのけの展開に拍子抜け。
最後まで未来の大きな成長は見られず、かなり物足りない読後感でした。
辛口ですみませんが、中立評価とさせて頂きます。