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全てを肯定してくれたのは、自分を正面から見ていないから…? 憧れの先生と恋人になった瞬間から、本当の恋の苦悩が始まる──
aisuru
BLとしての萌えは少ないけど、文芸作品っぽい雰囲気があってストーリーは楽しめました。
芸術家って普通の凡人とは違う部分が多くて大変なんだろうな、と思いました。由多の先生も絵の才能があったのに若いうちに潰されてしまって可哀想。歪んだ性格のあの芸大講師。当て馬かと思ったらそうでもなく…芸大ってあんなに才能のある奴は潰しておけ、みたいな恐ろしい所なんでしょうか?大学の同級生たちもギスギスしていて嫌な奴ばかりでした。
甘々えろえろなBLも大好きですが、たまにはこんなちょっと毛色の違った話も面白いです。
あまりのまっすぐさに世の中と軋轢を起こす少年・由多と
彼の辛い思春期を支えてくれた、若い絵画教室の先生・凌。
由多が藝大生となり、凌に想いを告白するところから話は始まる。
外の世界に出て行った由多が、自分と他者との関係を見つめ
凌の過去を知り、葛藤しながらも自身の才能と特質を失わず
むしろそれを昇華させて一回り成長し、
凌を「愛する」ことを選び直していくまで。
表紙で分かるように絵の世界を描いた物語……ということで
とても興味を持って手に取った。
いささか観念的な物語のテーマも、
由多を思う親友や、由多に興味を持つ藝大の講師など
脇役を含めてのキャラクター造形も好み、
エロが少ないことも構わないのだけれど、
何故か全体としてはピンとこなかったのは、
多分文章に上手く乗れなかったことも大きいのではと思う。
筆者の作品は『毎日晴天!』を一冊だけ読んだことがあり
それはかなり面白く読んだし、その時にはあまり感じなかったのだが
今回は読みながら時々躓くような感じがあった。
光に向かうようなラストは美しいが、
最後はいささか急ぎすぎで消化不良気味な印象。
そしてこの結末ならば、個人的には攻め受け逆がよかったし、
胸がキュンとするような萌えはなかった。
個性のある面白い作品だったが、
全体の評価としては上記の理由で「中立」をつけます。
年上攻めの年の差、しかも先生(絵画教室のだけど)×生徒!美味しすぎる!と勢いのまま買ったのですが、これはグリグリと心をえぐる作品でした(汗
ウッキョー!なんて喜んでごめんなさいと思ってしまうくらい、ある意味ピュアなお話でした。
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受けは藝大一年の由多、18歳。
12歳から凌の教室へ通い藝大への受験時も予備校へ通わず、頑なに凌の元だけで描いてきた異色の才能。
凌を慕い、いつしか恋し、その想いだけで育った雛鳥です。
攻めの凌は28歳の絵画教室オーナー。
祖父から受け継いだこじんまりとした教室で、時間の流れを止めたような生活をしています。
由多の気持ちを受け止めたかのように見えながら、実は自分の内へ誰も寄せ付けません。
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由多は良く言えばピュアで、悪く言うならば空気の読めない子なわけですが、それをそのまま持ってきたからこその才能なのだと思います。
世俗にまみれていたら描けないような、見えないようなものを持つ。
それは由多のそのままの個性を長所として咎めずにきた凌のお陰と言えますが、それはまたはたから見れば彼の自分勝手さでもあるわけで。
由多は人間関係を築く上での大切なものを学べず成長し、そしてそれを知った時愕然とします。
凌が「何も間違ってない」と言っていたことは確かに間違ってはいないですし、幼い由多の心を守る為ではありました。
ただやはり物事は、世界は正論だけでは成り立たないので…
間違いを正さないことが愛ではないと知った由多が、いかに絶望したか。足元がガラガラと崩れ落ちて行ったことでしょう。
キスを数えていた由多は可愛かった。
大学生なのにまるで少女のような恋で。
この季節を通ってきた者にはひじょうに青臭く恥ずかしくそして懐かしくもあって、今ならそんな自分に言ってやりたいことがたくさんある。
そんな由多が最後には凌を守る側へと一気に変わるのですが、この辺りはちょっと出来杉君な感じがしました。
もう歳を重ねてしまった分凌の側を変えるのは確かに難しいであろうとは思うのですが、あんなに頑なに由多を拒絶することが出来る凌ならば可能であったのではと思うのですよね。
妙にラストで由多成長物語が美談になり、据わりが悪いというか…
由多のたった一人の親友である永遠とのあの電話のシーンを読み、安易に落とさない姿勢にじーんとなったリアルさが消えてしまったのが残念でした。
このシーンは本当好きです。
もともと菅野さんだからエロの期待はしておりません(笑
なので、あまりそういうシーンがない作品をお求めで、かつ、薄汚くなった自分と対峙されたいMっ気のある方にお勧めいたします。
わたしとしましてはそういう自分の汚さを見て見ぬ振りしたいので、かなり前半グサリグサリときましたが読んで良かったです。
中盤まではうおおー(神)となり、最後はうーん(中立)となりまして間を取り萌×1に致しましたが、凌自体はすんごく好きなタイプなんです。
多分自分が由多位置だったとしても、絶対好きになってしまうでしょう。
が、こういう攻めを汚いと感じる方には駄目だろうなあと思うのですよ。
わたしはもともとズルい(汚いとは思わないんです)攻めって好きなのでウェルカムなのですが、かなり人によって好みか分かれそうだなあと感じる作品でした。
あと以前はあまり感じなかったのですが、今回は菅野さんの文体が少し読み辛かったです。
タイトル通り、受けが攻めをひたすら「愛する」話。
その愛に対する見返りや大団円等、物語に大きなカタルシスを求めてはいけません。
美大1年生の由多(受け)は、絵画教室の講師・凌(攻め)のことが好き。
美大合格後、彼に想いを打ち明け、恋人のような関係になるも、凌は由多にキス以上のことはしてこない。
凌の母校でもある美大には、彼の過去を知る講師がいて……というような話。
「宗教画の天使」のような美貌と才能に恵まれ、自身も天使のように純粋な由多の、精神的成長を描いたような作品です。
美大で同級生に妬まれ、凌にはそっけなくされ、凌の過去を知る講師や女性にも心を揺さぶられ……
スランプに陥った由多が、人の悪意に押し潰されるのではなく、凌への愛を糧に再起するまでの展開が非常に感動的。
自身の悪意のない言動がときに人を傷つけることを知った由多は、まっすぐなだけでない真の優しさを学んだのだと思います。
凌は、中学の頃いじめにあっていた由多を救ってくれた大人の男性。
かつては由多のように才能に溢れた青年でしたが、ある事件を機に絵筆をおき、子どもたちに絵を教えることに徹しています。
凌が「潰れた」過去のエピソードについては色んな意見があるかと思いますが、個人的には、凌の挫折は親のせいでも同級生のせいでもなく、彼自身の真面目さと繊細さが招いた結果だと思います。
しかし、そんなまっすぐな人物だからこそ由多に愛され、由多だけでなく他の子どもたちの心の支えにもなっているのでしょう。
由多を自分から遠ざけようとしていた凌が、精神的に大人になった由多に愛され、これから再起していくことを期待させるようなラストです。
凌が由多を大切に思っていることは伝わるものの、ラブラブな雰囲気ではないので、物語としてのカタルシスは薄め。
しかし、これは由多が周囲の意見に惑わされることなく自身の愛を貫くことを決意するまでの、意志決定の過程を描いた物語だと思うので、これはこれで良いのでしょう。
そして、その過程には大変感情移入でき、愛することの意味について考えさせられました。
美術好きな方や、プラトニック寄りで切ない話がお好きな方におすすめしたい一冊です。