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「くちびるに機関銃」のスピンオフです。
津森の同僚・住吉とぶつかって怪我をしてしまった自転車の少年・裕太のお話。
ぶつかってしまったのは津森の方でなんとか裕太の世話をしようとするも遠慮されて。
「迷惑じゃない?」と気にする裕太を説き伏せて、なんとか裕太の面倒を一時的にでも世話する権利を得て。
そうして、裕太と接するうちに芽生える感情があるのだが…。
前回の下町コメディ的なノリから考えると今回は随分、色が違うというか。
シリーズで下町コメディな感じなのかと思っていたら、こちらはわりと私が今まで読んできた海賀作品に近いせつないテイストの物語でした。
なので、「~機関銃」より、こちらの方が好きです。
もう、とにかく裕太が健気なんですよね。
いろいろ必死に隠そうとしたり。
迷惑になることに異常なほどに反応して、迷惑にならないように踏ん張って。
でも踏ん張り切れずに涙を零すような。
住吉にとってはほんの些細なことで涙を零すような。
意地っ張りだけど素直だったり、相手の感情を読むのがうまかったり。
先回りして別れを切り出したり。
1つ1つのことにキュンとしてしまう。
住吉の方もそんな裕太を放っておけなくて、大事にしたくて。
愛したくて、可愛がりたくて。
そういう気持ちは溢れんばかりに持っているのに、それとは対極の「男同士で間違ってない?」「正しくないことは駄目でしょ」みたいな感情が常にあって。
だから、裕太に肝心の言葉を与えることも出来ず。
それでいて、なかなか手放せずに、会えば身体ばかりを求めるような。
大人になればなるほど周りのこととか気になるのはしょうがないことなのかもしれない。
けれど、最後の最後に考えて。
自分の手元に大事に1つだけ残しておきたいものは?と考えた時に、裕太以外考えられなくて。
ようやく、住吉は裕太とのことを受け入れられるようになっていくわけです。
外に公言するわけではないんだけれど、住吉の考え方が変わっていったことで裕太との接し方も少しずつ変わっていくのが印象的でした。
住吉、成長したなぁ(笑)
個人的には口ではなかなか素直な気持ちを言えない裕太がメールだと「淋しい」とか「会いたい」とか素直に伝えられるのもかわいくて好きですv