お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
chinkonka
馳星周先生のデビュー作『不夜城』の続編です。
90年代半ばの歌舞伎町を舞台に、中国やくざの抗争の陰でデッド オア アライブ状態に追い込まれ、生き抜こうと奮闘する男達を描いた残酷物語。
ざっくりというとそういう話なんですが、愛を知らず他人を踏みにじり利用して生きてきたろくでなしが、初めての恋にストンと落ちてしまう物語でもあります。
主人公は二人の男達。美貌の殺し屋・郭秋生と、サド趣味のある元悪徳警官・滝沢誠。最初は二人には何の接点もないのですが、ひとつの事件にそれぞれが別の角度から関わったことにより、運命が交差します。
秋生は中国やくざの情婦に一途な恋心を向け、ひたすら彼女を守ろうとし続けるのですが、そんな彼に滝沢は一目惚れしてしまいます。滝沢は秋生に対する気持ちが何なのかわからないまま、秋生の声や視線などに一々心を躍らせたり悲しみの底に突き落とされたり。そのさまは、まるで初心な少女のよう。まさに泥中の蓮のようにきらめく初恋です。
思えば、この作品のせいで腐女子になりました。
クールで男前で純情な殺し屋と、支離滅裂でサディスティックな元警察官の二人が主人公ですが、両者の視点で展開していきます。
追いつめられて両者の距離が縮むのは息が詰まる見どころであり、萌えどころでした。
元警察官が、殺し屋を愛してしまいます。プラトニックです。 最後のキスが重くて胸が痛む。
馳星周氏は、隠れBLを通り越して、堂々とホモを描く作品が多いです。この作品はまだおとなしいぐらいです。
歌舞伎町の暗部で、一人の狡猾な男がトップに上り詰めるまでを、その男に利用された二人の視点から追っていくお話。匂い系とされる所以は、終盤の展開にあるのかな。誰も救われない切なさが後を引く読後感だった。
視点主は主に二人で、一人目は秋生。別視点では、ものすごい腕を持つ美貌の殺し屋といった評価だが、当人視点では子供のような幼い心の内が見える。初恋の義姉を殺したトラウマに囚われ、似た女に執着し始める。
もう一人の視点主は滝沢。手錠に興奮して刑事になり、退職を余儀なくされた後は中国マフィアの犬として生きている。女を縛って殴らなければヤれない男。勘が鋭く、真偽を嗅ぎ分ける能力がすごいが、メンタルは弱々。
さまざまな思惑が入り乱れる中で、秋生と滝沢はゆっくり真実にたどり着いていく。そこには絶望しかなく、あまりにも殺し過ぎた二人はついに、という真っ暗展開。そして最後には、これは黒幕のための物語なのだと思い知らせてくるような。
出てくる人間全員が善悪でいえば悪側で、常にいつ誰に殺されるか分からない世界で生きている。そんな場所で繰り広げられる人間ドラマは、いろんな意味で濃い。
自覚せざるを得なかった滝沢の秋生への恋心は、歪んだ弾丸を生み、最悪の結果に繋がってしまった。遺言のような秋生の最後の言葉を胸に敵に突っ込み、何の成果も得られず倒れる最期が切ない。
人間の暗部をこれでもかというほど見せつけられる作品。短文の羅列が独特の不気味さを放ち、この世界にどっぷり浸からせてくれる。しんどいけど面白かった。
まさに闇。まさに暗黒。スリリングなBL小説が好きなので最初はワクワクしてたんですが、登場人物がワルすぎてさすがに萌えられなかった。
終盤では確かに切ないBL展開っぽくはなってきます。美貌の殺し屋に惚れる元悪徳警官・滝沢。その殺し屋・秋生は中華ヤクザの情婦に夢中。しかしその女はとんでもない悪女で秋生のことを全く愛していなくてただ都合よく利用しているだけ。それを知った滝沢は何ともやりきれない思いでいる…といった感じです。
しかし滝沢と秋生にしても、前作の主役で今作ではとんでもないワルに育って2人の事をかき回す健一にしても、主要人物全員に殺人・強姦経験があり、全く恋を応援したいと思えるようなキャラじゃないんです。フィクションだし殺さなければ殺されるという状況だったとはいえやり過ぎ感がすごい。まあそういうジャンルの話なんだろうけどBL面を楽しむにはキャラ達が性悪過ぎて私は乗りきれませんでした。小説としては裏切り、どんでん返しの連続で面白いですが。