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烏天狗×天涯孤独の青年の、甘くてちょっぴり切ない両片想い
kurotengu no iinazuke
父親に逆らえなかった中学生の優眞が、天狗の長と知り合って少しずつ変わっていく、心温まるファンタジーです。
中学生の優眞の両親は、父親の優眞への異常な執着と編愛で離婚しています。
そして、離婚後から始まった、父親の異常な支配。ミニスカートで過ごし、髪型はセミロングのおかっぱ。でも、可愛がられてるわけではなくて、気に入らないと殴られます。毎日が辛くて教師に言ったこともあるけど、教師は父親の外面に騙されて丸め込まれます。そして、告げ口したと、また暴力を受けるのです。
だから、もう誰も助けてくれないと諦めて過ごす毎日。でも、心は限界に達していて…。
ある日、僕と言ってしまった優眞を責める父親に、とうとう切れて口答えしてしまいます。怒った父親に、いつものようにマンション10階のベランダに締め出されます。童謡を歌って気を紛らわす優眞。でも、疲れ果てた優眞は、衝動的に飛び降ります。
その時助けてくれたのが、天狗の天雫でした。
生きろと言う天雫に、無理だと必死で訴えます。それなら神隠しにあってみるかと…。
そこでも女の子の振りはしなくちゃいけないけど、初めて人から大切にされる心地よさを味わうのです。望みを言っても怒られずに、叶えてもらえる喜び。友達もできて、作った料理も喜んでもらえる。初めての、生きてる実感を感じます。反面、いつかは記憶を消されて、元の世界に帰らなくちゃいけないと怯える毎日。
そして、とうとうその日はやってくるのです。初めてのエッチの時に天雫と交わした約束。元の世界に帰ってからの曖昧な記憶。それでも必死に生きていきます。
優眞を好きになったらダメだと戒める気持ちと、止められない思い。そんな天雫の、不器用な優しさと愛情にキュンとなります。自分の子供かもしれない天狗にも嫉妬するのも可愛いし。離れてる間、浮気もせずに一人エッチで我慢してたなんて、その一途さに悶えます。
対して、優眞も、天狗の世界で自分ができることを一生懸命にやってるところに好感が持てます。自分の意見も言えるように、前向きに変われたのが良かったです。
ご都合主義かもしれないけど、父親の態度が変化してたのも良かったし。
そして、子供天狗の天禄の可愛さとしたたかさに、萌えて癒されます。甘えるふりしてチュウしたり、キスマークを付けたり。今後、天雫のライバルになりそうで楽しみです。
欲を言えば、再会してからの二人のイチャイチャをもっと見たかったけど、天雫が優眞を溺愛して甘々なのが、読んでて気持ち良かったです。
李丘さんの花嫁BLは初めて読みます。ファンタジーの世界が、辛い現実を生きる主人公の逃避先のようになっており、ただ甘く幸せなだけの花嫁物とは一味違う重厚さがありました。
父親に女装を強いられる14歳の少年が
ある日思い余って自宅のベランダから飛び降りる。
そこを天狗に助けられ、天狗の里で十代を過ごすことに。
やがて主人公は記憶を消され、元の世界に戻されるが
天狗への想いは消えず……とそんな話。
主人公の14歳から20歳までの成長が丁寧に描かれており、辛いことを乗り越え聡明な青年に育っていく描写が秀逸です。
主人公を思うが故に手を出さず、現実世界に返してやろうとする天狗の誠実さも良かったです。
ストーリー自体は、さほど意外性はないオーソドックスなものですが、「人間が異界に嫁ぐ」ことの覚悟や困難さが丁寧に描かれているところが本書の魅力かと思います。
人間の世界に戻った主人公は
父親とも和解し、大学でも結構モテて
そこそこ幸せそうな毎日なのに
自分の意志で天狗に嫁ぐことを選ぶ。
元いた世界に別れを告げる姿には
天狗への愛や覚悟の大きさが感じられ
悲しくも非常に感動的なシーンでした。
「嫁ぐ」って何だろう、と考えさせられる
温かくもほんのり切ない花嫁物だったと思います。
天狗、神隠し、許嫁、と萌えキーワードてんこ盛りのファンタジーです。
14歳の中学生の優眞(受)が自宅マンションから自殺しようとして飛び降りた所を天狗の天雫坊(攻)が助け、生きるように諭そうとします。
優眞は何の価値も無い自分は生きたくないからと自分から進んで神隠しとして天狗の里へ連れて行ってもらいます。
大人になるまでと約束して。
三年後
現実の世界に戻ってきますが、ほとんどの記憶を無くされているにもかかわらず、大事な人の存在がいたという事はぼんやりと覚えていて、大学卒業後は好きな人と結婚すると公言しています。
ストーリー的に見れば急展開する様な事も予想を裏切る様な事もありませんし、先も結果も多分こうなるんだろうなと言う様な王道ストーリーです。
天雫坊は天狗の里の長で一番能力も高い為、嫁として連れてきた優眞は大事にされますし、優眞本人も皆んなの役に立ちたいと、一生懸命野菜を育てたり、台所仕事したりと頑張って天狗の里に馴染もうとします。
そんな優眞に好意を寄せる天狗が出てきたり、天雫坊のライバルが出てきたりとして、ストーリーを盛り上げますが、優眞も天雫坊もお互いが想い合う過程も丁寧に書かれていていますし、優眞が素直に育って行く様子も読んでいてほっこりしました。
天雫坊が優眞を迎えに来るまで天狗なのに欲望を我慢していたり、優眞の20歳の誕生日は、仲直りした父親と祝わせてあげたいと1日待ったりと、天狗と思えないぐらいの気遣い。
最後は、きちんと優眞の父親に挨拶をして許しを貰う所が何だか人間的ですが、天狗相手に大人な対応の父親はあまりにもアッサリ許してしまうし、さっさと目の前で飛び立って終わりでは少し物足りなさが残りました。
当て馬?の息子の天禄もまだ優眞を諦めて無いし、改めて大人になった優眞が天狗の里に行ってからの二人のラブラブや色々なトラブルなんかを続きとして読みたいと思いました。