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shuchaku no kuroi ryousen
短いながらストーリー展開に起伏があり人物の描き方がたいへん秀逸です。
パリで成功し日本へ戻ってきた画家の芹沢と画廊のマネージャー美鶴のおはなし。
あるパーティで芹沢が美鶴にシャンパンをかけてしまうアクシデントで二人は出会う。それがきっかけで美鶴の勤めるギャラリーと画家芹沢との付き合いが始まる。
すでに有名画家の芹沢を担当できることはギャラリーにとっても美鶴にとってもたいへん名誉なこと。
だが、個展を任されたのに絵を傷つけてしまう大失態をおかす。
個展を中止するという芹沢を説得する美鶴だが、個展を開く交換条件に躰を要求されてしまう。
男もましてや女も知らない美鶴にとっては相当な覚悟だが、なぜか芹沢はやさしく接し最後までは抱こうとはしない。だが、何度も一緒に過ごす内にだんだんと芹沢の美鶴への執着が激しくなっていき美鶴は怖く感じ始める。
そんな中週刊誌の記者にも探られ…
芹沢のパリへ渡った原因そして美鶴への想い、美鶴の芹沢の画に対する想いと芹沢本人に対する気持ちの変化、そして二人の本当の出会い、いろいろな要素がバランスよく展開し飽きさせません。
個人的にこの作家さんの文章ととても相性が良いようです(^^ゞ
本のタイトルが『執着の黒い描線』。
以前に読んだ松浦さんの作品が『蜜の罠』と『被虐のボディーガード』なものですから、どれだけ執着していてどれだけ黒いのかビクビクしながら読んだのですが……大丈夫でした。そんなにドロドロしていません。むしろこの三作の中では一番甘い。
天才画家×その絵に惚れ込んだ画廊勤め。
春日は自分が担当した芹澤の個展で大作の展示に難があり、絵を傷つけるという大失態を侵してしまいます。
これはかなりヤバイ。
本当に首が飛ぶほどの失態です。
謝罪をする春日に芹澤が代償として要求したのはセックスの相手を務めること。
この時点で芹澤は『嫌な奴』認定をされるはずなのですが、そうならないんですよね。
春日、気持ち良くなっちゃって寝落ちしちゃうんです。
でも、芹澤は怒らないの。
芹澤が奉仕→春日が気持ち良くなって寝落ち→2人でご飯。
で、延々とこの関係が続くんですよ。それも幸せそうに。
春日は途中から芹澤の過去がらみの事件に巻き込まれていきまして、これもなかなか読ませてくれるのですが、何と言っても前述の『最後まで行かない無限ループ』がなんか可笑しくて、それなのに可愛らしくて、非常に気に入りました。
サスペンスを盛り上げる文章なのに、どこかユーモアも感じるんです。
そして何より品がある。
前にレビューされた方も書かれていますが、私も松浦さんの文体がとても好みです。
同時収録作品も、大人が恋をする時の上向きの気分が現れている部分は素敵なのですが、ただ、その種明かしはちょっと無理がある様な……
でも、こちらも読後感は非常に良かったんですよね。
きらきらしいとか、流暢であるとかとはちょっと違うのですが、とにかく魅力的な文章だと思います。
文体フェチの姐さま方、読んでみませんか?
好きな作家さんなので購入しましたが、しばらく積んでた作品。松浦さんの中でも好きな作品になりました。
画家と画廊マネージャーという関係のふたり。受けは美人ながら恋愛経験なしの純情派。一方、画家の芹沢は一流だが変人ではなく、ワンコ攻めの趣があります。お約束のようにHのときはオレ様に豹変。
実は幼い頃に出会っていた2人ですが、それには気づかず仕事上の関係から恋愛関係に入っていきます。しかし、最初の出会いがあったゆえに、攻めの強い執着に説得力が出ます。
ストーリーはあらすじ通りで、受けの仕事のミスを切っ掛けに攻めがカラダを要求し、だんだんほだされるというよくある展開ではありますが、文章、構成ともに無理がなく最後まで集中が途切れないので、なかなか楽しめました。