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濃厚エロスに包まれた童話世界の芳しき恋愛譚!
ningyohime no otouto
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
童話の世界に触れる心躍る楽しさと、耽美漂う美しくも切ない心焦がす恋物語に大いに魅了される。
本誌を開いた瞬間から時間を忘れ、夢中になってページを捲っておりました。
前のページに戻って何度も同じシーンを読んで感動したり、キュンとしたり、読み終わってしまうのが惜しいとさえ感じる至福の一時でした。
童話(特に人魚姫)を題材にしたBLを以前より読んでみたいという気持ちはあったのですが、どんな風に描かれているのか不安が先立ち、なかなか手を伸ばせませんでした。(こちらの作者様の作品を途中で断念してしまったこともあって余計に^^;)
人魚姫は私の中では大切なおとぎ話でして、人魚に憧れた幼少時代を思い出すとイメージのままであって欲しいと思ってしまうんですね。
だけど、そんな心配は全く必要ございませんでした!
寧ろ、お気に入りの童話をベースにした大人向けのお話を大好きなBL作品として読めたことに感謝したいです。
笠井さんのイラストもイメージにぴったりでして、その美しさに陶酔を覚える程に表紙も挿絵もこれでもか!というぐらい見返してしまいます。
エロスの描写も美しく、王子とリトの行為には切なさを感じてしまうところもありました。
『人魚姫の弟』『人魚王の息子達』の結末は、魂までも恋した二人(勝手な解釈)がどんなカタチであろうとも共に生きていくことを許されたハッピーエンドでしたが、そこに漕ぎ着けるまでには胸を絞め付けられるような切ないストーリーが多々あって…人魚姫に付き纏う儚さ、自己犠牲の上に成り立つ愛を大いに感じました。
何も知らないでのほほ~んと違う人と結婚してしまうような王子じゃなくて本当によかった!
こちらの作品に登場してくる王子様は男気に溢れていて好感が持てます。
リトも本当に健気で美しくて、物語にこれ以上ないぐらいマッチしていた人魚の王子様だと思います。
今にも泡となって消えちゃうんじゃないかって思える程、繊細で淡いのに芯はすごく強いんですから、そのアンビバレンスな感じも堪りませんね。
これじゃ王子もリトにメロメロになっても無理ないです。
身を擲ってまで愛を貫き通す…そんな二人がとにかく美しいです。
まさに愛の力ってのは偉大!
とてもよく作り込まれていて、最初から最後まで本当に素敵でした!
ヘンデルとグレーテルをモチーフにしたストーリーも心に残りますね。
ユリアスの境遇を考えるとすごく可哀想だけれど、旅に出るようなワクワクさがあって、ユリアス達の向う先々の光景が脳裏に浮かぶようです。
ユリアスもこれまた健気な男の子で常に遠慮がちで可愛い。
そんなユリアスも運命の人と出会い、旅をしながら愛情を深め合って過去を浄化していくようなところに心を打たれました。
ユリアスのお相手フェルナンの体毛にはびっくりしたけれど、美しいユリアスとの体格差のようなものを一段と感じることができて逆に萌えました。
弟のテオはまだまだあどけなさ残る、やんちゃな男の子といった感じでしょうか。
恋するにはまだちょっと早いよね~とか思っていたら、こちらはこちらで運命の相手を見付けたようですね。
大人になってからだよ的なショタちっくシーンがまた楽しかったです。
弟のお相手も素敵な王子様なので二人のこれからが非常に気になります。
どちらのお話も本当に素晴らしくて、これは何度でも再読しちゃいそうです。
犬飼さんに、笠井さんの挿絵と聞いて即購入。即購入しましたがいろいろあってやっと手元に届きました。
うん、素晴らしい。さすがでした。まず表紙。笠井さんの描かれる表紙はどれも素敵ですが、これは群を抜いて素晴らしいと思いました。笠井さんの表紙は書店で購入するのにためらうものも多いですが、この表紙ならリアル書店で購入できますね(爆)。とにかく綺麗。グレンとリトの表情も雰囲気があっていいし色遣いも良いし。表紙を見ただけで興奮度MAXでした。
さてさて中身ですが。他の方も書かれていらっしゃるように童話をベースにしたお話が2話入っています。内容は皆さま書いてくださっているので感想を。
『銅の足輪』
グリム童話の「青髭」と「ヘンゼルとグレーテル」を混ぜたようなお話でした。
受けのユリアスが健気で…。両親の虐待に耐え、弟を守ろうとする姿に思わずウルっときてしまいました。ただひたすら耐えるだったユリアスが、攻めのフェルナンに愛情を注がれだんだん人間らしい感情を取り戻していく姿が嬉しかったです。
あとフェルナンのヒゲを剃ってあげるのが非常にGJでした。いや、個人的にヒゲもじゃもじゃっていうのが嫌なだけなんですけど。
このお話は3部に分かれていますが、最後はユリアスの弟・テオのお話。ちょいショタが入っていてう~む、と思ってしまった。まあ、最後までしなかったから許してやろう、と非常に上から目線な感想を持ってしまいました。
表題作『人魚姫の弟』
もうまんま人魚姫です。そして受けのリトが「人魚姫の弟」です。
人魚姫の姉と同じように人間に恋をして、そして魔女に美しい目と引き換えに人間にしてもらうリト。イルカ族の母を持つリトはイルカの姿にもなれ、その姿で今までも王子さまに会いに行ってはいたのですが、恋心が募りすぎてイルカとして会うのではなく、人間になって王子さまに会いたかった恋心にきゅんときました。
攻めのグレンも本当にいい男です。ヘタレでなく、自分の気持ちに一本筋が通っている。また色黒(人種の問題ですが)ってところが良かった。カッコいいです。
ベースは人魚姫なのですが、さすが犬飼さん、犬飼さんならではの「人魚姫」になっていて、知ってる話なのに新しい、そんな感覚で読みました。
お互いが自分を犠牲にしても相手を守りたい。そんな純愛にこちらまでウルウル…。幸せになれて、本当に良かった。
しかし何度でも書きます。笠井さんの描かれたリトが美しすぎでした。
2話入っていますが、どちらのお話も萌えの詰まった、そして挿絵もとても綺麗なお話でした。文句なく神評価です。
おとぎ話を基にした連作集。
ヘンゼルとグレーテル編と人魚姫編、どちらも甘く、切なく、エロたっぷり。
普通、小説だと一冊まるごと書き下ろしか、前半が雑誌掲載分で後半が書き下ろしのパターンだけど、角川のこのシリーズはweb連載をまとめて本にしているだけあって、短編連作だったり長編でもお話の山場がリズミカルにあったりと、読後感は小説の本よりむしろコミックスに近い感じで、それがなんだか新鮮。
笠井さんの挿絵の力もあるのかな。
いっそ、コミカライズで読ませて欲しい。
濃密エロスで贈る童話世界の匂いやかな恋愛譚
【人魚姫の弟】
悲恋の人魚姫の弟・リトは、人間の王子・グレンに恋をしている。
報われない恋と知りながら、それでも傍にいたいと願い人間の少年へと変身するが、、、
【人魚王の息子達】
恋が成就した後のリトとグレンの蜜月の日々
【銅の足輪-The anklet of bronze-】【銀の指輪-The ring of silver-】
弟と森に迷い込んだ美貌の男娼・ユリアスと、森に住む悪魔と噂される青髭・フェルナン。
弟を守るため、フェルナンにその身を捧げるユリアスだったが、、、
【金の腕輪-The bracelet of gold-】
ユリアスのまだ幼い弟・テオと、ブロンドの王子・ジークフリート。
町で絡まれているテオを救うジークフリートだが、お互いに一目で惹かれあい、、、
耽美で儚い2つの童話
あなたのお好みはどっち?
犬飼さんの作品は、随分前に一冊読んだきりでした。
その時には個人的に合わず、今回もどうしようかなあと思いながらも、笠井あゆみさんの美しい表紙とフルール文庫(意外に自分には合うレーベル)にホイホイされ購入。
しかしこれが!
もっとはやく買って、ペーパーもゲットすべきだったと激しく後悔しております。
ペーパー読みたかったよー!(涙
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カップルは三組。
森の中で一人で暮らす研究家でモジャモジャヒゲのフェルナン×家族を養うために両親によって男娼をさせられていたユリアス。
テオを暴漢から救った王子ジークフリート×ユリアスの弟で兄思いのテオ。
ブロンズの肌を持つフューン国第一王子のグレン×人魚姫の弟でイルカ族の血を引く15歳のリト。
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今作は、三カップルの短編集とでも言えそうな作りとなっています。
『銅の足輪』『銀の指輪』『金の腕輪』はヘンゼルとグレーテルがモチーフで、『人魚姫の弟』『人魚王の息子達』が人魚姫モチーフ。
両方に王子は登場していますが、国が違うのでまったく別ものです。
前半はユリアスとテオたちのお話が収録。
両親によって自分だけでなくテオまでも身売りさせられることを恐れ、とうとうテオを連れ森へ逃げたユリアス。
しかし方向を見失い空腹を抱えたところでたどり着いたのが、フェルナンの小屋でした。
はじめユリアスはフェルナンを森の悪魔だと思っていましたので、せめてテオだけでも命を救いたいと身体を投げ出し抱かれることでフェルナンに許しを請おうとします。
でもね、フェルナンは悪魔ではなく優しい人間の男で、ユリアスに一目惚れしちゃっていたわけですよ。お約束ですが。
でもこのお約束がひじょうに良い。
一見それこそ熊のようなフェルナンが、華奢でフェルナンいわくべっぴんなユリアスを大事に抱き、そして翌朝、嫁に来て欲しいと頼む様がたまらなく萌えます。
もともとヒゲやら体毛やらは大好きな(攻めのね)わたしなのでよけいに(苦笑
そして弟テオのお話はというと、フェルナンとユリアス、三人で暮らし始めて六年の歳月が経っています。
ふたりが仲良く買い出しに出かけ、テオが一人で留守番をしていたそんな時。
ユリアスが以前嵌めていた銅の足輪を発見し、それが安売りの男娼の目印と知らず持ち出したテオ。
そして男に襲われ、結果ジークフリートに助けられ…という展開なのですが、テオが本当にユリアスを愛していて、彼が幸せになったことを自分のことのように嬉しい反面、男娼として働き自分を食べさせてくれていた兄の笑顔の影を知り、体が千切れそうな思いを味わいます。
しかしテオは強いんですよ。
自分にそんな過去のことを知って欲しくないとユリアスは絶対考えているはずと、テオはジークフリートへ語ります。
だからそんなユリアスのために自分は笑顔でいるのだと。
そんなテオの強さとしなやかさに、一気に惹きこまれたジークフリート。
わたしは年の差大好きなため、このお話が悶えるほど好きなんですよー。
しかも寸止め!
なんという焦らしプレイですか、犬飼さん!
ジーク、そこまで手を出したなら良いじゃないかーと思う悪人です。わたしは。
この続きはぜひ文庫で出して欲しいです。
熱烈希望です。
なにやらペーパーはこのふたりだったようで、そちらが読めず本当に悔しいー。
で、最後がリトのお話。まずネタバレさせますね。
アンハッピーが嫌な方も多いと思いますので書きますが、こちらは童話の人魚姫と違ってハッピーエンドとなっています。
まあ、ハッピーの形は色々なのですが、きちんと共にいられるラストです。
もちろん人間の姿になれるようにと人魚姫が自分の声を魔女へ差し出したように、リトも差し出します。
声ではありませんが。
男同士(フューン国は同性愛禁止)であり、自分の本当の姿を語ってもいけない。
そして城へ入る為に魔女が用意した紹介状も、怪しまれず有効なのは春まで。
恋を知るまでは泡となった姉のことを本当の意味で理解することが出来なかったリトも、姉が嫌という程味わった悲しみと苦しみを自身も味わうのだと覚悟しながらも、叶わぬ想いを断ち切れずにグレンの側に居続けています。
この人魚姫モチーフのお話だけは攻めと受けの両視点です。
そのお陰でグレンのリトへの熱情と国を思うその狭間で苦悩する心の内も、ひじょう伝わってきます。
本当は両想いのふたり。でも、環境がそれを許さない。
リトもまた、グレンの幸せを願いながらも、自分本位な希望も捨て去ることが出来ず己を責めています。
わたしはラストを先に確認して(邪道)から読んだので良いのですが、確認せずに読まれてた方はハラハラしたことでしょう。
特にリトが囚われてしまってからは。
本来短編集は苦手で読み応えがないと思うことが多いのですが、こちらの作品は構成も良く一本一本がしっかりしていて、今まで読んだ短編集の中で一番読書した!という満足感をもたらしてくれました。
童話の世界がお嫌いでなかったなら、ぜひご一読ください。
【人魚姫の弟】の前に【輪シリーズ】が3本収録されています。こういった形の本は初めてでしたが、”読者の心を掴んで離さない!”・・・。心を鷲掴みにされ金縛りにあったように夢中で楽しませて頂きました!その後いよいよ【人魚姫の弟】。私達が知っている人魚姫との繋がりもあり、人魚姫と言えば魔女!魔女とのやりとりも見どころだと思います。読み終わるころに『そうなるんだ・・・!』と感じさせられたり。全体的にしっかり濃いお話しですが、スーッと頭に入ってきて読みやすいです。苦しくなるけどモヤモヤしないステキな小説でした!
童話をモチーフにした短編連集。
短編ながら、物語に浸って読んだわ~感が高い。
「銅の足輪」から始まる『ヘンゼルとグレーテル』をモチーフにしたお話3話。
受け様は両親に男娼を強いられていたユリアス。
幼い弟のテオを連れて森の中を逃げている途中、青髭の悪魔が住むと言われる小屋へ辿り着く。
そこで出会ったのは悪魔ではなく、気のいい研究家の攻め様であるフェルナン。
男娼の証である足輪(アンクレット)
「俺のために外してくれる?」と言うフェルナンと、言葉もなく頷くユリアスと。
恋人となった2人の、嫌われたくないという気持ちからのスレ違いのお話である『銀の指輪』
フェルナンのプロポーズの言葉がとても好きです(^-^)
ラスト、ユリアスの弟のテオにも早々に運命の出会い編の『金の腕輪』
三部作、銅、銀、金からの輪っか。
なるほど、効果的に上手いこと使われてるなぁ。
表題作『人魚姫の弟』
受け様は、イルカ族の血を引く人魚王子リト。
攻め様は、人間の王子であるグレン。
訪れる別離の哀しみ。
我が身を犠牲にしてでもあなたの幸せを、という切ない想い。
どうなるの~~߹߹
ハピエンになるの!?
なるほど、それがここにくるのか!
と、ドキドキハラハラで、とっても面白かったヽ(*^^*)ノ
イラストは笠井あゆみ先生。
褐色肌の王子と、人魚王子の表紙から始まる美しいイラストの数々。
ユリアスとフェルナンの方は、フェルナンの体毛が見慣れないのですが、体格差を感じられて良きかな、です(´ω`)
前半2/5は、
ヘンゼルとグレーテルをモチーフにしたエロ多めながらほのぼの系の物語。
そして残り3/5は、
人魚姫とロミオとジュリエットを合わせたような切ない物語でした。
どちらもラストは明るく、
幸せな童話を読んだような温かな気持ちで本を閉じることができました。
では掲載順に内容を。
■輪シリーズ
銅の足輪、銀の指輪、金の腕輪、という続き物の3つのお話。
一昔前の王政時代の外国が舞台です。
安いお金で男娼をさせられていた美しい容姿の受けは、
心ない父親と継母から弟を守る為、兄弟で家出をするも森で迷ってしまう。
ヘトヘトになって行き着いた先は、
青鬚の悪魔が住むという噂の、壁も屋根も赤く塗られた家。
空腹に耐えきれず、食べ物を失敬してしまったのが見つかって、
兄は弟を守りたい一心で、青鬚の悪魔に抱かれるのだけれど……
安い値段の男娼は、女の代用品でしかない。
愛情など欠片もない辛いセックス…そんな経験しかない受けが、
鬚面で、毛深い男の愛撫にとろけ(攻め:脇毛もすごいです!挿絵あり♪)
初めて自分を抱く相手を想って胸が熱くなるのを感じる……
男娼の証だった銅の足輪をを外し、
全く違う意味を持つ銀の指輪、金の腕輪を手にする兄弟。
兄弟それぞれに初めての恋をして、
性の悦びを知り、人生の輝きを知る…そんな幸せな物語でした。
■表題作「人魚姫の弟」
言わずと知れた有名童話、泡と消えた人魚姫。
その人魚姫の弟が人間の王子に恋をして、
片目と引き換えに魔女に人間の姿にしてもらい王子の小姓に。
人魚でいた時は、
イルカに姿を変えて王子のよい話相手になれていたけれど、
人間になったらそのことも人魚であることも絶対に秘密…
告白したら心臓が止まってしまう。
そして、季節がひとつ変わり春が来るまでに、
王子の絶対的な信頼を得なければ小姓ではないことがバレてしまう、
スパイと疑われ拷問…待っているのは死。
命を懸けて王子の側に行くことを望んだ健気な人魚、彼を待つ現実は……
王子と人魚が、
互いに何度も心を切り裂かれるような辛い思いをしながらも、
相手を強く愛し激しく求める姿に、胸が痛みつつ惹き込まれました。
挿絵も笠井さんだけあって、どの絵も美しく見惚れます。
表紙のエメラルドがかった海の色が綺麗! 透明感があって、吸い込まれそうです。
笠井あゆみさんの挿絵の美しさは毎度のことながらため息モンですね。
表題作絡みで2話と、親の虐待から逃れ森に逃げ込んだ兄弟の物語3話の全5話からなる、大人のエロい童話集。
◆「人魚姫の弟」「人魚王の息子たち」◆
アンデルセン童話「人魚姫」の続編的なパロディ。
実はあの人魚姫にはリトという名の弟が。彼は姉と同じく王子に恋をし、彼の側にいたい一心で自らの片目と引き換えに人間の姿を手に入れて、王子に仕えることになるのですが――
叶わぬ恋の末に人魚は海の泡となって消える・・・という救いのない悲恋物語「人魚姫」と違って、この弟バージョンは恋が叶う顛末。
ただ、手放しのハピエンではなく、「人魚姫」の犠牲愛というエッセンスはしっかりと踏襲されていて、そこに原作へのオマージュを感じます。
表紙絵の通り、王子は「黒髪にブロンズ色の肌」。
元ネタがアンデルセン童話ということで、王子の容姿は北欧系の金髪碧眼を想像していたので、ちょっと意外。
人魚のリトが金髪碧眼なので、2人のバランスに配慮した結果なんでしょうか。
こういう容姿のバランスへのこだわりはBLならではですね。
濡れ場描写はかなりていねい。さすが大人の童話です。
初恋どうしのピュアな2人だけに、いちゃラブが甘―い! この甘さがまた童話ちっくな世界観を盛り上げてる気がします。
エロだけでなくストーリーもかなり凝った内容になっています。
人魚のリトが絶体絶命の危機に陥るスリリングな山場も複数あって、ドキドキ。
人魚なだけに世慣れていないリトがうまく危機をくぐり抜けることができるよう、要所要所にちゃーんと幸運のタネも仕込んであって、その仕込みの巧妙さも見どころです。
その昔「人魚姫」を読んだ時から心に沈殿していた鬱々と晴れない想いが、今ハピエンの形で(しかもホモ版でw)再読できたことで、ン十年ぶりに払拭された感じ。
そんなカタルシス効果もコミで、萌×2。
◆「銅の足輪」「銀の指輪」「金の腕輪」◆
こちらは、じゃがいもがヨーロッパに普及し始める時代の話ということで、16世紀頃でしょうか?
親の虐待に耐えかね、ヘンゼルとグレーテルよろしく「黒い森」に逃げ込んだ兄弟が、森に棲む悪魔の館へと迷い込み、あわや食われるかと思いきや――というお話。
たしかに「喰われる」話ではあったんですが・・・えっと、BL的な意味でw
こちらの方は、ストーリーは単純ですね。こんないいことずくめなら、早く家を捨てて「悪魔」の懐に飛び込んでいれば良かったのに、と思うくらい(笑)
「悪魔」と恐れられる存在には、本当に人に害をなす者もあれば、単に周囲と少し違う部分のある人間が、異端者とみなされ、そう呼ばれているだけのこともある――この物語に教訓を付けるとすれば、そんな感じでしょうか。
当時「悪魔の植物」と恐れられていた(実は保存が利き飢饉の時には命を救う有益な穀物)じゃがいものエピソードが挿入されているのも、まさに「悪魔」の根拠が時には過剰な偏見に過ぎないことをほのめかすものでしょう。
登場する兄弟は少年で、年齢は表記されていませんが、弟のほうはまだ幼なそう。
その弟クン絡みのちょっとショタショタしたシーンもあり。
その辺の好き嫌いは分かれそうですが、軽く楽しめる大人の童話という感じです。
萌×2に近いです。萌×2にしなかったのは、文庫にしてはお高い価格と、
普段のケレン味のある犬飼さん作品を期待すると 肩透かしだったからです。(あとから萌×2に変更しました)
銅の足輪、銀の指輪、金の腕輪のお話しはーー
親に強要され売春させられていた兄が、弟までも餌食にされそうと知って森へ逃げ、恐れられていた青髭の男と出会い、愛し合うお話。
なにがすごいって挿絵が。
体毛がモジャモジャです、攻めが。びっくりしました;さすがだ。
お話しは素直です。ひねりもなく、ストレート。
ただ、弟もジークフリートという王子らしき人と出会い、
Hも行為の途中まで及ぶのですが、その先がこの文庫には収録されてません。書かれてないのかな?
なんだか、不完全燃焼な気分になりました…。
そして表題作の「人魚姫の弟」。
童話の人魚姫に弟がいた、というお話。
その弟はイルカ族の血をひいているという設定で、イルカの姿で日々、王子のグチを聞いてあげていたけれど、魔女の言葉にのっちゃって片目を差し出し、ヒトの姿で王子の小姓となりーー。というお話。イルカ、かわいいっv
策略や血なまぐさい箇所もあるんですが、童話がベースだけにキツくなくカンジました。ハピエンです!
最初に書いたように、全体にいつもの犬飼さんよりおとなしめ?ほのぼの?というか。その分?物足りない感もあったものの。
しんどい現実的な話を読む気力もなく、でもありえなさすぎるBLも読む気がしないなあという気分でしたので、 童話ふうが気持ちよく読めました。