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お前の無実を証明する――お前を守るのは、俺だ
suitei renjo
本編はラブ的には少し物足りない気がしないでもないのですが、事件を解決する
弁護士で受けになる恵吾のクールな姿がしびれる作品でした。
攻めになる大企業の三男坊でフリーライターの晃司は既に話の初めから殺人容疑者なので
たいした出番がないのですが、逆にそれが弁護士と依頼者の関係が少しずつ信頼関係を
築いていく過程が見えやすいので面白いです。
それになんと言っても痛みがありながらも後味が悪くない設定だと思えたのが
凄く個人的に良かったです。
晃司と殺されてしまった被害者は傍目には高校時代の友人なのですが、
実は二人はゲイで恋人同士だった過去があります。
高校卒業から音信不通だったのが相手からやり直したいと連絡があり断るが、
同じマンションに引っ越してからも何度か会っていたりします。
その内容は妻との離婚相談もありで、事件当日は元彼に呼び出され出向くのですが
直ぐに晃司は元恋人の目の前で誰かに後ろから刺されて気を失い目覚めれば
元恋人は死んでいて晃司が容疑者になってしまうという事件なのです。
事件の密室のからくりや妻の犯行を疑う流れはすんなりくるし、BLにありがちな流れだと
夫の浮気相手が男だと知って逆上なんて展開がありますが、この作品は少し違っていて
元恋人がゲイだとか晃司との関係を知った妻が何かをするという展開にならずに
晃司が弁護士の恵吾相手にも隠したかった性癖を裁判で暴くことなく恵吾が晃司の
無実を勝ち取る流れだったし、妻も最後まで気づかずに終わるのでその辺りが
読みやすさと後味の良さを感じる要因だった気がします。
書き下ろしの短編は本編後の恋人同士の甘い話ですが、受けになる恵吾が自立した
弁護士できりっとしてるのに、男相手の恋愛に照れてる感じはギャップ萌えで
個人的には受けキャラが素敵だと感じる作品でした。
レビューは読了後すぐに書けなければ書かないのが信条なんですが、これは特別。と言うのも何度読み返していて、その何度目かに「書ける」気分になったのでした。
キャンペーン時にとても格安で手に入れたのですが、本当にお買い得でした!
電子版なので繰り返し読むのにもワタシ的にはたいへん快適ですw
大手弁護士事務所に勤めている弁護士藤野とフリーライターで小笠原グループの孫でゲイの小笠原のお話。
小笠原が友人を殺した殺人犯として逮捕され藤野が弁護することになります。
藤野の弁護士事務所は民事専門ですが小笠原グループの顧問だった為、刑事事件でも受けることになり若手で有能な藤野が選ばれたのです。
もちろん藤野も刑事事件の裁判は初めて。
年齢も若い民事専門の弁護士に対して小笠原は自分が殺人犯として逮捕されているにもかかわらず非協力的でどことなく投げやりです。
そんな小笠原に対して、藤野は彼の為と言うよりは大手の取引先の為自分の出世の為と、協力的ではなくても有能な弁護士らしく出来ることを積み上げていきます。
そうやって我慢強く接していくうちに、小笠原はグループの為と思って隠していたことが反対に迷惑になることだと藤野から気づかされ、藤野は小笠原が隠していたことの想いに影響されていつしか小笠原グループの為ではなく小笠原自身の為に無罪を勝ち取る為に奔走していました。
本当だったら検察側がこのくらいの捜査をやってくれなきゃなーな感じなんですが、それくらいの捜査を弁護士藤野がやり遂げます。
職業キャラとしては「検事」が大好きなので、弁護士にここまでやられちゃうとねっと言った個人的な感想はあるものの、これは弁護士が主人公なのだからこれでもちろんいいわけですw
そして、裁判までの藤野の頑張りと裁判を通して二人はお互いの存在が特別なものになっていきます。
藤野からしたら思い切った決断だったのではないかと思いますが、それ程極端な方向転換でもなく自然に結ばれたように思いました。
事件の成り立ちや解決までの流れが長いページ割かれているわけでもないのに心地よいほどに綺麗にまとまっていて、事件に関わりのある人それぞれの想いがわかりやすく伝わってきます。
人物・事件・背景、あらゆるものがバランスが良くてたいへん読みやすい作品でした。
やっぱり事件系ちょいミステリものは面白い!
主人公はクールビューティで有能な弁護士・恵吾。
上司からの命令で、専門外の殺人事件の弁護を引き受けることとなる。
容疑者は財閥の小笠原グループの三男でフリージャーナリストの晃司。友人の阿部を殺害した罪に問われていた…
詳しいあらすじはすでに皆様のレビューにありますので感想だけ。
もちろん晃司と阿部の間には人には言えぬ過去があって、阿部の死にも関係はしているんだけど、読んでいくと何も2人の同性愛関係が直接の問題じゃない。
そこがBLとして珍しい設定だと思った。
事件の真相は一転二転三転くらい混沌として、初の刑事事件を担当する恵吾ののめり込みを読者も体験する感じで、真相に近付いて行く様子などかなりスリリング。
犯人は…
これ、例えば2時間ドラマ的感想で言うと、後から出て急に犯人?みたいな意見と、意外な動機と意外な結末!みたいな意見に別れそう。
さて、これはBLです。
だから結局は晃司と恵吾がそうなるんだけど。
ここも、晃司はゲイなんだけど恵吾はノンケでその上恋愛体質じゃない。それどころか人付き合いは常にビジネスライクなんですよね。だから恵吾が晃司を恋愛的に受け入れる、という論拠がやはりどうしても薄い…と言わざるを得ない。
事件もの・推理もの・法廷ものとしての面白さはあるけどその点に引っかかり、総合「萌」。
電子書籍で読了。挿絵あり。
表題作とその後を描いた短編が収録されています。
表題作は、藤野が主人公の「ミステリ+法廷もの」として面白く読めました。
このお話が「ミステリ」である所以は、被告人の小笠原が弁護人である藤野に不可解な態度で接すること。本来ならば無実を勝ち取るために行われるべき協力が、何故か行われない所に「謎」があるのですね。その「謎」を解くために藤野は探偵役もこなすという形になっています。
この「謎」を解明していく部分がイケル!
トリックに無理がないだけではなく、探偵役である藤野の情報収集が進んで行くにつれて、登場人物の「存在の悲しさ」みたいなものが徐々に明らかになっていくところが良いんですよ。上質な海外ミステリみたいなんです。
あと、さいごの「謎解き」が法廷シーンであるというのもカッコイイ。
ミステリなのであらすじやトリックのネタバレは避けますが、ちょっとここからそこの部分に触れることを書きます。ダメな方はパスしてください。
読み進むと、私の中で「出てこない人」が主人公になっちゃったんです。
その人の存在の「悲しさ、やるせなさ」にめちゃめちゃ萌えた!
事件が解決した後の、藤野と小笠原のラブラブ部分がお話の本筋と上手く繋がらなくて「ありゃりゃ」ってなっちゃったのが「中立」評価の理由です。
法廷シーンが終わって、その人の存在を悼み、その余韻を残して終わる形だったら、ものすごく私好みなんだけどなぁ……
あ、でもそれだったらBLじゃなくなっちゃうのかぁ!
2014年刊、淡々と進む法廷もの。
弁護士という職業柄白黒つけたがる恵吾と、重傷で無実なのに殺人事件の容疑者に仕立てられていながらもどこか無気力な晃司。
彼の弁護を請け負った恵吾は、地道な調査や駆け引きから晃司自身が抑えていた実直な感情を引き出すのに成功して、事件の真相を見つめ直す機会へと道を開く。
素の晃司は恵まれた育ちの坊ちゃんなのに傲慢さは皆無で、意外にも他人の安息の為に自己犠牲を払う一面があった。
そこを恵吾との軽い衝突を経て心を開き、被告人と弁護人という立場から発展した恋、とも言える内容だが…
そもそもの事件のあらましと真相は読んでみての確認という事で。
う~ん、個人的には告白ENDでの締め括りでも良かったかな、と思う。
+αでラブシーンも盛り込まれているけれど淡白な印象で留まっている。
自分にとって、いおかさんはいろいろ読んでいて波長が合う?と感じる作家さんだ。
この人の文章には無駄な言い回しやギトギトした描写がなく読み易いと思う。
アットホームな一面が伺えてそつがない展開はこの話でも発揮されているが、今回は時に癖を付けなかった点がそのままあっさりした印象に直結してしまっている。
その時の気分でさらりと読める一冊を探している人向きかな。
ガッツリと登場人物に感情移入したい人には、不向きかも知れない。