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俺が一から飼育してやろう──家畜のように
shiiku no kobeya
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
内容的には切なく苦しくも愛する人への思いと音楽が作品から感じられる素敵な作品。
でもね、タイトルから連想する内容とはかけ離れている気がするのです。
飼育の小部屋ですよ?監禁チェリストですよ?
もっとドロドロの人間の闇部分やままならない劣情なんかを想像しちゃいますよね。
でも蓋を開けたら意地っ張りで大好きな人に自分の忌まわしい過去を知られたくなくて
精一杯の虚勢を張ってる健気な受けの朔真が自分のせいでピアニストとして再起不能に
なってしまった従兄弟で攻めになる年下の冬威に尽くす話なのです。
そして一応監禁もどきする攻めの冬威もかなり一途に朔真を子供の頃から慕っていて
でも朔真と朔真の異母兄との関係に諦めきれない恋心を抱きつつ、朔真のチェリストの
才能を音楽に真摯に向かうように傲慢な命令風を装ってこちらも健気に尽くす感じ。
互の相手への気持ちを告げずにいるからすれ違ったままで、誤解しあっていて、
そこに朔真の異母兄の歪んだ愛情や憎しみ嫉妬の感情が入り込むことで
簡単に二人の恋が実らない展開なのです。
そもそもは朔真と異母兄の関係から歪みが出ていて、朔真の母親のせいで異母兄の母が
精神的に駄目になり亡くなり、異母兄はそんな母親と共にいたことで心が歪む。
そこに音楽一家の長男と言うプレッシャーもかかり、全てが異母弟の朔真に向かい
暴力や陵辱を受けるが、朔真も兄に対して同情、自分たち親子のせいだからと言う
贖罪にも似た気持ちがあり、本当は兄より音楽の才能もありながらも兄より目立つことを
しないように全てを我慢して諦める日々を送っている。
そんな中で唯一の光に似たものが従兄弟の冬威なのですが、冬威への自身の気持ちが
兄のこともあり汚いもののように感じ才能ある冬威とは住む世界が違うといつしか
諦めの気持ちを抱いているのです。
そんな時に兄の仕業で事故を起こし冬威がピアニストとしては再起不能になり、
朔真はそのことがきっかけで兄からの呪縛を逃れることになるが、
自分のために才能ある冬威や駄目になることに心を痛め今度は冬威に贖罪する流れ。
音楽と官能を同時に堪能できるようなストーリーで、クラッシックに興味がないのに
作品に出てくる曲を聴きたいような気持ちにさせてくれるのです。
誤解やすれ違いがなければ初恋を実らせる甘いお話なのです。
監禁や飼育のタイトルがあるけれどその意味ではタイトルに偽りありかもと
思ってしまう作品だと思いますが個人的には好きなストーリーでした。
このタイトルに、この惹句。
そしてこのあらすじ。
さぞやエロエロな監禁調教物と期待すると…。
そこは華藤えれなさんなので、エロエロと言うよりは、大時代メロドラマ。
調教じゃなくて、薄幸、不幸に耐える喜びにうち震える受けと、そんな受けの奴隷願望に翻弄されるご主人様になりきれないヘタレ飼い主の攻防を、水の都ベネツィアの冬を舞台に、チェロのエロいメロディに乗せ、芸術性豊かに謳いあげる。
って風情かな。
この、自分さえ耐えれば、みんなの幸せのためには自分さえ耐えればいいといいながら、結局そのことが周りの誰一人として幸せにしない受け、みたいなのが地雷な方には絶対オススメできないけど、逆に、それが好きな方にはオススメ。
小山田あみさんのカバー絵がエロいです。
裸でチェロを抱きしめ、脚で挟み込む部分がちょうど帯で隠されているのですが外してみると、もう、えっちいです。。。
そんな、チェリストの後ろに座るいかにも俺様で酷薄そうな男が、受けを監禁してどんな酷いことしてしまう調教モノかと恐る恐る読みました。
帯の文章が『俺が一から飼育してやろうーー家畜の家畜のように』ですから。
名門音楽家一家に生まれた三人がいます。
天才ピアニストの冬威。
秘められた才能を持つチェリストの朔真。
朔真の異母兄で凡庸な能力のバイオリニストの潤一郎。
冬威、朔真、潤一郎のだれも母親に恵まれませんでしたね。
というかしょうもない身勝手な女ばかりで親になる資格ないです。
出産がバレリーナとしての自分の邪魔だと言い幼い息子を捨てた冬威の母。
不倫の果てに相手の妻が死んで後妻に収まっておきながら、そのことに対する罪悪感から再婚後生まれた息子に義兄に遠慮する生き方を強要し、目立たぬよう生きろと洗脳し続ける朔真の母。
夫の浮気に苛立ちそれを息子への虐待で憂さ晴らししていた潤一郎の母。
従兄の朔真に恋心を持った冬威も共に演奏することで心を通わせる快感を知った朔真も可愛い初恋からきとピュアな恋人同士になれたはずなのに、潤一郎に邪魔され6年もの長い時間いびつな関係を強いられることになりました。
なのに潤一郎は父親が、朔真の母と浮気してたから母が心を病み自分が虐待され耳を悪くされたと恨みに思っていたところ、従弟の冬威がコンクールで優勝したと聞いたとき、腹いせに朔真を強姦しその動画を公開すると脅して関係を強要し続け大学卒業後に自分の付き人として飼い殺す心づもりとは非道すぎる。
歪んではいても潤一郎なりに朔真を好きだったことと、冬威才能を羨んでいたことで狂気に走らせたのだとは思うけれどこの人もやっぱり身勝手な甘えん坊ですね。
洗脳されていたとはいえ、朔真も短絡的でした。
自分さえ我慢すればみんな平和でうまくいくなどいう考えこそ傲慢で誰も幸せになれないのに。
誰も信じてくれない、でも家族も大事チェロも好きなのに演奏できない…。
そんな苛立ちや迷いで荒れた生活を送ったり真面目に取り組まない朔真の生き方に説教じみたことを言ってくる冬威の言動にも苛立つ朔真。
そこで起こった車の事故。
運転してた朔真は天才ピアニストの手を痛め再起不能かと思われるほどの大怪我に責任を感じ自身も重傷を負ったにも関わらず、完治しないままにベニスでリハビリ中の冬威の元に向かいます。
なんでもするという朔真にここで飼うという冬威でしたが監禁も陵辱もなくてホッとしました。
思ったよりヘタレなオレ様でよかった。
というか、子供の頃から大好きな従兄のお兄さんですものね、そんなひどいことができるわけがないんです。
で、ベニスの素敵な景観の中にある別荘で毎日エロい演奏を繰り返す二人が徐々に甘くなっていくんです。
でもそんな穏やかな生活も長くは続かず、これまた潤一郎の登場です。
ほんといろいろお騒がせな兄です。
朔真の母は、冬威とのことを知った時、これまでの朔真を押さえつけて償わせ続けることを強要したことを詫びて本当は世界的なチェリストになって欲しかったなんて言ってしまうところがほんと無神経で嫌いです。
この作品で一番の悪者で全ての根源だたんじゃないでしょうか。
この先、朔真はどこかのコンクールで優勝して冬威の指揮でますますすばらしい奏者として成長していくんだろうなと想像しました。