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byakuya ni aoi hana
始まりはまだソヴィエトと呼ばれた東西冷戦の終盤の共産国である時代。
それからベルリンの壁崩壊後の7年の歳月を経た再会。
ロシアから独立した架空の国スタボリア共和国を舞台に元ソヴィエトKGBスパイで現スタボリアの副大臣と外務省の職員という、とても因縁のある相容れない立場の二人の物語だったのですが、そうしたシリアスでシビアな背景と事情があるのに、あるからこそか、
ハードとロマンチックが融合してドラマティックな展開を見せて惹きこんでいく手腕の見事さを実感した作品となりました。
外務省に入り語学研修としてソヴィエトに来ていた海翔と偶然絵画を通して出会い、モデルを引きうける代わりにロシア語の教師をするという取引から、恋人関係になったロジア人のイリヤ。
しかし、自由の許されない国からイリヤを逃がしたいと願った海翔の願いはむなしく、実はスパイであったイリヤの裏切りにより、海翔は外交官としての将来を奪われイリヤへの復讐を胸に、外務省の裏の仕事を引き受ける狗として再会するのを待っていました。
そして、表向き名目文化交流担当としてスタボリア共和国へ出向く事になった海翔は、その国の文化担当副大臣となったイリヤと再会するのです。
天使と悪魔の二面性の顔を見せるイリヤにとまどいつつもイリヤを拒絶する海翔に、イリヤは海翔の本当のこの国の滞在の目的を知っている事をほのめかし、取引を申し出るのです。
共産国であるが故の自由の制限。
イリヤの生まれと育ちと彼の持つ事情。
決して、それがあったから復讐を誓った海翔が思いなおしてイリヤを見直したわけではありません。
裏の顔、表の顔、巧に使い分けなければならない事情を、あれから7年経った海翔は大人になって理解することが出来るようになったからだと思われます。
自由の国に暮らす日本人には計り知れない複雑な国の事情。
そんなものが上手くドラマティック展開に結び付けられていました。
この話は前半が海翔視点、後半がイリヤ視点、特に後半はイリヤの戦いでもあり、それに海翔が本人が知らぬとことで深く関与している事になっていたという事情もあり、イリヤの奥深さを見せる為にこの視点チェンジは必要だったと思われます。
しかし、イリヤの性格がとても強いものであったので、視点チェンジがあることによって、二人が再び恋愛をし直すという展開においての”言い訳”に思わせないところが惹きつける点です。
こうして見て見ると、修羅の道を進むのはとても綺麗な顔をして強い精神力を持つイリヤであり、
海翔は純粋な人だったと思われます。
イリヤの方がキャラ勝ちしちゃってますねw
互いの国の象徴的キャラクターかもしれないです。
だから海翔の影が薄いというより、海翔がイリヤの純粋なものへの憧れの象徴だったではないかなと・・・
追記:最初言及したイラストについてですがやはり復活させます。
高階さんの中身の白黒イラストが、多少手抜きっぽく見えた点がいつもきれいな絵を描かれるだけに、どうしたのかな?と。
そして海翔がその容貌描写に比べて幼く見える点が気になります。もう少し体躯のがっしりした男らしい絵がよかったような気がしました。
作品はソビエト連邦時代、まだ東と西に分かれた時代のソビエトを舞台にした話で
今でもスパイものでは名前の上がるKGBの美しき元スパイで連邦が崩壊した後は
架空の国の軍人で大佐になっているイリアと崩壊前はソ連の外交官補として
ロシア語の勉強の為にソビエトにやって来ていて、現在はエリートから外れた
外交官として秘密裏の任務を行う汚れ役をしている桐原との再会もの。
今は無い国の話で、架空の国を舞台にしているので、歴史云々は排除して読むのが
セオリーではないかと思いながら読みました。
内容は若き外交官補がハニートラップに引っ掛かりソ連の反乱分子をいぶりだす為に
利用されて、裏切られ、エリート街道から引きずり落とされ、愛を失う。
1度は愛した相手の裏切りに傷つき、次第に憎しみが湧き復讐を誓う桐原。
そしてソ連崩壊後、7年ぶりある目的の為にかの地を訪れた桐原は探していた
憎むべき相手と、崩壊後の国で大佐にまでなっているイリアと再会する。
初めの方は桐原の憎しみや復讐めいた心が浮き彫りになっていますが、
それと同時に今でも忘れられない過去であり、イリアの見せる妖艶だったり、
影さす寂しそうな横顔だったり、再びイリアに心揺さぶられるが、必死で抑える桐原。
7年前の裏切りもかなり深い訳があって、スパイだったけど、桐原に対する
イリアの気持ちは本物だったりするのです。
でもそれを、桐原に信じてもらえずイリアも苦しむ姿は憐れでした。
普通の恋愛が出来ない時代、夢も希望も見る事が出来なかった時代から、
一見自由に近くなったと思える国、イリアの周りでは国をも傾ける様な動きもあり
イリアは愛する桐原に信じてもらえない中で必死でもがいている流れです。
全体的にはシリアスで、ミステリーな展開で、結局は過去に愛した人を再び信じ
愛する事で活路を見出すような作品です。
攻めの桐原よりも受けのイリアの方が男前な感じなのに、ギャップがある程健気な
一面をのぞかせたり、1週間に最低でも16回セックスする事が付き合う事の
絶対的な条件なんてどれだけ絶倫受けなのかと思えるセリフもあって面白いです。
個人的に当たり外れが激しい作者さんです。
ドラマティックな心理描写や展開に、大抵は凄く引き込まれてハマるのですが…時たま、駄目な時は本当に駄目。この作品は後者でした。
歯の浮くような、といえば良いんでしょうか?
心理描写や台詞が随所で説明くさく大袈裟に感じられてしまって、攻めの葛藤やら受けの一途な切なさやら、折角の美味しい描写が真情として伝わってこない。
その為感情移入しづらいので、話にもあまりのめり込めませんでした。
で、入り込めずにしらぁっと半ば読み流していた結果。感情の動きや物語自体の展開が、やけにトントン呆気なく進んでゆくような気がして物足りず…ってそりゃそうだorz
「良いな~」と思うシーンは結構あったんですよ。クライマックスは程よく抑制が効いて、色々な面で美しかったですし、多面的な受け・イリヤの傲慢と健気が同居した人物造形なんか大好物です。
彼の愛に人生に必死で一途な様も、それを引き立てるドラマティックな展開も、客観的(?)に見て魅力的だっただけに…楽しめなかったのが残念です。
評価は…うーん……客観も加味して「萌」ですかね。
「萌」って甘い気もしますが…「星3つ」と考えればまあ。
華藤えれなさんは好きな作家さんなので評価にかかわらずとりあえず読みます。
イラストが好きな高階佑さんなので期待していたのですが、よかったのはカバー絵だけで特に中の挿絵は似ているけで誰が描いたのかと思われるような絵でびっくりしました。
時間がなかったのでしょうか。
カバー絵の銃を構える細身の男と美形の軍人、どっちも受けに見えました。
主役は日本人外交官と東欧のスパイ。
ハニートラップに引っ掛かり重要秘密を漏えいしたことで出世の道を閉ざされ裏の汚い仕事をする羽目になった外交官の桐原が、裏切ったスパイのイリヤに復讐を誓う。
数年後、軍人として出世したイリアと再会するが、真剣に国策に取り組む表の顔と妖艶な裏の顔を知り復讐心よりも愛情の方が勝っていく過程がよかった。
7年前の裏切りの理由や生い立ちの秘密が解明され、過去のお互いの想いも愛情も嘘じゃなかったというのは救いがあってほっとした。
儚げな線の細い美人風なイリヤですが、実際はか弱さのかけらもない男前な軍人でスパイでした。
でも罪悪感なく目的のために躰を利用するとかビッチ受け系はあまり好きではないので萌え少な目になりました。