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奇才・樹生かなめが放つ、男だらけの絆と再生の人情コメディ!
rakuen dinning natsushinozaki
角川のこの本、そこはかとなくBL臭を漂わせながら、そうでない展開を見せる。
それは、普段のBL作品の樹生作品が独特のセンスを持つ作家さんならではの「樹生節」を持つ文体で描かれるから、それとの差異をほとんど感じることなく読めてしまうという樹生マジックなんだろう。
作中、とてもシリアスで残酷で痛いシーンが登場する。
主人公の過去もそれで引き籠ってしまうほどのダメージを受ける可哀相なモノもある。
なのに、淡々とではなくて「ひょうひょうと」した語り口と主人公の口調と、どこまでもポジティブな面白くて愉快な周囲の人々によって、そのネガティブな要因さえも、さほど重く苦しい印象を与えずに進んで行ってしまう点が樹生作品の良い点でしょう。
またこの他にも共通する点として、若干毒を含んだ風刺も採りこまれている。
これが、自分が「樹生節」と命名する所以でもあるのです。
湘南の隠れ家ダイニング「夏篠崎」
そこを舞台に、裏切りに合い人を信じられなくなった元会社員の伸弥が、みずぼらしい身なりの不審者っぽい男性を怪我させて面倒を見た事に始まる事件。
その拾った男=ぴたりと当てる当世稀代の占い師廉雀を巡る追跡・逃亡の先にあった意外な事実。
前半途中から夏篠崎から舞台は離れるが、最後夏篠崎へ戻ってくる。
常連さんの癒しと憩いのダイニング・夏篠崎はさらに癒しを与えるメンバーを増やして。
作中、ダイニングのオーナー・春希の行方不明の弟、夏希が男の恋人がある設定であったり、ダイニングのマドンナ・真央が実は男性であったり、と実は登場人物はみんな男性♪
話の中心になる廉雀と伸弥も、そこはかとなくホモ展開を期待してしまう良い関係を築いていく。
BL展開しようと思えばしないところが、憎いじゃないか(笑)
真面目が故に人を信じられなくなった心に傷のある男性と、
本当は互いに言葉を交わして開き合わなかったためにすれ違いを起こして逃亡することになった男性が、
この出会いと出来事を通して一歩前進するお話。
とてもとてもポジティブでまさに「夏篠崎」の雰囲気を伝える話となりました。
・・・ひょっとして、評判がよければ続編も?という期待を残して・・・
厳密に分類すれば雰囲気系BL、主役以外の登場人物で同性の恋人同士はいるけれど
主役になる二人はベタな恋愛とはちょっと次元が違うある意味もっと深い繋がりに
なっていく展開になります。
友情とは微妙に違うけれど、もし続編があれば確実にくっ付いても不思議ではないと
思える内容で、最後も匂い系のままに終わるのですが、後味が爽やかなのです。
そして、本書の登場人物紹介に確かマドンナがいたと思って読んで見ると、
いつの間にか登場キャラが全て男になっている。
内容は、主人公である篠崎伸弥がある事情でエリートリーマンだったのに会社を辞めて
従兄弟に誘われ従兄弟が経営する隠れ家的なダイニングで働く事になる。
このダイニング、お値段もかなりお高くて一元さんや通りすがりの人間が入りやすい
店ではなく、いつも常連やその紹介の人で成り立つお店。
そして来る客が従兄弟に悩みを打ち明け愚痴をついて、来た時には暗い顔だった客が
笑顔で帰っていくような癒し系のダイニングなのです。
そのダイニングで店でも困ったお客だった男が酔って暴れ、腕に覚えのある伸弥と
従兄弟の二人で店から追い出し、力で向かってきた男を伸弥の一本背負いで撃退したら
見ず知らずの人間まで巻き込む事態になる。
一見すると浮浪者に見える怪しげな人物、それでも怪我をさせた責任で世話をしようと
するが、寡黙に拒絶され、引きずる足を無理やり医者に見せた時も名前さえ
言おうとしない。
足に撃たれたと思しき弾倉の痕、髭や長い髪に覆われた怪しい風体、それでも責任と
何故かほっておけないと言う気持ちで、面倒を見始める。
そしてこの怪しい男が実は2年くらい前から忽然と姿を見なくなった有名占い師で
その本物の能力故に様々なトラブルや裏切りに合っていた。
占い師の廉雀と伸弥、この二人を中心に、廉雀の霊能力的な力を狙う人物から伸弥が
文字通り命をかけながら守るスリリングな展開のストーリー。
伸弥の身体の強靭さがとんでもなくリスキーな展開で何度も危機に陥ったりする
ドキドキ感もあってあっと言う間に読んでしまえる。
是非続編も読んで見たいと思わせる内容で面白かったです。