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あなたに「おかえりなさい」を言うのが、好きです。
kuronekoya saijiki
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
掲載誌を開かず、一冊にまとまった状態になって
初めて目を通しました。
先に読んだコミック版の事については余り頭に
置かない様にして。
群像劇を紐解きながらジワリと深い所を粘っこく
ならない様に淡々と掘り下げてゆく。
作中に『非日常空間の構成分子』なる言い回しが
出てきますが、ややもすれば心理描写にまで
その理屈が適用されている作品の空気に、
戸惑う方もいるかも知れません。
ただ、評者は思うのです。
そう言う淡々と紐解かれる恋も又有りなのでは、と。
淡々と流れてゆくからこそ澱みに足を取られず
前に進む事の出来る恋もあるのではないか、と。
くろねこ屋は、舞台裏でさえも非日常空間で
ある様です。だからこそ時には居つかぬ人も
居つくのでしょう。
やっと椹野さんの小説のほうの『くろねこ屋歳時記』が出ました♪
普段ユーモアだったりシリアスだったり痛かったりがどちらかというと好きな方なんですが、このゆる~い感じのとてもほのぼのしている『くろねこ屋』の雰囲気も大好きなのです。
それぞれのキャラクターの特徴と関係が魅力的です。
店主のネコヤナギさんがお茶を飲むために開いた、自ら海外で買い付けてくる雑貨と喫茶のお店”くろねこ屋”
この小説は、そこで働く人々のお話です。
冒頭に、勤めていたホテルが倒産して職探しをしている時偶然見つけた不親切な看板の求人張り紙に誘われてここの見習いとして採用されたナズナ。
店長のヒイラギ、副店長のシロタエ、パティシエのタンジー、料理担当のアマリネ。
そしてネコヤナギの飼い猫シラー。
彼等がくろねこ屋のスタッフです。
そして名前は本名ではありません。
皆芸名のように、草木の名前が付けられてそれが呼称になっています。
最初に、ナズナとくろねこ屋の出会い
2話目に、タンジーと高校生・エイスケの出会いとかわいい恋バナ。
3本目に、帰国したネコヤナギとヒイラギの恋人の様子。
4本目に、休日のそれぞれのスタッフの様子。
5本目に、くもさんのマンガの方で主役になった神社の鹿郎が登場して夏祭りの様子。
が描かれていきます。
ナズナのお話では、まるで自分がナズナになってくろねこ屋に就職希望しているような気分になります。
こうして、くろねこ屋という店とスタッフのキャラの紹介になるのです。
このナズナくんまだ19歳だし、人間関係もまだよく解らないので色々質問しますが、それはまんま読者が知りたい琴だったりするのですよ。
ナズナくんは読者代表v
しかし作中、唯一カプリングされないシングルマンです(笑)彼にも淡い恋がやって来る日があるのかな?
タンジーは大阪弁で大柄で力のある感じの人。
こんな人が繊細なスイーツを作るというギャップがいいですね。
そしてとてもイイ人なんです。
高校生が苛められているのを助けて、其の子に懐かれて恋人にさせられても、受け入れちゃってる(笑)
この高校生・エイスケの描写が鬼太郎みたいな、っていうのが笑ってしまいました。
ほとんど11歳年下の恋人に振り回されても、嬉しそうな感じがとてもいいですね。
そして、シロタエはヒイラギと同級生で本当はヒイラギが好きなんですが、当のヒイラギだけがその気持ちに気がついてないという!
とても人当たりがよくて、頭の回転が速そう。
ヤンチャなアマリネにいつもナイスタイミングで突っ込みを入れていいコンビなんですが、何と!?
このアマリネはどうもシロタエが好きみたいで、仮の恋人関係が成立するんですが、きっといい感じで進展していくんだろうな~と予感させます。
ネコヤナギはヒイラギを溺愛しています。
このネコヤナギ、正体不明のひょうひょうとした人物、鹿郎に似ています(何となく)
ヒイラギが好きで好きでたまらない、経営者の特権を使って時々ヒイラギをさらっていきますが、それに遠慮してうろたえながらネコヤナギに翻弄されるヒイラギが、一見こまかそうな外見と性格とのギャップでとてもかわいらしい人なのです。
後半で、二人の出会いとネコヤナギの愛の深さが語られますがちょっぴり切ないものも。
きれいなカナリヤを見つけたので、大きな鳥籠を用意して、そこに保護したけど、出て行きたければ出て行けばいい、って
この表現がネコヤナギの気持ちを語っていて、彼が寂しい人なのがわかってしまう。
ひょうひょうとしているけど、とても奥が深いのです。
居心地のよさそうなお店と、素敵なスタッフ達、
時に客気分で、ナズナくん気分で、彼等をずっと見ていたい、そんな癒しとなごみを感じる場所なのです。
先に出ていた「くろねこ屋歳時記(クロニクル)」と時間的にも前後してリンクしてる、
コミックスではナズナさんが既にいたような気がするので、こちらの方が話としては
時間的には遡るような流れか、ある一定時間で同軸にシンクロしてるかも知れませんね。
それでも、この1冊で読んでも全然OKな内容だし、先のコミックスを読んでいると
ああ、あのカプのことね、なんて思い出したりもします。
テンポも緩やかで淡々としてる中に穏やかな優しさだけでなく、くろねこ屋に集う
人間関係が巧みに描かれていてそれぞれの登場人物が微細に描かれてましたね。
くろねこ屋で働く人たちが本名を言わないで皆が花の名前を名乗っているのも
くろねこ屋が、どこか日常と切り離した空間で、ひと時の癒しの場を提供している
そんな素敵な場所が舞台の作品で読んでると和みます。
それでもBL的には物足りないと思ってしまう事もないとは言い切れないし、
個人的にはクロネコ屋のオーナーであるネコヤナギさんはちょっと浮世離れ的でいて、
更に雰囲気が淡泊そうで、個人的に若干苦手なキャラかも知れないです。
それでも、そんなオーナーが恋人であるヒイラギさんの為に作ったくろねこ屋。
オーナー曰くヒイラギさんの為の大きな鳥かごでかごの扉はいつも開け放してある、
そんな場所に集う人たちのそれぞれの人間模様が飄々と描かれているようなストーリーで
独特な味わいのある作品に仕上がっていました。