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全体的にシリアスで辛く哀しく切ないストーリーのラブで、お互いの立場の違いから
思い合っていてもどうにも出来ない恋が描かれています。
受け様視点で描かれているので攻め様の気持ちがなかなか読め難い事もあるのですが、
相手の事を思うが故に一定の距離以上近づく事が出来ないジレンマが読んでいると
後半に感じられます。
個人的には甘い話が好きなので趣味的な問題で中立評価なのですが、この作品を読むと
定められた運命に逆らうことなく、どんな環境の中でも決してあきらめず前に進む
受け様の強さを、しかし恋を知ってしまった故の弱さ、相手の立場を思えばこそ
気持ちを押し殺して思い出だけを胸に攻め様の元から離れる受け様。
お話の後半まで良いことなんか何もないような受け様は、意地っ張りな分だけ可哀想で
親に売られた事から始まり男娼になって借金を返し、自由の身になるまで頑張る姿は
かなり強いよ思うけど、その中でままならない恋をしても立場の違いで思いを告げる事も
出来ず、更に攻め様の立場を考えて、攻め様に迷惑を掛けないように身請けを受け
好きな人には会えなくても幸せになるかと思えばDV男に殴られて、本当に憐れ。
これだけ可哀想な思いをしているのだからラスト方面はもっと甘々してたらいいと
思うけれど、左程甘さはないし、攻め様の思っていた以上の執着や受け様への気持ちは
解るけれど、不器用な感じで最後のギリギリでも受け様に誤解されそうになる展開。
普通に読んでて面白いけれど、可哀想な割に甘さも少なくて、攻め様と受け様のそもそもの
絡みが少ないからかあまり萌えを感じなかったですね。
普段、遊郭モノは好んで読みません。
興が乗った時気まぐれに読んでもいいかな?くらいの稀な頻度です。
何故かというと、一番嫌いなタイプの女のような格好をする、健気ではかなげな男娼というイメージが超苦手だからです。
今回サクラサクヤさんのイラストに、勝率として自分的に決して高くない作家さんではありますが(ごく稀にヒットが出る)手に取ることにしてみました。
寄宿学校に入っている白根子爵家の嫡男・真幸は電報で家に呼び返されます。
それは放蕩三昧で身代を食いつぶしアヘンに溺れた父親が、息子を吉原に売る為でした。
そうして、真幸は吉原の男妓楼の”二藍楼”の若旦那・梶原によって連れて行かれます。
どうしたら自由の身になる日が来るのか知った真幸は、必ずその借金を返してやろうと精進しますが、後輩に先に若衆になるのを追い越され悔しい思いを梶原にぶつけると18歳の誕生日に水揚げをすると言われます。
その日が迫り、仕込みが始まりますが羞恥で仕込み師を受け入れることができず、梶原独自の方法で仕込みされることになります。
そうして無事水揚げを迎えた真幸は”銀朱”という名で、どんどんとのしあがっていくのですが、仲が良く可愛がっていた仲間の清二が間夫に裏切られ自殺を図ったことから気がついた自分の梶原への恋情。
しかし使う者と使われるものの恋愛はご法度。
前から出ていた伯爵家の妾腹の実業家から言われていた見受けを受けることで、梶原との決別をするのですが・・・
結構流れ的には王道路線です。
含まれるエピソードや人間関係も予想範疇でした。
最初の梶原との出会いが最悪で、気が強く負けず嫌いな性格のようだったのが自分的に受け入れられました。
絶対ここから借金を返して出てやる!
目標があるから頑張れる。
髪が長かったり、女みたいな着物は遊郭の制服みたいなものなんで仕方ないですが、性質は充分に男っぽい雰囲気が見てとれたのはよかったです。
しかし、恋をすると変わっていくんですね。
極めつけは、見受けされて男妾になった途端、それまでの気の強さは!?
一変して、依存したまるきり女になってしまう様が憐れで、憐れで、
気が狂ってしまうんじゃないかと。
吉原を出た真幸は、目標を失った抜け殻だったんだと考えると合点がいきますが。
こんな流れがありましたので、さほど嫌悪感を抱かないですむ遊郭モノとなりました。
しかし、真幸視点ですから、梶原との接点描写からしか彼の気持ちをくみ取ることができないので、彼がどうして真幸を好きになったのか、その決定打というか裏打ちは欲しかったと思います。
でないとご都合になってしまう。
一目惚れ?それとも気の強いのが気に入った?
最初てやんでぇな荒っぽい口調で、怖い人かと思ったら案外優しかったり、彼の人間がもっと見えたらよかったかな?という感じです。
いいように解釈すると以上のような感じでしょうか?
後半の弱くなってしまう真幸はあまり好きじゃないですが、それまでの真幸は好きでした。
これがこの世界に馴染んだということなのでしょうかね(真幸が)
ラストに以前の真幸を取り戻して気が強い男っぽい面を復活させてくれていたらもっとよくは有ったのですが。。。
とりあえず苦手部門で地雷爆発しなかったのはよかったということでオマケの「萌え」です。