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妻にしてくれないと、殺させてあげないよ
aohigekou no konrei
なんだかとても不思議な雰囲気に包まれた作品でした。
奏真のつかみどころのないキャラも、そのあいまいな過去の記憶も、夏狩の執着の正体も、何も明かされないままにただ気持ちとお話だけが進んでいって、もちろん最後には明かされるんだけど、そのころにはすでに夢の中を漂うようにふわふわとした作品の空気にすっかり慣れてしまって、夢見心地のままラストを迎えました。
こんな感覚は初めてです。驚きと妙な心地よさとで、小説を読んだというより、長い夢を見たような。憑依型と言われる奏真のトランス状態を共感させられたかのようでした。
この感覚が非常に興味深く、それを体感させられるこの作品も興味深いと思います。舞台やお芝居の存在意義の一つは、一種のトランスに引き込ませてくれることで、お話もまた然り。そう考えると、これはなかなか秀逸な作品だと思います。
ただし、その部分が秀逸なあまり、萌えもふわふわとしたものになっているために、BLとしての評価は低く出てしまうかもしれないと思います。
しかし、この感覚を引き出せて、さらに破綻をもたらさずにお話を締めてきた作家の力量が、そんなことで低評価になったり、作品が埋没してしまうのは本当にもったいない、と歯噛みしたい気持ち。
萌えとは別の部分ではありますが、優れた作品として一押ししたい。私は大好きな作品です。
すっかり沙野作品にはまったので、これから片っ端から読んできます。
タイトルを見て、まずはじめに青ひげ公の童話を思い浮かべました。
童話には残酷さやあまり救いのないイメージがありましたので、青ひげというモチーフに沙野先生は一体どんな味付けをするのだろう?と、読む前から期待大。
沙野先生らしい一癖も二癖もある読み応えのあるお話でした。
以下、ネタバレを含む感想となります。
読んでいて物凄く不思議な感覚に陥る作品。
わけの分からなさに頭が混乱しつつ、続きが読みたいというか。
凄かった。沙野先生にしか書けないお話。
トーンは耽美な雰囲気かつダークでシリアス。
けれど意外と甘さもあります。
1ページ目から何かに追われている様子の主人公の奏真がとにかく謎だらけで、主人公視点だというのに全く掴みどころが無く戸惑う。
憑依型俳優として成功はしているものの、どこか抜け殻のようで破滅的な人間です。
(先生いわくヒトデナシ受けとのこと)
直接的ではないにしても、関係する女性が次々と自殺未遂をしていくので、てっきりはじめは奏真が青ひげなのかと思っていました。
青ひげは青ひげでも童話ではなく戯曲がモチーフだそうです。
こちらの原典も気になるところ。
ある日、マンハッタンでふと目にとまったギャラリーに入り込んでしまった奏真。
真紅の布が全身に纏わり付くような恐怖と焦燥感が伝わるシーンにミステリーやホラーの要素を強く感じて、ページをめくりながら奏真と共に「分からない何か」にどんどん追い詰められる感覚に陥ります。
そこに、いつも見る悪夢に度々登場する血塗れのアノオトコが現れる。
得体の知れない謎と混乱が渦巻く中、連れ去られた修道院で軟禁状態のまま与えられた花嫁という役柄と現実の境界が曖昧になり、やがてストックホルム症候群のようになっていく奏真。
軟禁場所から脱出をするために役柄を演じている内に、役としてジンに好意を持っているのか、それとも奏真個人として好きなのか?と、感情が分からなくなる様子に堕ちていく不気味さを感じます。
そして、青ひげの物語には欠かせない決して開けてはいけない部屋が登場する。
部屋の扉を開いてしまった奏真は…?
終盤でどんどん解けていく謎の数々に、なるほどなと。
恐らくですが、幼い頃の母親絡みの空白の部分から離人症のようになってしまっていた奏真が、扉を開く度に人間的になっていく、といったお話でしょうか。
ジンの拗れたトラウマ救済物語でもあったのかな。
あとがきの花嫁もの風人格更生プロジェクトの文字に納得。
ラストは、序盤からはとても想像が出来ない甘いハッピーエンドでめでたし。
世の中的にはどうか分かりませんが、2人にとっては幸せなエンディングなのでは。
ちょっと駆け足気味だったので、ウィルと奏真の双子の兄の辺りをもうちょっと掘り下げて読みたかったかも。
BLとしての萌えやキャラクター萌えというより、読み物として非常に引き込まれる個性的な作品でした。
よく分からない感覚や、この分からないもやもやとした気持ち悪さを楽しむというか…沙野先生ならではの読ませるお話です。
私は夢中になって読みましたが、評価や感想が分かれる作品だとも思います。
お話が面白かっただけに、大事な部分の名前の誤字と他何箇所かの誤字が本当に勿体なく感じます。
青ひげ公の城をモチーフにした作品で、サスペンス的でもあるし、ミステリアスでもあり、
オペラの青ひげ公の城のように、プロローグから始まり第1の扉からラストの第7の扉までを
オペラと同じような雰囲気で描いている作品でした。
もっとも、青ひげ公の城とは違い、受け様が知らないうちに攻め様に異常な執着をされ、
拉致監禁されて、最後は殺される運命だというような設定が初めから有る事です。
それに、攻め様の親友が、拉致監禁を手伝いいつも二人の側にいるのでまるっきり
二人だけの展開でもないし、攻め様の城の部屋のカギを渡すのもその友人だったりして
でも、世界観と言うか雰囲気は「青ひげ公の城」がモチーフだとわかる。
更に1番の違いは、受け様がかなり無自覚で壊れてしまっているような破滅型で、
悪魔の如く人を誑かしているような人なのですが、それにも本人だけが知らない過去の
秘密があったりするのです。
本人無自覚の深層心理のトラウマとでも言った方がいいのでしょうか、さらにそんな
受け様に10年前から魅せられてしまった一途で病的なまでの執着が狂気に変わる
寸前にまで追い詰められている攻め様。
この二人には受け様が忘れ去っている過去に深い繋がりがあるのです。
受け様の側に、いつも影のように存在がちらつく亡き母親、その母に瓜二つな受け様。
このことが後半で受け様の勘違いを引き起こす要因にもなります。
そして受け様と攻め様の過去が気になるのは、プロローグで受け様が見る悪夢や
幻覚で、いつも口からおびただしい血を流して死んでいる「アノオトコ」の姿。
10年も同じ悪夢を見続けている事と、受け様が過去に家族と住んでいたニューヨークの
数年の記憶が一切抜けてしまっている事が読み進めるうちに密接に絡んでくる。
受け様の前に現れる攻め様が死んでいる「アノオトコ」の姿に瓜二つで、そこから
受け様は恐怖を覚えながらも悪夢の正体を知りたい欲求で、逆に拉致監禁され、
攻め様の花嫁にされてしまう、かなりミステリアスな花嫁ものですが、
明るいラブラブハッピーな花嫁ものにはどうしてもならない作品ですが
最悪な性悪受け様が攻め様との砂漠での監禁生活で、希薄だった本人の存在が
次第に色を持つようになることから状況は変わってきて、ラストは取りあえず
二人にとっては幸せな展開で幕を閉じるストーリーでした。
沙野先生の本が読みたくてgetしたと思われるこの本。
そんなに分厚い本ではないと思いますが、読むのに時間かかったー。
重かったー。
週末お気楽気分な時にうきうき読むという本ではないです。
くす と笑う箇所は一か所もなし。
どシリアスが読みたくて、しかも不思議な雰囲気のする純愛ものが
読みたい方にはぜひ。とお勧めできると思います。
エッチシーンはそれなりに滴っているのですが、甘い雰囲気が少ないので
BLとしては評価低めになるかと。でも中立ってことでもないなあと
思ったので萌で。
攻め、受けは下記のような方々。惚れられるきゅんポイントが少ない・・。
攻めさん:受けさんに執着しまくってる。
ある種トラウマもちなんだろうなあ。
実は可愛いと思う箇所あり。(お義兄さんと言ってみたり)
受けさん:実はおかんのせいで、人生狂いかけてた。
攻めさんおとん、攻めさんが守ってくれてた。
人間外のような人間だったが、人間らしく成長。
最後、攻めさんに「いやんなったら離れてくれ」と
頼む。「自分できちんと死ねるから」というその台詞が
すごいなあと、ここはかなりぐっときた。
あと好きだった個所は最初に受けさんが迷い込む画廊のシーン。
静かな狂気、恐怖が紅い布にまとわりついて、読んでて
まじでドキドキもんでした!
そうだ、BLとしてよりミステリーとしての評価の方が高いかも!
〝青髭公〟と聞いて、何を思い浮かべるでしょう?
私は「残酷」「サディスト」「ダーク」な感じ?とぼんやり思いました。
ほら、表紙も〝婚礼〟というにはダークな雰囲気だし。
この作品は、青髭は青髭でも「青ひげ公の城」という戯曲がモチーフにされていて、童話のイメージとは少し違うように思いました。
各章のタイトルは正に戯曲に関係しています。
(。-`ω´-)ンー…受けの性格更生&攻めのトラウマ解消物語?
幻想的で不思議な雰囲気を漂わせたサスペンス風といえばいいんでしょうか。
最初の美術館の辺りなんて、不思議な空間に迷い込んでしまったみたいなそんな気分を読みながら抱きました。
※この場面が一番印象的で、好きでした。
全体的にシリアス…なようでシュールなところもあり。
ってか最初、奏真の付き合った女性たちが次々と自殺未遂していくからまさか受けが〝青ひげ〟なのか?!と思ったけど違ったwww
先に述べた美術館の不思議な雰囲気から一転、砂漠にて突如始まる結婚式及び花嫁修業。
身長180cmの男性がウエディングドレスを着たり、裸エプロンしたり。
適当掃除に不満な小舅(※違う)ウィルに乳首引っ張られながら指導されたり(・∀・)
最初は嫌々自分の命のために新妻役を演じ始めるものの、何かノリノリです。
良き妻であろうと奮闘し始めます。
「最近ウィルにいやらしい目で見られる…」と訴えてみたり。(※意訳→服よこせ。裸エプロンじゃ逃げられん。)
受けの兄に関係がばれる辺りは笑ってしまう。
ただでさえ動揺しているところに追い討ちかけるように「夫婦」「お義兄さん」更には「安心させるためにキスを」…いやいや余計に混乱するから((´∀`))ケラケラ
闇オークションもありました。
…伏せられていたけど客たちは出品されているのが奏真だって気が付いてます。
状態確認と称したお触りシーンはエロかった!
ってかこれ、俳優業に支障でなかったんだろうか。
所属事務所はそこまで大きいところではないようで、揉み消し力余り無いようだし…。
それにしてもジンの奏真鑑賞凄いわ。
真横で自分の出ている映画を、自分の出ている場面だけコマ送り再生しまくられるって…何その羞恥ぷれい。
題名の通りにグリム童話の「青髭」をかなり土台とした、しかしエンドはハッピーで終わらなくちゃいけませんから「美女と野獣」のような終わりを持ってきたと思われる作品。
題名に「婚礼」ってあるし、あらすじを見ると「花嫁」だし、地雷をにおわすキーワードが二つも・・・ドキドキ・・・
しかしイラストの乃一ミクロさんもちょっと今までの雰囲気とは違って大人っぽい感じに、そして決して可愛い男子っていう外見じゃないような主人公のイラストに飛び込んでみました。
俳優をしている奏真は、役に入るとそれになりきり相手役と恋愛をして、そして撮影が終わると役の総てが抜けてしまい、恋愛も全く興味がなくなるという、そんな事を繰り返している”憑依型”と言われる役者。
共演女優が失恋から自殺未遂を起こしたことで、逃げる意味もあり、子供の頃母親と過ごした思い出があるマンハッタンへ旅行に出ます。
彼の印象的に残っている思い出は美しかった母親(亡くなったが)と、子供の頃見た死体(?)=アノオトコ
アノオトコは自分が殺したのではないだろうか?という疑念をずっと心に抱き続け、彼の影におびえています。
しかし、マンハッタンで彼は誘拐、拉致されます。
相手はアノオトコにそっくりな絵をかいているらしい夏狩ジンという男と、画商だという彼の友達であるウィル。
奏真はジンの花嫁なのだと言われ、いきなりドレスを着せられ儀式と称して祭壇の前で犯されれます。
奏真にとってそれは苦痛であり、それから逃れるために「妻」の役割を演じることでその苦痛から逃れ、むしろ楽しんでいる風もあったのですが、すれ違いがあり、ジンに入ってはいけないと言われた部屋に立ちいるとそこにあった4枚の絵・・・それは・・・
かなり童話の展開が使われています。
知っている方にはもうええー!?と思うほどにあれやこれが似ている。
本家と比較してはいけないが、童話では前に妻にした女性達の死体が開かずの間にあり、という部分、それを絵に代えているのです。
主人公の兄が弟を助け出すという部分も主人公が童話では妻となった女性ですが男性というだけで、何気に・・・
ですから、ミステリーというよりファンタジー扱いでいいのでは?というくらい現実離れした設定です。
ストーリーのあれやこれやも「おとぎ話」の範疇で許せてしまうというかwww
そうすれば、いきなりジンが花嫁・妻にすると言いだしたのも突飛でなくて。。。
ジンはこだわっていた奏真を監視のように見ているうちに彼への執着が不安へ、そして本物が側に来たことで愛情に変わったということでいいのかな?
ジンの元から逃げ出した時、奏真は白紙になるんですよ。前みたいに憑依したような演技ができなくなる。
しかしジンがやってきたことで、再び妻の役割を得てそれなりの復活を見せるということで奏真も妻の演技が本物に、愛情にすり替わってしまったということでいいのだろうか?
アオノオトコに関する全ての謎が明らかになって奏真もまた囚われていたものから解放されるということですが、最後の選択が妻!?
・・・奏真は何か役割がないと生きていけない人なのだろうか?(汗)
不思議なお話です。
やはり子供の頃母親と一緒にマンハッタンで、、というあの時のクスリと鮮烈な印象のせいで少し壊れてしまった人なのかもしれないですね。
ユニークといえばユニーク。しかし萌えは?と言われると微妙。
しかし地雷もクリアした。
評価に悩むので、とりあえず童話の現代BL変換ということでこの評価にしておきましょうか?