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daraku no shima
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
1~3巻まとめての感想です。
一言で表すと「エンターテイメント小説」。
題材だけみるとシリアス一辺倒になりそうなものですが、クライムサスペンスと(メンズ)ラブがいい比率で混ざりあっていて読みやすく、あっという間に読了してしまいました。
クライムサスペンスを強く感じるのはテロや洗脳、新興宗教、暴力といった部分での敵との迫真の攻防シーンであり、公安警察官の靫と暴力団構成員の峯上が共闘する場面。
また新興宗教の教祖となった櫟が受けていた子どもの頃からの性的虐待、靫が父親から受けていた暴力。
そうした子どもの頃に受けた性的虐待や暴力の影響は大人になっても絶え間なく苛み続け、心が治癒されることは難しいという現実は辛く、読み進めていく中で様々な苦い思いが胸を過ります。
その一方で。
物語の展開上どこまでもシリアス路線で押し進めることもできると思うのですが、そこかしこで突っ込みどころというか隙というか、いい意味で洗練されてない一昔前(?)な言動や描写が良い緩急になっていると個人的に大変好ましく思っています。
例えば2巻のバター犬とか!
行為も言葉も昭和な気がして仕方なく、強烈なインパクトを残しました・・・。男前がバター犬って(笑)
もう一つ名称繋がりで、靫が後輩に付けたあだ名の「チワックス」も微妙にダサいネーミングセンス。
これを「公安の綺麗すぎる狂犬」と評されている男前の靫が名付けたというのがなんとも言えないギャップで居心地悪くてゾワゾワします(←褒めてます)。
また、物語の大切なポイントであるところの洗脳を解く鍵が「リズム」なのですが、ありのままに述べるとそのリズムは「セックスの律動」です。
こう書くとトンデモ設定みたいですが、この設定がBLをBLたらしめる淫らで官能的なセックスシーンに繋がるのもお見事!
激しいセックスをする仲なのに、男前二人が甘えたいときはほっぺにチューとか、どこの純情な10代男子なの?!甘い!甘過ぎる!と身悶えしたくなりますが、この先も信頼を分かち合い対等な関係でいてくれることを願うのみ。
ごちそうさまでした。
狂犬と野獣シリーズ3作目で完結編。
3作目では靫が特段の用事もないのに峯上を呼び出すまで関係が前進しています。
二人とも「甘えたサン」になっていて可愛いかったです(笑)
DV被害が多発するという異常事態が発生し、これまで同様にその原因に思想コントロールがあると考える靫は単独操作捜査を開始します。
そんな中、突然峯上の様子がおかしくなり失踪。
峯上を取り戻そう必死になる靫の前に現れたのは1作目の教祖櫟と側近でした。
まさか峯上までリズムにコントロールされてしまうなんて・・・。
自分も取り込まれそうになりながら、闘う靫がかっこよかったです。
この靫の奮闘ぶりを正常な精神状態の峯上に見せてあげたかった!
ちなみに1作目では教祖様と側近の4Pでした、今回はまさかの6P?!
狂犬と野獣の過激コンビが完結を迎える作品です。
リズムを操るテロ活動で1作目からかなり過激な展開でしたが、これで終わり。
サブリミナル効果をモチーフにしたかなり興味深い作品で、どんどん惹きこまれました。
1作目の破壊のリズムから始まり、人間の喜怒哀楽や欲望と願望を増幅させるリズム、
そして今回の第3のリズムが揃う事で、受け様は攻め様を奪われる事になる展開です。
1作目から登場の悲しく愚かなヒール役のテロリスト・櫟が裏の主役で出張ってます。
この人のテロ行為事態は憎むべき犯罪なのですが、心が無自覚で壊れてる悲しさを
いつも感じてしまう憎み切れない悪役なんですよね。
今回はとうとう、精神的にも攻め様に追い込まれてしまうラスト。
それに、強面の野獣の攻め様が、1番脆い部分を櫟に付け込まれ、櫟の創り出すリズムに
淘汰されてしまい、攻め様の奪還を受け様は誓う。
でも、この攻め様、かなり強靭な精神力をしていますよね。
そして攻め様を取り戻す手段は、この二人ならではの激しい戦いのようなHです!
やはり、リズムにはリズムで対抗でしょうか(笑)
今回の受け様が気が付いた三つ目のリズムは、今までのリズムと組み合わせる事で
完ぺきな定着を植え付けるリズムでしたね。
なかなか細かく作り込まれていて面白かったです。
そして、一旦リズムに汚染されてしまった人にとって特効薬的なリズムが出来上がる。
それが中和なんですが、その開発者は前シリーズに出ていた岩城光、受け様の同僚の
チワックス宮木が協力者として唯一手に入れた恋人です。
この二人の表だった活躍は少なかったですね。
個人的にチワックス宮木のファンだったりします(笑)
今回の事件で二人のトラウマ的なものが表面に出て来て、かなりのピンチになるが、
やっぱり受け様は美しすぎる狂犬だと思いましたね。
攻め様は受け様を想うあまり相手方に捕らわれてしまうのですが、最後の最後で
やっぱり二人の強い絆を感じる事が出来る内容でした。
かなり優れものの作品だと思いましたねおススメです。
靫の男前度がさらにアップ。
BL界に数多くの受はあれど、ここまで雄々しい受キャラもなかなか居ないかと。(笑)
前々作のレビューでも書きましたが、相手が周でなければ、靫は間違いなく攻キャラとして登場したはず。
それくらい、凛々しいです。かっこいいです。惚れてまうやろ…!(古い)
お話の内容は、まさかの宗教団体もの3連発。
靫の所属する部署上当然なのでしょうが、正直、3作とも展開が似通っていて、「またか」と思わずにはいられませんでした。
もう少し違ったアプローチで靫の活躍が見たかったです。
周は暴力団に所属しているという設定ですが、結局最後まで組関連のほうへお話が流れなかったのは(意図的なのかとは思いますが)設定が活かしきれていると言えるかどうか?
むしろテーマが集約されていてよかったのか?
判断に迷うところです。
総じて、前2作に比べてパワーダウンした感が否めません。
前2作で広がった話の収拾をつけることがメインになってしまい、肝心要の、この雄々しいカップルがLOVEに帰結していくまでの展開が薄くなってしまっている。
せっかく3作を使ってじっくりと恋愛プロセスを描く環境があったのにも関わらずです。
その点は非常に惜しい…というか残念です。
続きもののお話としてだけ見れば秀逸なので、余計に。
沙野先生ご自身があとがきで仰っているように、確かにラブラブモードではある。
靫が周を自然と名前で呼べるようになっていることからも、彼らの関係が深まっていることが分かります。
ですが、私には何故だか靫が突然に「愛してる」と言い始めたような気がしてしまいました。
前作『落園の鎖』の時点で果たして、靫の周に対する気持ちはそこまで高まっていたかどうか?
今作中にそこまで気持ちが高まる要素があったかどうか?
疑問です。
「愛」という言葉は本来、相当にハードルの高い言葉だと思うんですが、その言葉で気持ちを表現できるようになった心の動きや理由をしっかり描かないと、言葉だけが独り歩きしてしまいます。
その点が、今作ではいまいち消化しきれていなかった。
これならむしろ、前作までで完結していた方が納まりがよかったような気すらしています。
1作目は神認定にしましたが、今作は萌評価で。
とはいえ、大好きな男前受・靫と大型ワンコ攻・周のカップルのお話がもう読めないと思うと、大変悲しいです。
並外れたはねっかえりのワガママ犬が飼い主にそっぽ向かれたとたん、焦りまくってあれやこれや頑張ってるのを、カッコつけてハードにしてみましたよ、のお話。
私的にはカルトや洗脳に対抗する一番のカギはどうしても手放せない絆だった、という部分が一番響きました。
生きてると心が脆くなるようなつらいことと出会うことはあるけど、それを乗り越える力になるのは愛する人の存在。言葉にしてしまうと陳腐だけれども、事実だから仕方ない。
カルト教団だったり二人の関係の形だったり、表面的なものは目新しくても軸になっているのは愛情で、どこまでも愛とは?を追及していく姿勢は沙野さんだなぁと思いました。年を重ねるごとにそれに対する考察が深まるのが、作品がどんどん面白くなっていく秘密なのかな。
靫の「愛してる」は唐突だとは思いませんでした。だって、靫はとうに峯上が自分にとってかけがえのない存在だと気付いていて、言わなかったのはきっと「わかるだろ、言わせんな」であって、必要がなければ一生言わなかったんじゃないかと。それでも口にしたのは、変わってしまった峯上を何とかして取り戻したい一心だったわけで。そう簡単には峯上に届きませんでしたが、そうやってもがくうちにちょっと反省したりして。
「俺のもんに触るんじゃねぇ」のシーンには、ニヤついてしまいました。
とびぬけた男前じゃじゃ馬受けと超重量級オカン型熊のこのカプの放つ異彩が魅力的なシリーズでした。精神世界の部分に読みごたえもあって面白かったです。
狂犬と野獣シリーズ3作目、最終巻。
「公安の綺麗すぎる狂犬」靫 真通(ゆぎまさみち)がこのところ担当させられているのは「シューニャの集い」という自発的人類滅亡運動を掲げる集団。
その破壊的な思想に反して、会員たちは特に反社会的な行動は起こしていない。
しかし、シューニャの幹部・遠藤を尾行している時に巻き込まれたツインボーカルユニット「ライザー」のゲリラライブで礎苑教のテロと同じような集団失神が起こり…
…という冒頭で、シューニャ=1作目「タンデム」で失踪した礎苑教の教祖・櫟(いちい)と再び対決する靫と協力者・峯上が描かれます。
協力者と言ってももうすでに離れがたい結びつきを持ったふたり。
今回のシューニャに対して、暴力団藜(あかざ)組の峯上が関わる接点は無い、しかし、シューニャとライザーとDV事件の爆発的な増加に目をつけ、峯上は1人でマンションにこもり関係性を探っていたが、ライザーの曲に組み込まれた新たな「リズム」に取り込まれ…
峯上を助けたい靫が櫟に拉致されます。シューニャの集団が隔離されて住んでいる島で、無表情で靫を犯す峯上。
櫟といえば何と言っても乱行ですよね。今回も6P?を繰り広げています。
そのセックスの場面で櫟のリズムを壊し、峯上を取り戻す靫。
このように、構造は1作目の「タンデム」と同じで、櫟たち礎苑教が形を変えて蘇り再びリズムを使って人々を洗脳する、というパターンで目新しさは無いように感じました。
家族にトラウマを持つ峯上が、靫を家族と感じるようになりそれ故に靫を思って闇に堕ちる姿。
同じく家族がトラウマの靫が、全く同じ理由、つまり峯上が失いたくない家族だからこそ櫟に対抗する姿は非常に読み応えがありました。
敗北して自ら焼け死のうとした櫟との闘いは、遂に終わったのでしょうか…
野獣と狂犬の激しすぎるセックスが描写されますが、そんな2人のとっておきの愛情表現はお互いのほっぺにチュウ。
そのギャップが、2人のバランスを取っているのかな、と感じました。
三部作のこの作品は、シリーズ通して精神世界の負を引き出す音や光をテーマに繰り広げられるテロをテーマにしています。
ひょんなことから、攻めでヤクザの周と、狂犬と呼ばれる公安所属の受けである真道がテロ組織と戦う構図になっています。
素直になれない真道がなんだかんだ言って周にメロメロになっていく様が良いです!
ストーリーがしっかりしているので、なんならそういう事件が現実に起こってもあり得そうな。音や光のパターンが人の気持ちを増幅させるとか、リアルに怖いですけどね。
しかし、機械油で、、、ってのは正直いただけなかったな。
オリーブオイルならファンタジー的に許せるんですけど(笑)
男同士のガチンコラブ、って感じのお話は嫌いじゃないので、なかなか楽しめました。
美しすぎる公安の狂犬と、お化けバイクに乗った野獣のカップルもついにシリーズ完結編。
いままでのBLにはない超辛口ハードボイルドカップルは心ざわめく面白さがありました。
しかし、うわぁ~…評価分かれるぞ、コレ。
導入部分、カワサキニンジャで疾走するシーンはかなりシビれましたw
BLっていうとあんまりマニアックなモーターもの出てきませんからなおさらです。
自分は四輪派で二輪はウトいんだけど、にしても、カワサキ・ニンジャやボスホスとは
あきらかにガチガチ硬派です。
ホンダとかドゥカティじゃないところが…!
さて、シリーズで毎回登場してくるマインドコントロールというテーマ、
正直、本作ではやや雑。そこらへんは2作目のほうがいいデキです。
ついにネタ切れですか!?
靫(ゆぎ)が周(あまね)の深い愛に気付いて愕然としたり、
二の腕に寄り掛かって甘えるのはなかなかオイシイんですけど
カルトの描写がなぁ…。
シュールな描写も面白いといえば面白いんですが、煮え切らない感じで、
1作目のヒステリックな世界観、
2作目の暴力的カルトに比べると迫力不足かなぁ。
2人のトラウマの掘り下げももう少しやってほしかったかも。
さらに、周と靫のセックスがどんどん痛そうな感じになっていくのも…(苦笑)
シリーズ中どれから読んでも大丈夫な作りにはなっていますが、
この第3作目から読みはじめても、このシリーズの魅力は掴みにくいと思います。
余談ながらこのシリーズ、イラストレーションが最高です。
靫のイメージは超超超ツボですね。