昭和初期、万歳黎明期の大阪に花開く、興行師×藝人の恋。

頬にしたたる恋の雨

頬にしたたる恋の雨
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神39
  • 萌×227
  • 萌3
  • 中立2
  • しゅみじゃない1

284

レビュー数
19
得点
314
評価数
72
平均
4.4 / 5
神率
54.2%
著者
久我有加 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
志水ゆき 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
頬にしたたる恋の雨
発売日
価格
¥560(税抜)  
ISBN
9784403523090

あらすじ

寄席を解雇された落語家のもず・こと文彦は、寄席の主・瀬島から万歳(まんざい)への転向を勧められる。
その頃、万歳は落語より格下に見られていた。
抵抗を覚えつつも、台頭し始めたばかりの“新しい万歳"を
理屈抜きで面白いと感じた文彦は、気の合う相方も得て万歳の道を歩み出す。
同時に、時に厳しく時に優しく己を導いてくれる瀬島に恋情を抱くようになり……?

(出版社より)

表題作頬にしたたる恋の雨

瀬島頼秋,寄席・演芸場主人
妻夫木百舌こと絹谷 文彦,元三流落語家の万歳師

その他の収録作品

  • 恋風
  • 心掟
  • あとがき

レビュー投稿数19

大阪言葉の萌

志水ゆきさんのイラストということで、手に取りました。いや、合うよ〜このお話にぴったりのイラスト。
昭和初期から戦後にかけてのお話ですが、本編は和装も洋装も、文化も混ざって変化しつつある時代のお話です。
文彦は、落語家を目指していたものの、開花せず、万歳に転向することも矜持もあってなかなか踏み切れない。そこへ文彦のことを見込んだ瀬島が支えることによって人気を博すまでの万歳師になっていきます。
もちろん、相方のダンゴちゃんの貢献も大きいんですが。

もう、これは国営放送の朝の連続テレビ小説的な。
ホントに実写化してくれたら、受信料数年分まとめて払っても惜しくない(爆)

大阪言葉の萌も大きいです。関西在住だからかも知れませんが、違和感のない文章になっていて、もしかすると他の地域の方だと読みにくい!ってなるかも知れませんが。古めの言葉遣いなので余計に朝ドラっぽいと思うのかも。

「コンジョワル」萌ぇ…
「かいらしい」うわ、この表現か…
「弄ろて(いろて)」この漢字をこう読ませるか…

エロエロではないのに、エロさマシマシになる。言葉攻め。

しかし、瀬島は今で言うところのバイってことなんでしょうね。文彦もか。
この時代の二人にとっては、団子や菱村という理解者がいることで余計な波風が立たずに過ごせたのかな。

是非ともドラマCDで聴きたい作品でした。
文彦は置鮎さんで!!

1

しっとりもにぎやかな人情も!

昭和初期、特有のノスタルジックさが良い~

落語が主流で、漫才をすることは肩身が狭かった時代。
漫才が力を持ってくまでの過程も面白く、現代とはまた違った旧来の大阪弁のしとやかさがなんもかんとも!!良い!!

落語家としては落ちこぼれだったけど、愛されることで自信と色香が花開いてく様が良い良い!!漫才師として認められているだけなのか…気持が通じ合うまでも切なくてドッキドキしました。紳士な人の雄みの威力よ…

関わる人達との人情味もたっぷりで、応援してくださる方、相方のの温かさがとてもよく、2人の友情、相方の絆には何度も胸を打たれ、心温まりました!!

最後の第三者から見た2人の様子も特別な雰囲気を感じられてほっこり。欲をいうともっとイチャラブ見たかったなぁ~とも思うけど、仕事への取り組み、好きなことへの気持ちとかも読み応えありました。

1

時代の流れを感じました。

昭和初期、漫才が流行り始めた時代の藝人と興行師の恋のお話。


受け様は、落語家の栗梅亭もずこと文彦。

攻め様は寄席の主、瀬島。

舞台にあがると固くなってしまい、ちっとも笑いがとれないもずは、瀬島から落語家としては解雇を言い渡され、漫才への転向を勧められる。

漫才は色物と括られ、格下扱いだった時代。
漫才師なんぞなりまへん、と初めは頑なだったもずだけど、新しい漫才の面白さを知り、この人となら、と思える相方のまで紹介され、新しい藝の世界へ。

瀬島がかっこいいんですよ。
時に優しく、時に厳しく。
大人の男だなぁ、いい男だなぁ、としみじみ(*´∀`)

そしてもずはかわいらしい。
古風なお人が恥ずかしがる姿とか、めっちゃ萌える(///ω///)♪


2人の恋模様はもちろん萌えでしたが、周囲の人達の人情ものもよかった。
きっぷのよさとか、勢いのよさとか、この時代を生きてる人達ってこんな感じだったんだなぁって。
あと、相方の団子ですよ!
ものすごーくいい人で、世慣れていないもずを任せられるのは団子しかいませんわ。

漫才の今までの経緯とか知らなかったので、その時代の流れもとても面白かったです。


イラストは志水ゆき先生。
表紙からしっとり大人の雰囲気。
特に好きなのは、瀬島の口の端についた米粒を取る場面のイラスト。
なんなの〜無自覚に可愛らしい。
まじで無性にあれやわ(///ω///)♪
とにまにました場面なので、イラストを眺めては瀬島の内心を思って、ますますにまにましちゃいます。

さて、他の芸人シリーズを読み返してこよう。

1

関西にこだわりが深い作家の作品。知らない事が多かった

興行師×藝人、関西弁で綴る恋。
関西に拘る著者の、これも「久我有加 芸人シリーズ」の一つ

昭和初期、剛しいらさんの「座蒲団」の舞台は上野から日本橋の花街だったけど、
この作品の舞台は上方、漫才黎明期の大阪。

文彦=主人公の「もず」は、「落語の才能が無い、時流に乗れ、漫才に転向しろ」、とウナギを食べながら寄席を解雇されてしまう。
・・ 何故、鰻を選んだんだろう?と調べたら、関東とは違う意味があった。
 関西では、鰻を「まむし(真蒸す)」といって、腹開きをする。昔から「腹を割った人間関係」を商人が喜んでいたから。
→大阪で、鰻の会食は、腹を割って話しましょう、の意味。
多分、文彦がアイドル系で見目がいいから瀬島は推薦したのだと思うけれど、
お前は落語を諦めろと言う関西弁は、やんわりした関西弁でキツー 

文彦の恋人になるのは、興行師の瀬島。
漫才で、もずの相方になるのは、団子はん。

どこが、どう違うのか言葉にできないけれど、剛しいらさんの座布団で綴られる人間模様は、美貌の師匠が強烈だったけど、
この作品は人肌より冷たい霧雨を感じる雰囲気だった。多分、文彦が繊細で可愛らしい気性だからだと思う。

---

★久我さんのブログ「腹八分目」に、団子はん視点のSSあり。
2012-09-23  紐帯(「頬にしたたる恋の雨」番外) https://bit.ly/3jg5V2H
・・他にもSSがカテゴリ「BL小説・掌編 /BL小説・長編」に投稿されていて、とても読み応えあるお得なブログでした。

★漫才黎明期の大阪 は、何時頃なのか調べたら、戦前だった。
漫才作家・秋田實さんの資料が参考になる。https://bit.ly/37ackH4

「久我有加 芸人シリーズ」を全部読んでみたい。

4

朝ドラで半年やって欲しい。絶対見る!

表紙がなんとも艷やかで黒い背景に身を寄せ合う美しい二人。

とっても読み応えがありました。

特に文彦が団子と万歳をやってみようという辺りから一気読みでした。

文彦の落語家になるまで、なってからと詳しく描かれてあり、誰も笑わない落語、苦しくて冷や汗で文彦さえ辛くて。

昭和初期の大阪のお笑いや芸事への世情、落語と万歳との捉えられ方の差。

それでも新しい万歳に取り組む文彦と団子。
もうこの二人がお互いを尊敬して大事にしててみんな相手のおかげと謙虚で。
二人がどんどん人気が出ていくのを見守れて幸せでした。

途中まで文彦があまりにパッとしなくて後ろ向きでどうなっちゃうの?と心配してたら席亭の瀬島が何かと指導?してくれて、おやおや?と思ってたら!

いつからよ?いつから文彦を?と腕を掴んで瀬島に聞きたいです。
文彦の切ない片想いかなと思ってたら唐突に瀬島が…。

もう昭和初期の大阪弁の破壊力ったら半端ないですね。
色っぽいんですよ。色事のやり取りが。

ドンと構えて、小石だった文彦が花を咲かせるのを支えて。そう、文彦がどんどん花を咲かせていくのが良かったです。やはり苦しい落語より万歳が向いてたのでしょうか。美しく品があり笑顔が男女を問わず受けスーツが似合いって本当はこんな子だったの?と。
万歳に励み瀬島に愛され団子と切磋琢磨して成長していく文彦やコンビに胸が熱くなりました。

最後の短編もその後がわかって、そして新たな逸材と熱い出会いもあり。

とにかく神で!

エッチの時の瀬島がオヤジっぽくてそれも最高!

4

芽吹いた新芽が花開くまで

なかなか笑いをとれず伸び悩んでいた落語家が、席亭に万歳(昔はこういう字だったんですね…)への転向を命じられ、紆余曲折を経て、漫才師として才能を開花させるまでのサクセスストーリー。
私は久我先生の関西弁キャラがすごく好きで、これはもう、自分が萌え転がるだろうことがわかっていて読んだのだけど、期待通り。堪能した。

関西弁での情事のシーンって、なぜこんなに色っぽくて艶っぽいのか。自分が関西圏の人間じゃないから余計にそう感じるのか、もう受けは可愛いし、攻めはいやらしいし、萌えすぎてどうしていいかわからなくなる。「コンジョワル、せんといて」とか「見てんと、弄(いろ)て」とか、いやいや、マジでえっち過ぎないすか…。

で、事後のシーンがまた甘ったるくてめちゃめちゃいい。受けを膝に抱っこしておにぎり食べさせるとかさー、で、そのまま攻めが受けの耳を弄りだしちゃうとかさー、大事すぎでしょ。なんなの?って感じ。あま~。
年上の大人の男の人が、恋愛経験値の低い年下の受けを大切に育てて甘やかして可愛がるというのが大好きなので、ほんと、ゴロゴロ萌え転がるしかなかったよね。あ~。たまらん。

攻めが受けの芸名の名付け親にもなるんだけど、「芽吹く」からとって「妻夫木(めぶき)」というのがまた粋でいい。攻めは落語をやっていた時の受けを「灰色のちっぽけな小石」だと喩えて茶化したりしてたんだけど、小さな石ころからやがて芽が出ていつか花が開くように…って願いが込められている。こういうところからも、受けへの深い愛情を感じる。

脇役も素敵なキャラばかり。受けの師匠とか、漫才の相方の団子さんとか、人情味溢れるキャラで読んでいてほっとする。
団子さんの息子を通して、主要キャラのその後を描いた「心掟」は涙なくしては読めないお話。ふたりが夫婦のように添い遂げ、団子さんの子どもたちを我が子のように大切に想っているという描写に、胸が熱くなった。自信を持って人に勧められる名作。

5

色と艶の一編

昭和初期の大阪が舞台の芸事BL。
主人公は落語家の栗梅亭もず、こと絹谷文彦。呉服屋の末っ子で育ちが良くて線も細い。
寄席の席亭である瀬島頼秋に、落語は諦めて娯楽の新しい風である「万歳」をやってみないか、と誘われる。
「お仕事BL」としての「芸」への取り組み方とでもいうのかな、百舌と団子の2人はとても真面目でいつもお互いを敬い、周りに気を遣い、一つのネタを客席との呼吸とも合わせながら練り上げていく手間を惜しまない。売れてもお座敷遊びなどにはうつつをぬかさず。この清潔さが好ましくて、百舌と団子のコンビを応援したくなるのです。
元々ネガティブで弱気、それでいて落語に対してプライドのあった百舌(文彦)の仕事での成功と、頼秋との恋愛も手に入れて、というサクセスストーリーでもあるのだけれど、実にたおやかな筆致と柔らかな大阪の言葉、何とも女性的とも言える文彦のいじらしさ、それらが萌えの波状攻撃となって読者を取り込んで行く、という感覚でしょうか。
CPとしては、攻めはスーパー攻め様系年上の包容力満タンの瀬島。受けが文彦。
2人の危機は一度もなく、瀬島がいつでも優しく激しく文彦を愛する展開で実に甘い。文彦の「弄て」(いろて)と言う誘い文句には瀬島ならずとも悶絶モノです。
瀬島に可愛がられてひたすらに感じる文彦に一種の女々しさ、のようなものを感じるかも知れませんが、2〜30年後?の団子の長男が中心の物語「心掟」にて、瀬島と文彦が強い絆でずっと添い遂げている様子が伺え、文彦の心の中の強い強い芯が感じられます。
実に素晴らしい。神寄りの萌x2。

6

読み応えのある一冊

久我有加さんの作品は恋の押し出しに続いて2作目でしたが、こちらのほうが読む時間2倍くらいかかりました(笑)ページ数は50ページくらいしか変わらないのですが、落語や大阪言葉が馴染みのない都民であるのと、古めの時代背景こその漢字の多さが理由です。(恋の押し出し が極端に読みやすかったというのもありますが笑)
内容としては、主人公であるもずの心境や成長が丁寧に描かれていて、いい意味でBLの要素がなくても純粋に楽しめるほど引き込まれるストーリーでした。落語・漫才という馴染みのない世界が舞台なのに素人にもわかりやすい語り口が魅力的です。志水ゆきさんの挿絵も美しく、ストーリーによく合ったイラストに引き込まれました。比較的さらっと読める作品が多いディアプラス文庫ですが、読み応えのある一冊を探している人にぴったりだと思います。

5

ほんまによろしいなあ

関西人としてはたまらん一冊でした。(関西弁で書いてみる~)
志水先生挿絵狙いでgetしたんですが、本編に完璧にやられました。

言葉もええですが、上方万歳?(今の漫才?)のルーツみたいなもんなんですかね?
それが丁寧に描かれててめちゃよかったです!
また攻めさんの瀬島いうおっさんが根性すわった ええ男で・・・
たまらん。
受けさんの相方の団子いう男子も、ちんちくりんらしいんですが(笑)また芯のあるええ男で、これはほんま惚れますわ。

本編もほんまよかったんですが、私は、同時収録されていた戦後の団子の子供たちの話にやられました。号泣。万が一これから読む人がおったらあかんので、書きません。でも絶対そこは泣きます!
もしこの本読んだことない関西人腐女子で昭和知ってる人がおったら、ぜひご一読を!

14

コンジョワル

方言が出てくる本はたくさんあれど、こんなにも引き込まれた見事な大阪言葉は初めてです。
古めかしい柔らかく情緒溢れた言葉が、ぐっとこの物語の世界観を深くしてくれています。

昭和初期、『万歳』というものがまだイロモノ扱いされていた時代。
落語家から万歳師へ転身する青年のお話です。

文彦や瀬島も勿論素敵ですが、周囲を取り巻く人たちも粋で情が溢れるお方たちなので物語がより一層魅力的になっています。

頼りなさげでパッとしなかった文彦が、万歳という道で自信をつけそして瀬島との愛を深めることで、文彦の魅力が増していく様が目に浮かぶようでした。

文彦と瀬島の言葉のやりとりの中で、「コンジョワル」という言葉が出てきます。
イジワル、じゃないんです。
文彦が甘えも含んで「コンジョワル」と言い、「おまえにコンジョワルて言われるんは本望や」と返すところがたまらなく好き。

志水ゆきさんのウットリするイラストも魅力です。
瀬島の格好良さに悶えました。

関西弁、というよりは大阪言葉といったほうがしっくりくる、独特な雰囲気を持った一冊でした。

6

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