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10年も昔の小説を今更レビューです。
需要がないことは重々承知しつつ、昨今のかわい有美子さん復刊ラッシュの波に本書も乗ってほしいという期待を込めて…!
はっきりいって、このシリーズ(全3巻)はBLではありません。
本書は、人を食った美人で世間知らずの妖しいもの好きおぼっちゃま鷹司くんが、誠実で男前の常識人倉橋くんを可愛く振り回す様子をニヤニヤ楽しむ小説です。
なので、「愛してる…」「オレも…!」みたいなBLを求めている人にはオススメできません。
ですが、鷹司くんの倉橋くんへの密かな恋情がちらりちらりと(いえ結構わかりやすく)垣間見える場面や、鈍感な倉橋くんが鷹司くんに振り回されつつそのわがままを鷹揚に受け入れている様は、萌えなくして読むことはできません。
2人の絶妙な距離感に、萌えの神様も光臨されっぱなしです。
ノスタルジックなお話に定評のある(と勝手に思っている)かわいさんだけに、雰囲気もとても素敵です。
ただ、あらすじにある「怪奇幻想」はちょっと看板に偽りありかな。内容はそこまで本格的ではありません。一言でいえば「幽玄」という感じでしょうか。
ですが、そのような内容と主人公たちのキャラクターや時代背景がマッチして素敵な空気感を醸し出しています。
『流星シロップ』の衛守や『夢にも逢いみん』の尉惟のような攻がタイプの方にはどストライクな作品だと思います。
どうしてかわいさんの書く攻はこんなにいい男ばかりなんだろう…
。
明治維新からはじまった日本の近代史ですが、この時代の男性には妙に萌えてしまいます。
日本男子の男らしい部分とピュアな部分が結実したようなキャラが揃ってた(ような気がする)。今どきの男子にカツを入れてもらいたいもんだ。
まぁ、女性も今よりずっとピュアな大和撫子だったんだろうけど…見習わなきゃだな。
ニオイ系ですかね。
とはいっても主役二人はお互いにほのかな恋心を持っている。親友というポジションにいて、優しくて気のおけない交流をしてます。
この距離感に萌えました。もどかしいんだけど、それがイイ。
エッチな場面やらドーンと愛を告白する場面やらを求める人には向かない小説ですね。
ストーリーは、「ちょっとだけ不思議」です。
何かを積極的に解決したり、怨霊を退治したりといった派手な場面はありません。
かなり地味なので、読む人によっては退屈さを感じると思います。
主役二人が日常のなかで出会う小さな不思議と、それを巡る地味な活躍。
この雰囲気を好きになれるかどうかで評価が分かれる小説だろうな。
私は好きです。
時は昭和初期。
学生時代からの友人同士、倉橋と鷹司。
倉橋は海軍将校を持つ若手弁護士に、片や鷹司は公爵家の息子であり帝大で民俗学の教鞭を執る教師となった。
この鷹司、教師という職業にありながら不思議を愛し、幻想小説家という顔も持っているのだが。
年始の会に強引に倉橋を正体した鷹司は、彼に自分の邸宅内の土蔵の探検をしようと言い出して……
このへんの時代モノは結構好きです。
登場人物がどれだけリッチでもありえない設定でも許せてしまう……それが昭和マジック。
物語は連作短編集形式で、
第一話「自鳴琴抄」
倉の中で見つけた古いオルゴールとそれにまつわる悲話。
第二話「薄氷」
風邪をひいた倉橋とそれを見舞いにきた鷹司の過去回想。
第三話「夢の迷い時」
唐突に花見にいこうと申し出た鷹司。二人は京都の吉野山へと向かう。そこで倉橋は不思議な花見客に遭遇するが……
なんかどこを目指してるのかなーという微妙な気分になりました。
BL(といっても風味)なのか不思議系小説なのか。
両立は可能だと思うんだけど、なんだか結局どっちつかずのまま終わってしまった印象。
1話目はインパクトに欠けるし、2話目、3話目も長いシリーズの中盤~後半っていう感じを受けました。
2話目なんか風邪ネタやし。え、まだ早くないかなと思ってしまった。
3話目が一番好きかも知れません。
どちからというとこの路線で続いてくれないかなあ。