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逃げられない、ここは愛の檻の中
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
民族紛争のある東欧、旧ユーゴを舞台にしてかなり読み手のある作品は、やっぱり華藤さんでないと!と思わせるほどにいい作品でした。
ルナの前作『あなたは僕を愛していない』のスピンオフになり、冒頭窮地に陥った主人公・夏生の面倒をみてあげるのは、あの亡くなったマリオンの恋人オスカー。
そして、マリオン財団の立ち上げがあったり、同じ日本人ということで海棠先生が夏生の先輩としてちょっと登場してみたりしています。
そして、前作の攻め様もかなり歪んだ執着粘着男でしたが、今回の攻め様もまた、かなりのもの!
首輪をつけたり、地下室でとか、思わずコスプレさせたりとか(w)だけどそれが陳腐に感じなくて、彼のそこまでの執着が見てとれるからとっても彼の愛が痛々しく感じるのでした。
一方、主人公の夏生はとっても男前!ポジティブ男前受けです。
前作の海棠先生も男前受けでしたが、ちょっとタイプが違うやんちゃ系努力型のスポ根な雰囲気のする男前・・・かな?
だから、紛争とか虐殺とかすごくシビアな彼等に襲いかかる現実があっても、それによって彼を応援して心救われるというか、読み手の気持ちを余り暗い方へ落とさない手助けをしてる部分もあるかな?と思われました。
確かに本編はシリアスで進むけど、主人公がポジティブでなかったらズブズブでもう痛くて痛くて救いようがなくて、もしかしたら二人とも死んじゃってたかも!?なくらいだったからです。
エロシチュに萌える~♪ヤンデレに萌える~♪を通り越して、何か”プチ”「風と共に去りぬ」を読んだって言う感じの満足感です!
母親が不良をしていた時レイプされてできた子供、それが夏生。
しかし、通っていたサッカーチームで接触のあった外人プレイヤーと仲好くなり、そして彼と母親が結婚したことで、彼の母国・ユーゴスラビアへ行くことになります。
そこで出会ったのがアレクでした。
そして現在、家族を失った夏生は小児科医になり、アフリカで救済医療チームにいたのですが、そのまっすぐな性格から仲間から疎んじられ謀られて無実の罪を着せられて追い出されれます。
マラリアで倒れた所を救われ、無一文だった彼が頼ったのが以前の知り合いだったオスカー。
彼の口ききで、パリの医科大学の付属病院で小児科医として期限付きで働かせてもらえることになります。
そこで見たのが、十数年前に別れた、彼によって家族が虐殺されてしまった、今度会ったら殺してやると約束した憎い仇であり、そして心からの恋人であったアレクでした。
しかし、彼は髪の色も瞳の色も以前とは違い、そしてヴォルフだと名乗るのです。
同じパリ医大の心臓血管外科医として働きながら、マリオン財団の特別顧問として勤務している彼ですが・・・
夏生とアレクの現在の接点の出来事の度に過去の回想が挟まれます。
そしてそれは時系列に彼等の歩みを綴り、そして、クライマックスで彼等に一体何があったのか、そして現在と重なった時に全ての真実が明かされ、そして結末に至る手法がとられています。
憎い相手なのに、殺してやると約束したのにできない夏生。
殺されてやるといいながら、夏生を監禁してまるで昔を取り戻そうとするかのように夏生を求めるアレク。
二人の気持ちがセツセツと伝わってきます。
それは、彼等の性格設定基盤がしっかりしているからこそ、伝わってくるブレのないものでした。
前述にも書きましたが、民族紛争など深刻な問題を題材にして、これだけドラマティック展開だと、どこか陳腐になったりしてしまう部分がボロとして出てしまいそうなそれぞれの要素なのに、実に見事に織りなされていました。
その経緯といきさつと展開は是非、読んで味わってほしいと思い、多くは書きこまないことにします!
だれも悪くない、誰にも正義がある、そして、互いの幸せを願う気持ち、それに全てがありました。
仇と復讐者なんて設定になっていましたが、そんな簡単なものじゃなかった。
初めて出会った子供の時から陰と陽みたいな二人で、周りの柵や思惑など関係なく
子供同士だから素直に惹かれるままに近づいた二人。
そして育まれるいつしか友情を越えた狂おしいまでの愛情、しかしそんな二人の関係は
民族の争いの中で切り離されることになるのです。
さらに、一目があるところで逢う事も話す事も出来ない二人が唯一共にいる事が出来る
地下室、二人しか知らない秘密の場所でのつかの間の逢瀬。
しかし、内戦が激しくなっていた頃に約束の場所に行った受け様は激しい空爆で
地下に行く道を塞がれてしまう。
そしてやっと抜け出した時に攻め様に手を引かれ抜け出した時に見た物は
祖父母や両親、妹が暮らす街の悲惨な残骸だらけの光景で、攻め様の姿はまさにその
虐殺を働いている軍の姿だったのです。
そして、その街へ行くための秘密の通路を攻め様がスパイとして教えたと言われ
やり場のない怒りと悲しみで攻め様を仇と憎みながら軍から逃げるように脱出する。
二人の関係が愛情から憎しみへと変わる瞬間なのです。
それでも子供の頃の二人の願いでもあった困っている人を助ける為に医者になると言う
約束を守るように、受け様は紛争地域での医療活動をしている時に、トラブルになり
追い出されるようにパリへ行き、そこで10年ぶりに忘れる事など出来ない攻め様と
再会するが、名前も髪も目の色も違うのに、受け様は攻め様だと確信する。
今度会う時は命を奪うと言う約束を心に秘めて・・・
しかし、受け様は両親の仇と解っていても攻め様を憎み切れないんです。
それは過去に愛し合っていたと言うだけではなく、受け様の自己犠牲も厭わない
相手を思いやる太陽みたいな性格のためでもあります。
どんな事でも、能天気な程のポジティブを発揮するんです。
攻め様を国際手配の犯罪者として告発する事に躊躇する受け様、やっぱり愛は消えない。
でも、親たちの事を考えると裏切るようで苦しくなるジレンマも抱える。
そんな葛藤の中で受け様は何者かに命を狙われ、罠にハメられ、攻め様の従兄弟に
殺されそうになり、逃げ出した先で攻め様と遭遇、拳銃を握る攻め様を見て
死んでもいいと思うが、人の命を助ける攻め様に人殺しはさせたくないと・・・
気が付いた受け様は、地下室に監禁され、攻め様から愛と言う名の凌辱を・・・
感覚的にはロミジュリ要素もあるのですが、攻め様のこれでもかっ!てくらいの
劇場の一途な愛を感じる作品なのです。
そして家族の事があるから、同じように攻め様を愛している受け様はその思いを
受け入れる事も与える事も出来ないのです。
受け様が攻め様へ与える事が許されるのは何よりも強い憎しみだけなのですが
それさえも今の受け様は与えてやれなくなっているんです。
攻め様の一見すると狂気にも似た行動の理由と感情が次第に解ってくる設定で
攻め様の不器用なまでの一途な愛を感じる作品でした。
忘れられるよりも忘れられない程憎まれる事を選ぶ、ほんと健気なんです。
それに、受け様は逢わない間に誰かとお付き合いした事もあったみたいだけど、
攻め様は、全てが受け様一色なんですよ~かなり萌えました(笑)
受け様もやんちゃなまま大人になっていて、悲惨な環境に生まれたのにその後も
どこか無垢な印象のある太陽みたいな存在でなかなか魅力的でした。
華藤さんらしい東欧を舞台にしたすれ違い愛でした。
家族の仇が自分の愛した人だと知った夏生。
民族間の争いや政治の変動に翻弄され引き裂かれた恋人同士が、多くの誤解や思いやりからの嘘ですれ違っていくのですが、それでもお互いを信じ守りたいという気持ちや立場が違っていても愛する想いが、絡み合った糸を解していく物語です。
『あなたは僕を愛していない』と同じ世界観の話だったのですね。
読んでから分かりました。
物語としては関連性はないので単独で楽しめますが、既読なら主人公たちのその後がちらりと垣間見られ思わぬSSのようでうれしくなると思います。