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恐くても逃げられない。この淫らな罠からは――。
koi no hate niwa
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
杏野さん作品、多分読むのは3作品目だとおもうのですが、それらは割と攻めが酷いというか痛い感じの作品だったような記憶がありますが、またまた!とってもネガティブな痛い攻めでありました。
ちょっと暗めの展開です。
希望はなかなか見えて来なくて、もう、どうしてくれようぞ、こんな攻めいい加減さっぱりと切ってしまえよ、何とかならんのか?と主人公の受けと一緒に悩みながら、この展開の行き付く先が気になって、理由が知りたくて、淡々とした調子の文章と展開なのに、その先、その先と求めるうちに一冊読み終えてしまえておりました。
うっ屈したネガティブ攻めと、ヘタレそうになりながらも一途な心を持ち続けて、何とかしたいと弱る心を奮い立たせて、真っ向から向き合った受けの物語。
この病んだ攻めにワクワクするほどの興奮的萌えは感じないのですが(痛いスキーですが)、お話として割と自分好みのものがありました。
姉が結婚した九高という男性に引きあわされた日に恋と同時に失恋を味わった主人公・真。
姉と義兄になった九高が離婚することになった時、どうしても思いを伝えておきたいと、一度だけでいいと抱かれて、それで終わったはずでした。
そして6年後、久高も慕っていた叔父である大学教授が亡くなったことで、葬儀の席で九高と再会するのです。
以前にもまして、疲れ果てたような抜け殻になったような印象を九高に受けた真は彼の事が気になりはしますが、もう会うことはないだろうと考えていました。
しかし、叔父の書斎として借りていたマンションを九高と一緒に片付けることになってしまい、その時に無理矢理九高にののしられ、酷い言葉を浴びせられ強姦されて、あげく写真をネタに脅されるように、彼に抱かれる日が続くようになるのです。
心身ともに疲弊して、でも体の快楽に逆らえなくて、そしてまだ心の片隅で彼を好きでいる真なのですが・・・
この九高がまったくもって理不尽です。
仕事だけでこんなに疲弊して冷たい人間になるものだろうか?とは思いましたが、それは物語の中でおいおいと匂わされていくのです。
ただ、姉との離婚の原因が明かされる時に語られる真実に、やはり、この人は不器用なんだなー、愛情の示し方のわからない人なんだとわからされましたが、それにしても彼は人間ではなくて道具なんじゃないか?と、、、
ふと、そう思ったのでした。
そう思うと、全て彼の感情や行動が納得できて、それによって、彼が持つ人としての心との葛藤が、彼に酷い行為をさせてしまうんではないだろうか?って
勝手に自分で解釈して納得しておりました(汗)・・・でもそう考えると結構納得できるのですよね。
真はとても普通の正常な人でした。
変わってしまった九高にどまどいながら、不本意を感じながらも初恋の相手で、最初に彼に抱いた印象とイメージがあるから、絶対何かあるはずだという考えに行きつく。
ボロボロになりかけながらも、何とかできないかと彼なりに探ろうとする姿勢は、健気でもあるけど、それが彼の良さなんだなと思える点でありました。
九高の元同級生で、仕事のパートナーでもある木佐貫という存在が登場しますが、彼ではどうもしてあげられなかったのは、長く一緒にいすぎて彼の総てを知っているせいなのかな?
それにしても、久高の会社はとても酷い会社だと思われます。
何だか監視が張り付いてるみたいで、、、詳しい事は述べられませんが、何やら怪しそうな雰囲気がします。
割り切るには、彼は本当は本来の良い部分を押し殺して生きて行かなくてはいけなくて。
だから上手く発散できなくて、自分をあきらめているところがあって、真逆をしてしまうことで相手を汚したくないと思うと同時に自分を憎んでいるような。。。
とてもかわいそうな人なんだな、、、という気がしてきました。
きっと、久高は・・・長生きしないだろうな。。。
なかなかに複雑な攻め様でしたね、それを受け止める受け様は一途で健気です。
初めて出会った時、受け様は17歳、攻め様は27才、受け様は一目ぼれ状態で
直後失恋してしまうことに、その出会いは姉の婚約者としてだったから・・・
それから攻め様は受け様の義兄になるのですが、受け様はそれでも好きだった。
そして、3年後姉夫婦が離婚をすることになり、受け様は最初で最後だからと
思いを打ち明け受け止められて幸せな一夜を過ごす。
再会は6年後、攻め様が慕っていた教授で、受け様の叔父の葬儀でなのですが
再会した攻め様は、どこか陰鬱としていて覇気がなくて・・・
受け様は今でも初恋の義兄が忘れられなくて、会えた喜びで声を掛けるが
冷たく、辛辣な雰囲気で立ち去られてしまうが、その後叔父の遺品の整理の時に
二人で片付けることになるのですが、受け様はそこで攻め様に凌辱されて
写真まで撮られ、その後それをネタに脅されるように関係を続けることになるのです。
前編が受け様視点で描かれているので、攻め様の人となりは全て受け様の印象
受け様は初めて出会った時は、クールで知的で優しい義兄、再会後は人が変わった
ように、理不尽で冷たく、受け様を貶めつくすような態度なのですが
読み進めると攻め様事態は全然変わっていないように感じましたね。
攻め様の背負った背景などは詳しく書かれていないけれど、幼い時から抑圧され
理不尽な中で心が歪み切ってしまうような成長をしたのが伺えます。
ただ、受け様だけが攻め様にとって心を許して、大切にしたい存在だっただけで
受け様に関わる以外は初めからどうでもいいような感じなんです。
でも、その大事な心の拠り所だった受け様を自ら穢してしまった事で自責の念が
大きくなってしまい、再会した時に、受け様が未だに昔と変わらずに攻め様を
思ってくれていることを感じ取り、二度と受け様が近寄らなくていいくらいに
手酷い扱いをして、受け様の気持ちと、自分の未練を壊してしまうように行動
確かに病んでる攻め様なんですよね、受け様もその病んでる世界に引きずりこまれ
巻き込まれていくんです、でもそれはどんなに酷い扱いをされても好きだから・・・
でも、受け様は攻め様が自分には心を許してないと知ると離れようとしますが・・・
そして、攻め様にとっては思惑通りの展開のはずが・・・
なんてかなりシリアスな設定のお話でした。
ラストは攻め様が受け様に対する長年の思いを話したことで二人の絆は1本になるような
ラブラブハッピーなんて雰囲気はないけれど、これから二人で過ごす時間が増えると
攻め様も人間らしい感情が育って行って、本当の意味で幸せになっていくのでは?
なんて想像させてくれるお話でもありました。
あとがきの後に、甘めのショートが入ってますので、シリアスを少し和らげて
くれるような感じですね。