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hanakagari
美少年の精が宿る花の樹「白鳳仙」に
魅入られ翻弄される人々を描いた
耽美でややホラー色の強い作品。
「白鳳仙」は、人を死の世界に誘う
いわば死神で、その描写は幻想的で美しい一方、非常に不気味でもあります。
泉鏡花作品を連想させるような世界観に大変引き込まれました。
■「花篝」
生家の庭に咲く「白鳳仙」に取りつかれた佐鞍(攻め)と、彼を現世に繋ぎ止めようとする恋人・華谷(受け)の話。
佐鞍と少年(白鳳仙の精)の情事を
華谷が目撃するシーンは背徳感に溢れ切なくもエロティックです。
華谷のおかげで正気を取り戻す佐鞍ですが、その代償で華谷は目が見えなくなってしまう。
後半は、華谷に尽くす佐鞍の献身的な姿がクローズアップされており、
二人のお互いへの一途な愛がとても沁みます。
愛の力で霊的なものを撃退するという
王道のストーリーではありますが
耽美な描写と登場人物の健気さが
大変魅力的な一篇でした。
■「花嵐」
戦時中の話で、表題作同様、
佐鞍家の庭が舞台となります。
佐鞍家の養子で仏師の智生(受け)と
書生・漱一(攻め)との
あまりに切ないすれ違いの物語。
ここでの白鳳仙は、元々病弱であった智生を死の世界に誘う死神であると同時に、二人を結びつける恋のキューピッドとしての役割も担っています。
佐鞍への想いを込め、命を削るようにして仏像を彫る華谷も、
そんな華谷の想いを受け止める佐鞍も、どちらも非常に健気。
時代の波に翻弄された彼らですが
お互いへの想いは最後まで消えることはなかった。
それを強く感じさせるラストには
思わず涙が出そうになりました。
1999年の作品ですが、古さを感じさせない魅力がありました。