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十五年目の、真実。
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BL色は薄めの作品ですが、上・下巻読み終えて頭の中にぐるぐる色々な想いが込み上げてきました…。とても考えさせられる作品でした。上巻で描かれた橘田と高平の半生の描写があるからこそ、下巻は思入れが強い内容となりました。
下巻はBL小説としては特殊でした。事件の真相に到るまでの捜査経緯を淡々と丁寧に描かれ、大部分を占めます。商業BL小説の暗黙のルールのような、ストーリーの進行と共にBLも最大限に盛り上げて…というようなサービス的な要素は無いです。 個人誌で出されていたものが7年後に加筆されて商業出版されたそうです。もともと商業ベースじゃないと知り納得です。それでも個人的に心に残る印象深い一作となりました。
直接的な BL描写は少ないですが、そこはかとなく感じる橘田と高平の関係性の深さや複雑な入り組み具合に激萌えしました。上巻の時は過去の事実が淡々と描かれていたので、それほど心にこなかったのですが、下巻まで読み、いかに過去の事件が間接的な被害者でもあった二人の人生に暗い陰をおとし、切っても切れない絆を生み出したかを痛感しました。橘田と高平の関係者は単なる恋愛関係よりグッときました。二人のどちらかに倉橋のような強引さがあれば、二人の関係ももう少し変わっていたと思うので、そう考えると二人の不器用さが少しホロ苦かったです。人生得てしてこいういうものですが…。
職業ものとしても、刑事のリアルな生活の実態が分かり興味深かったです。事件の解決まで時間との勝負の為、何よりも事件の真相に近づく事が優先され、殆ど私生活のない様な生活で…。ホント警察の方には頭が上がりません。
二人は過去の事件をきっかけに今の職についていますが、天職だなーと実感します。特に高平の器の大きさには所々涙しました。肝心の事件も、事件の解決までの過程、真相まで非常に読み応えがありました。ストリー展開もご都合主義とは思わなかったです。今までの一筋縄でいかなかった捜査過程を考えると、捜査に関わった橘田や高平と同じく爽快感と共に疲労感も感じました…。読後も橘田や高平を始めとして登場人物の生き様が印象的で、なかなか心から離れません。
あとがきを読んで、執筆された谷崎先生の強い想いを知りました。この小説の元は2004年に殺人事件の時効が15年から25年に延長された時に個人誌で執筆されました。その後2010年の改正により、(死刑罪になる様な)殺人事件の時効が廃止される事になり、その翌年にこの小説が商業出版されました。この本は殺人事件に時効があった頃の話です。それでもこの本を読み、未解決殺人事件の時効が無くなり、被害者遺族の無念が浮かばれる一方で、時効という区切りのようものが無くなる事によって、様々な人達が未解決殺人事件に対してエネルギーを生涯持ち続けなければならない宿命も負う事になる「重み」を感じました。社会派小説が好きな方や「時効」というものに少しでも興味のある方は是非手にとって欲しい一冊です。こういう骨のある作品に時々出会えるからこそ、BL小説はやめられない!
上巻はいろいろな過去が語られ、ようやく現在形で重要な三人が再会する、というところまででした。
下巻は完結編。
過去に関係を持った橘田と高平は今は恋愛感情はなく、トラウマを共有した男同士として一生の心の友として向き合い、また警察の仕事仲間として協力しています。
ここで体の関係も入るのがZAKKさんの「CANIS THE SPEAKER」で、これはより精神世界としては深くて大好きです。
一方、こちらも過去に体の関係があった倉橋が、フリーのライターとして事件の協力者となります。倉橋は未練たらたら。実は橘田も、ということで恋愛方面はこちらのカプでハッピーエンドに。
事件の方は、橘田と高平が関わった過去の事件と、ふたりが現在手がけるヤクザがらみの一家殺害事件とがうまくリンクして、どちらも解決に向かいます。
いろいろ因縁のある三人が、仕事上も協力するというのが少しできすぎですが、あまり感じさせないほどミステリーとして楽しむことができました。
谷崎作品は恋愛を期待しないで読むといいかもと思います(自分の推しカプとずれるけど、ミステリーとしては面白い)。
相変わらず奈良さんの挿絵がいいです。
最初の扉絵で、どのカプがつっくつのかがわかってしまうのがご愛敬。
高平推しだった自分は出鼻をくじかれました。。
読了後の素直な感想として、警察(推理)小説としての成分が濃く、BL成分は少ない作品だったな、と。
とはいえ、小説として大変好みな作りで上下巻を一気に読み終えました。
ただ、ものすごく個人的好みとしては橘田は幼馴染みの高平とくっついてほしかった・・・!
いえ、年下ワンコ攻めも大好きなので義弟の倉橋も良かったのですが。
上巻の高校生時代、橘田は高平に恋心を持っていたと思うし、高平も橘田に対して抱いていたのは友愛ではなく恋情だと思って読み進めていました。
お互いに流れる情にどんな名称をつけるかはその時々の状況や環境で変化するものなのかもしれませんが、いち読者として心情的に高平派でした。
物語としては、15年前に起こった放火殺人事件と現在に起きた殺人事件が絡んで進んでいきます。
後半にかけて伏線がきれいに回収され、犯人が判明したときは「そうきたか!」と納得の解決で、私はBL小説を読んでいたはずだけど?と思うほど、一般小説を読んでいるときのテンションでした。
個人的には、この小説からBL成分をなくしてバディものとして完成させたとしても充分魅力的な作品であったと思いますが、BLの部分が余計かというともちろんそんなことはなく、ストーリーに上手に組み込まれていてギリギリBL小説の枠内というバランスで完成させた作品であったと思います。
主要人物は皆とても魅力的ですし、物語も読み応えがあり「いい読書時間を過ごせた!」という満足感も高いです。
警察小説やバディものが好きで、セックスシーンに重きを置いていない方には心からお勧めです!
リセット下巻。
上巻に続き、小説としては読み応えがある作品でした。
特に事件の真相など、最後まで飽きない展開で興味深く読めました。
ただBL作品としては弱かった気がします。
倉橋の義兄橘田への一途な思いは分かったのですが、
橘田が倉橋に惹かれたポイントもいまいちわかりませんでした。
どちらかというと、幼馴染の高平とくっついてほしかった。
(あくまで個人的な好みですが)
でも過去の事件で疵をおった二人が、事件の真相に向き合って
前に進めて本当に良かった。
友情であっても、橘田と高樋の絆は永遠であってほしい。
リセット下巻です。
わたし、谷崎さんの作品はほぼ読んだことがなかったために、はじめ上巻しか購入しませんでした。
激しく後悔いたしましたが…
軽くないBLでも読まれる方は、下巻もご一緒にどうぞ。
受けの橘田は容姿こそ、厳しさもありながらも優しげですが、自分の信念をその風貌の中にうまく隠す男。
今は警視庁捜査一課管理官で、上巻で起きた一家惨殺事件を担当しています。
攻めの倉橋は、受けの橘田の父親の再婚によって出来た義弟。
上巻では体の関係となりましたが、一方的に橘田から絶縁され、倉橋は心に傷をおい、その後六年会っていませんでした。
現在はフリーライター。
上巻は、橘田が数年ぶりの再会。
捜査で名前が上がった倉橋を訪ねることにした辺りまででした。
橘田の幼馴染で、今は刑事となっている高平も何かを悟り、倉橋宅へ向かい三人が顔をあわせたところまで。
六年ぶりの邂逅は、倉橋に生々しく過去の傷を掘り起こさせます。
学生時代、もっとも感情を揺さぶられた相手の橘田。
その橘田が、悪夢にうなされると必ずすがるように口にしていた名を持つ、高平本人と出会った事実にも。
上巻では子供ながらも誠実な男であった高平は、下巻でも良い男でした。
橘田を最も心配し心にかけ、何かあったならどこにいてもどんな状況であろうとも駆けつけるという決意があった高平。
ただ、高平にとって橘田は、恋情の相手というものでなく、庇護する対象、自分と同じ傷を共有する無二の相手であったんですね。
橘田にとっての高平も同様に。
わたし自身は三人の中では高平に同調して読んでしまったようで、彼の幸せばかり望んでいたんです。
上巻では、高平と橘田が共にいられるようになれば良いと思っていました。
でも、下巻を読んだらやっぱりこのラストで良かったのだなと思えましたね。
下巻は上巻よりも事件にからむ内容が多いのですが、上巻同様、三人の心情が淡々と書かれており、BL作品としても充分楽しめました。
オススメです!
のっけからお詫びですが、BLとしての評価ではありません。
甘さとかエチとか夢見ちゃうとかそっちの要素はまったく足りません。
でもっ
男のひと同士の、たぶん女性にはほんとのところ理解しきれない関係、
恋愛感情だけでもなく、友情だけでもなく、同志というかツレというか
わたしたちがわからないけどいいなと感じてるものが書いてあります。
谷崎さんはそんな関係を淡々とした語り口ながら、しっかり書き込んで
くれる貴重な作家さんです。
警察物好きですが、BLでここまで作りこんでもらえば御の字です!
ダブルシリーズが大好きでいつかまた…と思っていたら
昨年真音が出て快哉を叫び、今年は奈良さんとのコンビだなんて
幸せです。またいつか…を気長に待ってます。
最後もお詫びですが内容は茶鬼さんのがめちゃめちゃ参考になります。
がっつりと、上下巻合わせてすごい存在感と読み応えでした。
本格的な小説を読んだ感じです。
評価が萌×2になっていますが、はっきりいってしまうと、恋愛とかいう意味あいでは、キャラに属性の確固たる萌えがあるかというと本当はそうでもないです。
しかし、話として主人公達の抱えた問題の元である事件と、現在彼等が追っている事件がある一点がリンクしたことで、どちらも明確になるという、その流れを作る手腕にうならされたからです。
そこにご都合主義は見えません。
そして何より働く男という点で、彼等はものすごくよく歩いています。
事件を解決するためにあちこちと訪ねて回ります。
自分によく見知った街の名前や場所が出てくるので、何となく現地が想像できてそれもリアルさを増す要因になっているかもしれません。
主人公達は深夜まで働き早朝出て、帰宅できないこともあったりと、よく身体がもつよなーというくらい動いています。
リアルの警察と比較してはいけませんが、そうしたガッツリと働いている部分というのが、どうにも自分の好みです(だから恋愛がほとんどないんだけど(w)
一真を中心とした尚徳と義弟の倉橋の関係は、上巻の流れを見ていた時に恋愛中心に動くとすれば、、、と考えた自分の予想を見事に裏切ってくれました♪
倉橋は一真に執着を、尚徳に嫉妬を持ったりはしていましたが、激しいものではなく、分別を持った存在として動いたからです。
それには、一真の中できちんと尚徳への線引きができていたからだったのですが。
また尚徳も、一家殺害事件を通して再会した一真に執着はしておらず、また恨みも持っておらず、仕事の仲間として、そして二人の抱える過去の事件を何とか明らかにしたいと願う同士としての幼馴染としての存在であったからでした。
一真の気持ちとしても、最後に倉橋を選んだというより、尚徳はあくまでも友人。
倉橋は義弟ではあるけれど、尚徳とは違った彼に本当のトラウマからの脱却を与えてくれた人物として特別であるという位置づけになっただけかもしれません。
倉橋は、一真を好きなんですけどね。
彼が昔の事を恨みにも思わず、人がよく面倒見がよくて、頑張ってる義兄の支えになりたいと願っているから、一真も彼がいると安らぎになるということで、一応彼等がちょっと特別な存在になるという流れに、やはりはっきりした恋愛という感情ではないんだよな~と思いつつも、彼等がアマアマになる予感はします。
倉橋がイイ子でしたので。
メインの事件解決については触れないでおきましょう。
警察の部外者であるにも関わらず、倉橋に情報を漏らしたり、え?警察としてそれはどうなのかな?と思う部分はあるけれど、倉橋がいたからこそ糸口が見つかり、解決したのだと。
一真も尚徳も公務員だけに四角ばったところがあるから、柔軟に考えて動くことのできる倉橋は、フリーライターをしてるだけあって、その人好きする人柄や外見もあいまってお得な性格なんだわvって思います。
何か色々書こうとすると、本当によかった作品をおとしめてしまうような気がしてきてしまうので、中間以降は蛇足ですね(苦笑)スミマセン
しかし、谷崎さんのシリアス作品は本当に読み応えありますよ!