snowblack
「Lie to me」のあと、湊の大学の入学式前後の話。
この2冊の番外編を読んで、湊の進学先を京都にした作者の上手さに改めて舌を巻く。
進歩的で閉鎖的な街、余所者に邪険で学生に寛容な街。
生まれた時から「若様」として特別だった湊も、この街では一人の新入生だし、
なんとか定職なんていう馴染みのないものが続いている来杉も、
普通にうさん臭い余所者だ。
新しい生活に好奇心の眼を輝かせる湊と、面倒臭さをあからさまにしながらも
本当には拒否しない来杉。
自分の上に乗っかる湊を「重うぜえ、どけ」と言いながらも、
自分で除けることはしない来杉。
他人には不可解だろう二人だけれど、「Lie to me」の後それなりに穏やかな関係で
過ごしている。
なんだかんだ言って湊が可愛くて親バカみたいな来杉は微笑ましいし、
円山公園から10キロの道のりを走ってきちゃう湊の、真っすぐな熱さもいい。
しかし、湊の高校時代の剣道の輝かしい成績から、部活にしつこく誘われたり、
桜の季節に若様としての勤めを果たすべく里帰りをしたり、
大学の先生から出自を訊かれたり
大小さまざまな出来事が、時々ふるさと吾川でのそれぞれの立場を思い出させる。
京都での二人は、「めでたしめでたし」を等身大に行きつ戻りつしながら生きているが
さて、湊が卒業して吾川に帰らなくてはならなくなったら二人はどうするんだろう?
来杉は、自分の存在が湊の人生の汚点で、彼に不幸をもたらすものだと知っている。
(な~んて殊勝な思い方はしていないけれど!でも、本当はそういうことだ。)
そのそこはかとない不安感や不幸感が、物語全体に切なさを与えているんだけれど
本当にどうなるんだろうね~?将来。
お姉ちゃん夫婦がなんとかしてくれないかなー?流石にお殿様ともなるか無理かなーw
※ 一穂さんについてはワタクシ、つい神評価をつけたくなってしまう。
なので本当に特別な時にだけ神にすると決めているのであります、勝手にだけれど
(笑)
ということで、神=ものすごく神、萌×2=神に近い萌×2、とご理解頂ければ幸い。