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ピュアな二人の、じれったいくらいピュアなラブストーリー。
作家買い一辺倒はやめにしよう!などと思っていたのも束の間。すっかり木原先生の作品の魅力に取りつかれてしまいました。最近ではろくにあらすじや評判など確認せず、木原先生の作品というだけで手にしています。これがまたハズレが一つもありません!全て面白く、安心して読めます。大好きな作家先生の一人です。と言う事で今回は「place」をゲット。ビジネスバッグ持ったリーマン二人が、お互い背を向け合っている表紙イラストが印象深く、気に入りました♪
目次
・place(受け視点⇔攻め視点、交互)27%
・liar(受け視点⇔攻め視点、交互)35%
・slow(受け視点)30%
・thought(攻め視点)7%
・あとがき1%
上記目次をご覧の通り、サブタイトルが4つあります。全て横山明夫(攻め)と加賀良太(受け)の二人がメインCPのお話です。
あらすじ
攻めの横山は30歳のノンケ。背中には羽がついています。幼いころ病死した父親が天使だったから。3年前に母親も病死。羽のことを知っているのは世界で叔父と横山の2人だけ。羽以外にも天使の資質があり、それは人の真意を感じ取れること。この資質のお蔭で、営業一筋の横山は商談の類に一度も失敗したことがありません。
2か月前に地方から本社に栄転した受けの加賀は25歳のゲイ。頑固で融通が利きません。それゆえ一緒に組んで仕事をする横山は最近よく胃の痛みを感じます。ところが横山の意に反し、加賀は横山に恋心を抱いています。加賀は気持ちを知られたくないあまり、好きになった相手には逆にきつく当たる癖が…。
感想
良かったです!!「天使の羽」が出てくるので、もっとメルヘンの要素がたくさん出てくるのかなと思っておりました。が、あとがきにもあるように普通のリーマン物として読んで差し支えのない内容でした。
木原先生の作品、ここまでいろいろ読んで参りましたがどれもみんな秀逸です。奇想天外なストーリーと言い、一風変わった、それでいて等身大のキャラ設定と言い、申し分なし!それにいろいろ挑戦されているなーと、いつもながら尊敬の念でいっぱいになります。
思うに木原先生は作品作りの際に、三題噺(さんだいばなし)を活用されているのではないでしょうか。今回、「天使の羽」が物語に盛り込まれたことから、過去の作品とも照らし合わせ、そのように感じました。私の尊敬する偉大な漫画家、手塚治虫先生もよくこの方法でストーリーの練習をされたそうです。
三題噺は、もともと落語の形態の一つ。お客様から出された3つのお題(=言葉)を使い、その場で落語のストーリーを演じるというものです。この技法で練習をされた作家先生は数多くいらっしゃいます。私もよく一人遊びをしたものです。でも案外難しくて、いつも途中で挫折します (◞‸◟)
何の脈絡もない3つのお題。例えば、「財布」「トンネル」「美術館」などと自分にお題を課します。次に、順不同で構わないので、必ずこの3つの単語をどこかに入れて一つの物語を作らないといけません。本書で言うと、お題の中に「リーマン」や「天使の羽」が入っていたと仮定すれば、容易に想像できます。もしホントにそうならば、実に上手な「天使の羽」の使い方です。
ちょっと楽しかった加賀の趣味。キツイ性格と容赦のない物言いの加賀が、意外にも天使グッズを集めているというくだりがあります。ギャップ萌えと言うのでしょうか。可愛いなーと思いました。
加賀は中二の時に溺れかけたことがあります。その時に天使に助けてもらったことで、天使グッズに愛着があります。この天使というのが実は横山だったのです。この話をされたとき横山は驚きました。自分が助けた子供との偶然の再会。でも本当に偶然?もしや運命の再会だったのかも…って。
加賀には大学時代から親しくしている友人のさおりがおります。このさおり、結構キツイ性格です。2年付き合った彼と職場結婚しますが、旦那さんに浮気をされたことが赦せず離婚します。そのさおりが離婚前に放った一言に疑問を感じました。
「男同士でうまくやろうなんて無茶なのよ。男と女でも難しいのに」
うーん…。むしろ男と女だから難しいのでは?と思ってしまいました。俗に、「男は火星人、女は金星人」と言われます。これはそれほど男女というのがかけ離れた存在であることを表した言葉。思考回路、感じ方から、行動パターンまでまったく違うため、相手を思いやることが難しいのです。
逆に言うと男同士、女同士の方が相手をより理解でき、一緒にいて楽な存在。男同士の方がうまくやれるし、無茶なことではありませんよ!と、さおりに言ってやりたくなりました。
最後になりますが、改めてカミングアウトって難しいなーと思いました。加賀は、恋人の横山の叔父に認められたのが嬉しくて、自分も!と思ったのでしょう。横山を母に紹介します。でも加賀の母親はとても頑なで、二人の仲を容易に認めることはしません。
さすがに加賀の母親。頑固なのは血筋かな。でも…こればっかりはしょうがないかもね。ロミオとジュリエットじゃないですが、認められない恋の方が燃え上がるって言うものです (*˘︶˘*)
天使の羽を持ち、嘘と本当を感じ分けることのできる穏やかで優しい横山と、きつい性格で容赦ない口調の隠れゲイ・加賀。二人は玩具メーカーで先輩後輩として出会います。二人の共通点は、これまで誰とも付き合ったことがないこと。秘密と寂しさを抱えながら生きてきた二人が、互いに惹かれ合い、戸惑いながらゆっくり恋愛の過程を歩んでいく描写が、じれったくて切なくて。
これまできつい態度だった加賀が酔った勢いで告白してきて、横山はそれが本心だと天使の力で知ります。加賀の好意を素直に表せない不器用さと、真面目で裏表のない仕事ぶりが相まって、横山は加賀を人として好きになっていきます。そして、加賀の美味しい手料理に心をつかまれてしまい、いっそ自分が加賀を恋愛対象にできたら上手くいくんじゃないか?と考えます。横山の発想の柔軟さと飛躍が、とても面白くて。
恋愛対象として加賀を見始めた途端に、横山は恋心に翻弄され、告白もしないで加賀を抱きしめてしまいます。振り幅の大きさに、ドキドキが止まりませんでした。この後、怯えた加賀に横山は突き飛ばされてしまうのですが (笑)。
加賀は怒りを発散するのは躊躇ないのに、好きとか会いたいとか、相手を欲しがる感情を出すのがものすごく苦手で、恋人同士になってからも、横山を寂しくさせてしまいます。今まで恋愛がうまくいったことがなかったから、経験値不足もあるのですけど、そういう感情を出すのが恥ずかしい気持ち、懐かしく、身につまされてしまいました。
だから、さおりは、恋愛に臆病な加賀にとって、親友という名の逃げ場だったのでしょうね。加賀は横山と二人でいるときに、さおりの呼び出しに応じて、横山を悲しませてしまいます。結局、さおりは加賀の心を手に入れられないと分かっているから、加賀を突き放して去っていくのですが。
逃げを打とうとする加賀を許さず「子どもみたいな言い訳ばかりしたって駄目だ」と叱る横山と、やっと素直になって、「…俺…横山さんが好きだよ」と言う加賀。この場面が、とても好きです。
穏やかな横山が初めて見せた激しい振る舞いは、寂しさと切なさが溢れたせい。年上で仕事ができる横山だって自分と同じだと、やっと分かった加賀は、自分も横山を守っていきたいと思うのです。加賀の成長が嬉しく、心がしっかりと触れ合う二人が、とてもいいなあと思いました。「一緒に、恋愛をしていこう」といった横山の言葉が、これからの二人のお守りになるような気がします。
横山が天使と人間のハーフでなくても、この物語は成立するかもしれません。でも、天使の羽で思わず人助けをしてしまう横山のその羽は、彼の優しさの象徴に思えますし、もしかしたら優しい天使がこの世に紛れて、恋したり悩んだりしながら暮らしているのかも…と考えると、フフッと笑ってしまうような楽しさがこみ上げてきて。私は、横山が天使でよかったと思いました。
加賀の作る料理が美味しそうです。サバのおろし煮、トマトとしらすのあえもの、さわらのごま焼き、海老とみつばのあえもの。生活して、食べて、恋愛して。そういう積み重ねがあって、横山と加賀の関係が深まっていくのだろうと想像すると、二人の恋愛がとても身近に感じられ、幸せな気持ちになりました。タイトルの「Place」は、きっとそんな二人の居場所、心のありかのことなのだろうと思いました。
まず最初に、コレは本当に木原音瀬さんの作品なのか?!と思うくらい純粋な恋愛のお話です。いやぁ、読みながら、実はどこかでどんでん返しがあるんじゃ無いのか?この人は実はチョー性格悪いやつで…とか、疑りながら読んでしまうという(笑)
木原病を患ってしまってるかも。一応、ややこしいもの担当!で、さおりと今瀬という登場人物は出てきますが…
二段組で、心して読まねばと思ってましたが、読み進めるに従って、これって純愛もの?学生の恋愛?と思うくらい二人共が純粋に「好き」という気持ちに揺さぶられ、相手に対する気遣いとそれでも独占欲にかられた嫉妬とに振り回される。
確かに、横山は羽根持ちというファンタジーかつ作中では奇形として扱われる問題を抱えています。加賀の方は嘘をつけないストレートな物言いで、周囲からは距離を置かれる問題児扱いのゲイ。
この辺がややこしい二人の関係がすんなりとは進まず、イライラしちゃうところではあります。二人の心の動きが深く、また優しすぎたり、卑屈だったり、面倒臭い。ここが木原さんぽいのかも(爆)それが物語をリアルに、感情移入させてるんだろうなぁ。
でも、お互いに好きって気持ちは変わらずなので、何だかんだとあっても、見守る気持ちになれば、ほんわかと第三者目線で楽しめます。
ま、最後の横山の叔父へのカムアウトと加賀の母親へのカムアウトの対比は現実的で、みんなまーるくハッピーエンドにならないってのは、私は却って良いなと思いました。
木原作品に往々にして登場する、社会適応できないキャラクター。色々な作品でこれまでに何人も見たけれど、わりと自尊心の強い性格の人が多かったと思います。対して、本作に登場する加賀は、同じ社会適応が難しい難儀なキャラでありつつ、後になって自分の言動を悔やんだり、俺はだめだと思って落ち込んだりするタイプで、木原先生の作中では珍しい部類かもしれないです。
本作は連作短編集になっていて、「place」「liar」「slow」「thought」の4本が収録されています。「thought」はちょっと後日のSSなので、実質3作品。
1作目の「place」では加賀の激しい性格に驚いたものでしたが、2作目「liar」では加賀の良さがすごく良く分かる作りになっています。
彼は本当に不器用で、相手が誰であれオブラートに包むことなく真正直に発言する。大人なんだからもっと上手くできるだろうと思うものの、「Liar」においては加賀の言動にすがすがしさすら感じるのが心憎かったです。周囲と衝突不可避だけど仕事ぶりは真面目だし嘘を吐かない。気付けば加賀を応援している自分がいました。
加賀の恋の相手である横山は、人当たりよく穏やかな性格で仕事のできる人として描かれています。でもその優しさ穏やかさは諦念から来ていることや、背中に生えた天使の羽根という秘密から来ていることを読者は知っています。
神様ではないから心の中を読むことはできないけど、嘘か本心かを見抜くことは出来る。素直な加賀なんてうってつけなわけです。
割れ鍋に綴じ蓋なのに、まあ上手くいかないこと。二人が上手く意思の疎通が出来ていないともどかしいし、お互いに言葉が圧倒的に足りてないということに焦れるわけです。よくできています。
3作目「slow」は本当にじりじりしました。サポート側だったはずのさおりが参戦するわ、加賀は横山に色々なことを黙っているわ、報連相!!と首根っこ掴まえて怒鳴りたくなりました。横山が気の毒でした。
天使の羽根がとても綺麗です。
羽根だけど、羊みたいにモフモフしているイメージです。
猫のしっぽみたいに、頬を撫でたりできるのが良きです。
あとがきで、「天使の羽に夢がありません」と書かれていて、ちょっと吹き出してしまいました。
HollyNovelsです。私はこのレーベルが殊の外大好きです。
このレーベルで木原先生の担当をされていた方は、今どうされているのかが気になります。
とにもかくにも、加賀が可愛かった゚(つд・o)゚+。
不器用でまっすぐで、素直になれない。
だけども本質を覗けば的な部分。そんなところウッカリときめいてしまうのであります。
正味、後半のゴタゴタさえなければ“神”つけようと思ってました。
いかんせん、あの部分で、いろいろ頭の中がグチャグチャに。
トータル思った異常にピュアなお話でした。
出来る営業マン、横山のもとにやってきた新入社員。
教育係を任されたものの、なんともストレートな物言いと、態度のキツさにほとほと参っていた。
ところが、実はこの新人→加賀。は、横山に密かなコイゴコロを抱いている。
なのだけれど、好きな人にほど素直になれずつっけんどんにあたってしまうという悪い癖。自分の性癖にコンプレックスを抱いているだけになおさらそれが露骨に現れてしまう。
そんな中、2人に芽生えるものは~・・・な今回なのでありますな。
やっぱり片想いの間が楽しい。
どうしてもノンケを好きになってしまう加賀。
いつも言葉にできず告げられることのないまま終わってしまう恋ばかりをしてきた。今回もまたそれで終わるのだと決めていた。
そんな葛藤がどうにも可愛いのである。不器用でまっすぐなこの子
やたら可愛いとおもってしまう。
視点が、横山と加賀の両方で交互になされるので、読みにくさが若干あったものの、後半になるにつれては気にならず。
加賀の友人であり、加賀のことが好きでたまらなかった女の存在。
この人の、サッパリとストレートな性格、キャラクターがすごくよかった。
どのシーンだったかな、苦悩する加賀に「そんなに好きなの」というシーン。ここのシーンがとても好きww
横山さん。この人も、実は大きなコンプレックスを持っている。
幼少のころに突然生えてきた天使の羽。父親が天使だったのよという母親の言葉は、自分の背中が真実を物語っている。これがあるから、好きな相手ができても、躊躇してしまう。抱き合うことにでもなればこれを見せなければいけない、ましてや自分の子供ができたとき、同じように羽が突然生えてきたらどうするのか・・・・その苦悩ありきで、ダレとも付き合わずにきたわけですが~・・・・。
春キャベツのくだりが好き。
加賀が自分のことを好きだと知ってしまった後
2人の距離は、恋愛云々なしに、近づいていく。
加賀のつくったご飯をたべ~な、特別なキャベツがあるのなら・・・
なんか甘い空気がすごくよかったですな。
徐々に、ジワジワ心の距離が寄っている。そんなシーンだと思います。
後半。女を挟んでの横山さんの暴走。
これまで、わりと大人~な印象があった横山が・・・な部分。
なぜあそこまで、、、、と思ってしまったりもするのだが、
そこをもうすこし掘り下げて考えることが出来ればもうすこし楽しめたのだろうかと思う。
横山は天使と人間のハーフです。
背中には真っ白な羽があり、人の言葉が嘘かどうかが分かります。
が、背中の羽はいつもサラシを巻いて隠し、横山はごく普通のサラリーマンとして日々を生きています。
そんな横山の下に配属された加賀。
無愛想な加賀のキツい性格と容赦の無い言動に辟易しかかっていた横山でしたが、酔った加賀を介抱してから、加賀がかなりの照れ屋で意地っ張りだということに気が付きます。
相変わらず無愛想な加賀に嫌われていると思っていた横山でしたが、酔った加賀が零した言葉に、加賀が嘘偽り無く切実に自分のことを好いていることに気づいてしまい・・・
木原作品を何冊か読んできましたが、読み終わって「この二人なら大丈夫だ!」とこれほど思えたカップルは初めてな気がします!
そう思えるのは、書き下ろしの『thought』の効果でしょうね。
横山と加賀、この後いろいろ困難はあるだろうけど、この二人なら乗り越えていける!!と太鼓判を押せます。そういう意味で安心感があり、幸せな読後でした。
最初は横山同様、加賀に苛ついていたのですが、読み進むうちに加賀が可愛く思えてきました。
加賀は不器用なだけなんだよ(笑)
加賀自身は真面目で真直ぐな男です。こんな生き方してたら生き辛くて仕方ないと思う・・・でも、そんな生き方しか出来ない加賀。
真直ぐ頑張る加賀に、横山だけじゃなく、最初はブチ切れてた総務部長だって最後は一目置くようになります。もう本当に加賀が愛しい!それを受け止める横山の穏やかさも萌えます!
背中の羽をあげようか?と言った横山の言葉に対する加賀の返答が、個人的にすごく好きでした。横山にとっては羽はある意味コンプレックスでもあり、それを嘘偽り無く褒めて受け止めてくれる加賀は、横山にとっても何にも変え難い存在なんだろうな・・・と。
加賀に感情移入できるか、加賀を好きになれるかが、この作品の好き嫌いを分けそうな気がします。
キャラクターは魅力的だし、内容もリアルで面白くてオススメなんですが、ちょーっと引っかかったことが(汗)
横山の背中に羽がある、のでファンタジーのはずなのに、全然ファンタジーっぽく感じませんでした。
それはいいんです。普通に、リーマン物のラブストーリーとして読めたので・・・読めたからこそ!!
天使と人間のハーフ・羽持ちの設定は必要?嘘が見抜ける能力の根拠付けとして?
過去に一度出会ってる設定は、横山の羽を加賀が気味悪がらない理由のため?
横山の天使の羽=コンプレックスと解釈するなら、羽の脹らみを言い訳する時の肩甲骨の奇形でも・・・と。
ファンタジーなのにすごく現実的。それが木原さんの良さだとは分かっているのですが・・・ちょっとそこで小骨が引っかかってしまいました。横山に羽を生やす必要があったのか・・・すごい根幹のところですね(苦笑)ごめんなさい。
でも、横山と加賀はすごく好きなんですよ。
横山の羽を私自身も受け入れられるように、何度か読み込んでみようと思います。
今まで読んできた木原作品の中で最も穏やかなラブストーリーでした。作家さまおっしゃるところの「リーマンファンタジー」。陵辱もストーキングもアル中もない…?
恋をしては片思いで終わり、ひたすら恋愛に失敗し続けてきた真性ゲイの加賀と、天使だった父親と人間の母親の間に生まれ、背中に羽が生えていることを秘密にして生きてきた横山のお話。
横山は人望があって仕事もできるのに、コンプレックスのせいで諦めていることがある。それは結婚して子供を作ること。子供に自分と同じ不自由な思いをさせたくないし、相手女性の意思を尊重したいから、と。
翻って中学生の頃に両親が離婚し、母親に引き取られた加賀は、その頃から自身の性的指向を自覚していた。また同時期に母親にとある現場を目撃されて以来、加賀は女手一つで育ててくれた彼女に疚しい気持ちを抱いている。
加賀は横山に引けを取らないほど有能ですが、剛直で扱いづらく、組織の中では生きづらい人。営業なのに愛想はないし、思ったことをすぐに口にするし、自分の意見が正しいと判断すれば相手の立場を慮ることなく主張して不興を買う。恋愛においても、一方的にいじけて好きな人にキツイことを言っちゃって、結果独り相撲で相手を遠ざけてしまう…。加賀の、横山に対する拗らせ女子的な心理はすごくよくわかります。プライドが高いくせに自分を卑下して、自信がないから素直になれなくなっちゃうところとか。。
人付き合いがヘタクソな加賀には性別を超えた理解者で親友のさおりがいます。彼女は加賀にとって的確で愛のある助言をしてくれる唯一の友人ですが、横山との恋路をイイ感じに煽ってくれます。あわや三角関係か…?なんて展開が気になりつつ、さおりが加賀に抱いている抑えられない思いや、ズルい気持ちもわかるんだな、同性として。二人の関係には、男女間の友情についても示唆するものがあって、それに対する作家さまの見解を垣間見られたようで興味深かったです。
横山の羽って、その人が抱えるコンプレックスの比喩といってもいいかもしれない。人の心が読める彼の能力は天使の特性として描かれているけど、自分の弱味を意識している人は他人の弱味にも敏感なものではないでしょうか。横山が加賀のメンドくさいところも純粋なところも丸ごと好きになったのは、加賀の方が「羽持ち」の横山をすんなりと受け入れてくれたからなのだと思います。
不安や恐怖で途方にくれていた時、見ず知らずに人に助けられた…みたいな、天使体験ってしたことありますか?振り返ると、その時だけ例外的に条件が揃っていたりして。加賀みたいにそんな体験をしたことがあったら、天使の存在を信じてしまう気持ち、よーくわかります。わたしにもそんな経験があるから。。
電子書籍化されました\(^o^)/
意地っ張りな受けが不器用に片思いしたり職場の空気を全く読まずトラブルを起こす姿が面白く、ニヤニヤしつつ読みました。
攻めは、天使と人間のハーフ、背中に羽を持ち、人の嘘を見抜くことができるサラリーマン。
穏やかな性格のやり手営業マンです。
受けは、攻めに片思い中の部下。
努力家だけど、気が強すぎて職場では厄介者扱いされています。
攻めも受けもコンプレックスゆえに対人関係に対して消極的なため、普通にいけば恋愛関係に発展しないだろうと思いますが、そこは木原先生の作品です。
悪意に満ちた同僚、受けにご執心の美女(既婚者)、ヒステリックなママなど、世にもうざいキャストが二人の恋を盛り上げます。
お互いに深く傷ついた相手を支え合う関係に胸キュンです。
木原作品はメインカプの関係が執着や依存によって成り立っている場合が多いですが、本作のようにがっつり恋愛感情が描かれていると素直に楽しめます。
萌えシーンは、普段温厚な攻めが嫉妬して受けを襲うとこ。
そして何気に初恋&再会物です!わたし得!
加賀はゲイで好きな人にきつく当たっちゃう。横山は翼を持っている。
言えない事をちゃんと口に出すことについてのお話だと思いました。木原さんの他の作品に比べて毒が少なく清々しさすらありました。
おもちゃを扱う会社でのやり手二人。横山は思考の柔軟性故に加賀を意識し始めるのですが、その思考回路と想像力!仕事できる人は違うね〜という感じでした(笑)
思った事を遠慮なく言う無神経さすらある加賀は、ゲイだということもあり自分の気持ちだけは素直に言えない(飲み会で避けられるのリアルだしちょっと可愛いな…)。横山に恋をして意識すれば更にキツく当たって自己嫌悪。最後の最後まで、恋人になってもうだうだと素直になれず、只の友人のさおりが泊まりに来てることすら言わず、電話してと言われても出来ず。最後の最後残り数ページでやっと、横山が促して気持ちを口にするのです。
書き下ろし「thought」では一番の難関、相手と自分の家族に同性の恋人を紹介するお話ですが、横山の叔父にハッキリと気持ちを伝える(酔ってはいるけれど)加賀の成長にじ〜んと来ました。
横山は背中の羽根さえなければ普通に女性と結婚した普通の男性。読んでいても加賀がとんでもないから、彼は全く普通に生きていけるんじゃ、と思ってしまいます。彼自身父親と同じ羽根を持つ事に関して否定的ではないけれど、虐めや変な目で見られることを知っている(正直この辺り書いて欲しかったです)。だから昔好きだった女性にも言えなかった。自分の羽根のことを言えたのは加賀ひとり、そして叔父だけです。
もしかしたらその女性に打ち明けても大丈夫だったのかもしれません。でも加賀は羽根を見て「すごく綺麗」と言った。その嬉しさに勝てるものは無いと思います。普段自分の気持ちをあんまり言えない加賀が素直に口にした数少ない言葉が、最後の書き下ろしで出てくるのでグッときました。だからちゃんと気持ちを言うのは大事なのだと教えてくれるようでした。
叔父も横山も気にしていた欠点を、慰めるでも気にしないでもなく愛すべき点として受け入れてくれる人と出会えた事は本当に幸せだろうなと思いました。それは加賀にも言える事ですが。
加賀の友人さおりは、ゲイである彼の事を心底好きで諦めきれない。物凄くさっぱりとした性格で加賀を勇気づける姿はカッコいいですし、どうしても気持ちを口に出せない加賀と読者にハッパかける役割です。それでも後で疲れちゃうんだけど…
彼女のこの言葉がこの本の中で一番好きでした。
「良太は…きっと女の人と結婚しない。一人で生きて、一人で死んじゃうのよ。私はこの子を良太だと思って、好きになるの。きっとこの子は私のことを愛してくれるわ。良太はいなくなるけど、良太を好きな私の気持ちはずっと、この子に受け継がれていく。だから良太って存在は、ずっといつまでも残るの」
この本、実にレビューに苦しんだ一冊でした。
本人達の気持ちの底に一体何があるのだろうか?とか、それぞれの抱える問題もあったりするんだけどその関係性についてとか、加賀は極端で逆に解りやすかったのですが、横山の気持ちとか。
悩みに悩んで、繰り返し読んで、それでもはっきりとした「これだ!」っていう多分正解みたいなものは出て来なくて(作者さんにしかわからないのは、きっとどの作品も同じなのかもとは思うが、、、)何度もさかのぼってみたり、こんな初めてなんですけど新刊なのにいきなり本がヨレヨレになりましたヨ(汗)
玩具会社の営業・横山には天使のような羽がある。
それのせいで女性との恋愛をあきらめて一生一人でいようと決めていた。
ただ羽のおかげか、特別なちょっとした能力があって、それは人の言葉の真実と嘘を見分けられるということ。
この天使の羽という設定が、ファンタジーを醸し出しているものの、実は地味な働くサラリーマンのお話だ。
加賀は地方から栄転で本社配属になり、先輩の横山とペアを組んでいる。
歯に衣を着せないもの言いが、本当の事とは言え相手に不快感を与えてしまう言い方で周りに軋轢を生む扱いにくい人間だ。
中学二年の時に男性にいたずらをされた過去があるが、元来自分がそちら側の人間という意識があり、それをひた隠しに隠して、恋をしても悩むばかりで告白も成就すらしたことがない。
彼には唯一、性癖を知った上で理解してくれる、さおりという女性の友人がいる。彼女には何でも打ち明けられるのだ。
横山の特殊能力が故に、加賀は特別なのだろうな、、と。
極端な性格でキツいけど、決してウソは言っていない。他の人間がするみたいに媚びへつらったり見下したりもしない、きつい言い方だけど間違ってはいないのだ。
ただ唯一ウソをつくのは、自分の感情や気持ちが関与したことだけ。
気持ちがゆさぶられることに、全然慣れていなくてまるで鋼鉄の鎧のように壁を作ってしまうんだ。
甘え下手ともいうが、人間関係を作ろうとしていない姿が見える意固地さが、実に不器用で不器用で、いくら嘘をついていないからといえ横山は加賀を受け入れるんだろうと、どうしてもそこが・・・自分の中で受け入れられないだけなんだろうか?とも・・・
横山は本当にできた人間だ。
勿論、人であるから彼だって悩んだり苦しんだりしているんだけど、それを見せない。
それを感じ取れる器を加賀も持っていない。
何につけても自分本意で、自分の事だけで相手の事を思いやってあげられないのです。
でも、だからこそ際の際になってやっともらす本音の感情が効果的に横山に働くんだろうか?
加賀の唯一の友人・さおりの存在、彼女は自分が幸せな時は加賀を応援している風を装いながら、自分が困難に陥った時は加賀を頼る。
好きだって憚らずに公言してるくらいだから、加賀はわかっていいようなものだが、自分を理解してくれているのはさおりだからと、つい特別扱いをしている、というか、さおりに翻弄されて当たり前の態度にイラMAXがおとずれたりする(汗)
友人と恋人の違いがわからない、本当はさおりに対する態度は恋人に対するものなのに・・・
ひょっとすると、自分の嗜好を否定し続ける母親への何かコンプレックスのような感情の転嫁なんだろうか?とも思えてみたり(そこまで複雑でない?)
横山がかつて好きだった女性に対して嫉妬をしているのに、横山がさおりに嫉妬していることに気がつかない、大バカものなんです!!
横山が加賀の不器用をかわいいと思い、好きになろうと決めて、それから色々なすれ違いがあって、トラブルがあって、嫉妬があって、そのたびに一歩進んで二歩下がってを繰り返して、加賀は少しでも変われたんだろうか?
さおりの役割を横山ができるようになったんだろうか?
本当は、そんなシーンを見たいと思ったのですが、書き下ろしの短編はそれぞれの家族に紹介する話でした。
でも、酔っぱらっていなくて悔しくて泣く加賀の姿に、きっと前進はあったのだろうと・・・
横山が悲しい事があった時、羽がそっとかれの頬をなでるというシーンや、意思とは関係なく飛び出す羽、包み込む羽。
要所要所に、ちょっとでも羽としての役割が優しい存在として出ている部分に羽の存在意義がありました。
加賀が横山に甘えきっているお話が欲しかったな~