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おれは諦めないから。ずっと、好きでいる、からっ……
zurui otoko no otoshikata
攻視点、受視点、いずれの視点で読むかによって印象がガラリと変わる内容だと思います。
攻の石井はバツイチのリーマンで、離婚前はブランド物で身を固めた遊び人で他人に対してドライなため痴情のもつれによるいざこざが多い評判のよくなかった人でしたが、離婚にまつわるアレコレで人としてまともになり服装も変わり性欲も枯れ果てて、今や百円ライターの似合うくたびれたオッサンになっています。仕事はできます。
受の郁也は成人したばかりの大学生。可愛い顔をしていて、適当に遊んでいる今時のイイ加減な若者のように見えるのですが、実は礼儀正しくて真面目な子です。恋愛相手には好んで自分の父親ぐらいの年齢の人ばかりを選ぶのですが、相手に金銭的にたかることもなく、不倫の場合は相手の家族に迷惑をかけることもない付き合いをしてきています。そして、好きになったら一直線の猪突猛進タイプです。椎崎さんと編集さんは郁也のことを【うり坊】と呼んでいたとか。本当にその愛称がピッタリな感じです。でも、決して相手に迷惑はかけない【うり坊】なのです。自分のことより相手のことを考えるデキた【うり坊】だから本当に可愛らしいです。
内容は、郁也を気に入ってつきまとう男にラブホに連れ込まれそうになって逃げだした時に、郁也の行くバーで何度か顔を見かけたことのある石井に出会って助けて貰い、ストーカー対策のために石井に恋人のフリをしてもらうことになって、石井と一緒に行動するうちに郁也は本気になり好きだと告白するけれど、その場で振られて、その後は弟分として構ってもらっていたのに、石井は転勤で住所も告げずに引っ越して、郁也は会いたい一心で住所を突き止めて訪ねて再度自分の気持ちを伝えるだけで帰ろうとして道に迷ったところを石井に捕獲され連れ帰られて世話を焼かれ、ついに郁也への自分の気持ちを自覚した石井に食べられる、という話です。
タイトルにあるように石井は「ずるい」のです。この「ずるさ」は、いわゆる、誰しもが年齢を重ねるごとに変化よりも安定、自分が傷つかないように厄介事から遠ざかるといったような、そんな意味合いにおいてのものです。
だから、最初に相手に惹かれたのは石井なのですが、その気持ちが恋愛に発展しないよう自制して気をそらすワケです。年齢差があるから(郁也の父親ほどは離れていないけれど一回り以上は上)そのうち郁也の気持ちが冷めるだろうとか、枯れた状態で新たに恋愛するというのもパワーがいるしとか、何だかんだと理由を付けて・・・。でも、もともと他人のことなんてどうだってよくて興味がなくて、面倒ごと厄介ごとに巻き込まれるのはゴメンだと思っている石井が、郁也の面倒ごとには付き合ってるし、弟分だとか言って可愛がって特別扱いしているところからして、自分では気付いていない本心が読者にはバレバレなのです。
郁也は自分の気持ちに正直に真っ直ぐ突進してきますから、石井は大人の余裕でもって、のらりくらりかわしたり煙に巻いたりします。そういう2人の遣り取りが面白いです。郁也視点で読むと、なかなか掴めない石井の気持ちに不安になったりイラッときたりしますが、石井視点で読むと郁也の真っ直ぐさと気遣いが可愛くて可愛くて、放ってはおけなくなるし構いたくなってしまいます。
いろいろなことを経験してくたびれて枯れたオッサンと純真で礼儀正しい【うり坊】の恋愛話は、読み返すたびにまた違った感想を抱かせてくれる味のある作品でした。
攻めの態度が徹底していて好きでした。
周りが「あいつがあんなに他人に干渉するなんて、よっぽど受けのことが特別なんだね」と受けのための好意的解説をしてくれますが、実際の攻めは変に期待を持たせたり思わせぶりに接したりしない、実にスッキリキッパリした人だった気がします。
逃げっぷりも潔かったしね。
攻めの元彼が実にBL登場人物らしい悟りをひらいたいい人だったから、受けは攻めの引っ越し先にたどり着けたけど、普通の感覚だったら絶対そんな個人情報初対面の人になんて教えないし、そう考えると攻めの逃げ方は綺麗さっぱりで見事だったと思うんですよね。
「ずるい男」って、受けや受けの味方たちから見た印象であって、実際攻めの性質的には単に「面倒くさがり」って気がします。
恋愛に対して「臆病」とか「逃げ」とかじゃなく、「恋愛する元気ありません」って感じ。
だから、責任のない「恋人ごっこ」は単純に楽しいんですよね。
確かに恋愛って、相手のことを想うほど体力使うもんね。
なので、こういう攻めを落とすにはこの作品の受けくらい鬱陶しい奴じゃないと無理なのかな…って気もしますが、ともかく私には鬱陶しすぎました。
教えてももらっていない引っ越し先までわざわざ押しかけていって、わざわざ告白しておきながら、「これからも好きだって言いに来ただけ。じゃあ帰る」って、どんな面倒くさい誘い受けだ。
私が攻めだったらきっと、「何しに来たんだ?」とハテナマーク飛びまくりできょとんとしちゃう。好かれてるのはわざわざ言いにこなくても知ってるよ、だから逃げてきたんだもん。
実は本編読んだ直後はこれ、「攻めも実は好きだったから、追いかけてきてくれて我慢できなくなりました」的な雰囲気だったから、「まあそうなるよね。BLだもん」ってくらいの感想しかなかったんですよね。
けど、続きの攻め目線で、受けが押しかけてきても付き合う気なんてさらさら無かったってのが語られた瞬間、攻めのこと好きになりました。っていうか、この作品が好きになりました。
できればそういう攻めの気持ち、もっと上手に本編中で表現して欲しいところなんですが。
タイトル同様「言い訳」のための続編だったのが、若干残念です。
けど、本編で出し切れなかった攻めの魅力を押し出すためには実に有効な「言い訳」だったので、結果オーライかな。
帯『おれは諦めないから。ずっと、好きでいる、からっ……』
タイトルが「ずるい男」とありますが石井[攻]は特にずるい男ではないです、まああえて言うなら最後に若くて可愛い恋人手に入れやがって、このこのズルイじゃねえかーって感じ位かなあ。
彼等2人の出会いはあらすじを参照いただくとして、郁也はゲイで容姿も可愛いのでモテるんですが、オヤジ好きというか年上の男性好きなのです。
対して石井はバツイチながらもまだオヤジというには若い男で郁也の様なお子様なタイプは好みではなく、それ故にお互い好みじゃないからって事で偽装恋人のフリをする事になるんですね。
郁也から無理矢理、頼んだ偽装恋愛なのに石井は何だかんだ言いつつも結構マメに付き合って、さり気なく優しくもしてくれるし面倒見も実はいい。
郁也が年上オヤジ好きなのには実は理由があって、彼はひたすら心に秘めているのだけれど本当は母親の再婚相手である義父の事を好いています、けれど幸せな家庭を壊す気も、当然打ち明ける気も全く無くただ想っているのみ。
そんな郁也なのですが、石井に本気で恋をしてしまう。
そして思いっきりストレートに彼にぶつかって行きます。
ひたむきで一生懸命な郁也の恋愛のやり方が読んでいて微笑ましい。
石井は突き放している様でいて、弟分としては認めてくれている。
そんな関係でも、諦めないで頑張る郁也。
まあ結局は石井も結構早くから、郁也に落ちちゃってたんですけどね!
読後感はほのぼのしたですよ。