snowblack
「おとぎ話のゆくえ」の番外編、湊が京都の大学に進学して来杉と再会してからのお話。
60ページの、なかなかに読みでのある話です。
「ドーナッツ」(ドーナツじゃないのよw!)が沢山の表紙も可愛い。
何故か来杉は一緒に夜を過ごしても、湊に手を出してこない。
それに疑問や不安を抱いている中、湊は持ち前の彼にとっては当たり前の正義感で
困っている芸妓・鈴子を助ける。
実はそれが来杉が知り合った女性と同一人物で…、話はややこしくなっていく。
来杉には、湊が若様として負っているものや期待されている重さは、分からない。
そして、湊もまた来杉の過ぎ来し方(って打ったら杉来し方って出て来たよ~w)や、
そのために抱えている複雑な思いは分からない。
光を浴びて育った湊の真っすぐさが、眩しくてでもそれだけに苛立つ気持ちは、
湊には絶対に理解できないだろう。
その湊には分からない気持ちの部分で、来杉と鈴子は同類なのだ。
鈴子は、来杉を「野良男」と言う。
自分と同じ「野良」、愛されず路地裏で育ち、生きる為にはなんでもする野良。
鈴子は来杉のことだけを言ったんじゃない、私たちって所詮野良よね…と。
そんな鈴子の切ない諦観が身を以て分かる来杉は、彼女の決心に加担して芝居をするが
でも、今、来杉は言う。「俺は野良じゃねえ」と。
普通に考えれば相容れるはずのない二人が、出会って惹かれ合って結ばれたこと。
湊が「奇跡だ」と繰り返し感じている、こんな理屈をすっ飛ばした恋。
この力技(運命とか魔法とかも言うw)でぶっちぎっている感じが、「おとぎ話」なところだろうけれど
さて、このあと二人はどうなっていくのだろうか?
最後は、可愛く可笑しくちょっとエロ切なく。
こうして、本来だったら果てなく遠く交わらない二人が、
お互い重ならないけれど触れ合える立ち位置を見つけていくのかなー。
どうでもいい感想として、湊っていかにもって和風のお家で暮してそうなのに、
用意された京都のお住まいは、普通の学生が住むにはちょっとだけ恵まれている程度の
マンションなんですよね。
こういうのって、逆にリアリティがあっていいなー、
一穂さんのセンスってこういうところにも感じます。
東雲月虹
『Lie to me』=「うそでもいいから」、素敵ですよね!
言ってくれない愛の言葉を望む湊が可愛いですよね~♪
二人は相反する育ちと環境ながら、恋に落ちたらそんなの関係無い、といいたいのに
やっぱりわかりあえない事もあり…。切ないです。
“力技”にニヤッとしてしまいました☆
すれているような来杉と素直で真っ直ぐな湊、
ずっと幸せでいてほしいですね!