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「きみは俺がいなくなったらどうする?」
yoru no guwa
上質なメロドラマを見ているような作品でした。
杉原先生らしい端正で美しい表現、描写、静かに流れる乱れのない旋律を丹念に紡ぐような文章に、夏の暑さを忘れて高原で星空見てる気分になりました…( *´艸`) ”恋愛小説”が好きという方におすすめです。そこはかとなく匂い立つ大人の色気が感じられます。(こういうのを求めてます…)
プロローグは受の視点から夜空に関わる思い出、それは攻との出会いのイメージになり、エピローグは攻が受への想いを夜空に託して、最終的に2人が思い思いに見ていた夜空のイメージが一つになるような印象でした。
攻は美形というより色気のある二枚目(イケメンではなく、ここは昭和ワードがしっくりくるかなと)、上品なヤリ〇ンです…。他人の欲望を引き出すフェロモンをもっているタイプ、男女問わず自分を求める相手に事欠かず、しかも自分を与えることになんの抵抗もないから(要は自分自身に執着がない)、相手の望む欲望を与えて利用しながら、涼しい顔で世渡りをしている色男が、唯一通常運転でいられない、欲望や執着を発動させてしまう相手が、亡くなった妻の弟(蒼)なのです。宿命という言葉がしっくりくる2人。
この義兄弟は、同じ事業をし、同じ家で暮らし、ときどき淡泊なセッススするというルーティンを、でっかい感情を押し殺して営んでたわけですが、蒼に好意を抱く第三の男・富田によってその平穏な日常が変化します。蒼にちょっかいかける富田に、静かに激しく嫉妬しちゃう色男の言動がいちいち萌でした。淡泊だった夜の営みがねちこくなる(こんな情熱があったんだという、しゅっとした絶倫攻、いいですよね)、何回するの?と突然の執着に戸惑う受が可愛いです。(おざなりに抱くのが気にいらなかったのに、激しく求められると不信が募るという…複雑な受心)
最初、蒼→圭吾への想いが強いように見えていたのですが、途中から、実は逆だとわかります。というか、そもそも当事者以外の目には圭吾にとって蒼が特別な存在であるということは明らかなのに、亡くなった姉への遠慮から、特別な存在と自覚すること無意識下に否定していたようにもみえます。思い通りにできないから、その状況で最善なようにやってきたけど、押し込めた恋心がもう限界!ってなってくる。蒼は表層を見ているから、なんだか相手が変わってしまったように見えるけれども、実は本心が表出してきちゃっただけだという、ある意味ギャップ萌え!
最後のほうで、圭吾が蒼に「~俺は君しか抱いたことがない。~」と告白するのですが、”どの口が…”というほど散々外で遊んでて、互いを知りつくしたような関係にいても、ブレない特別な感情、純度の高さに悶絶しました。。気障な表現がたくさんありますが、この世界観では浮きません!キャラと状況にこの上なくハマってます。いちいち心にささるので、縦横無尽に萌え転がりました。
2人の立場の均衡はある秘密を介して成り立っているのですが、その秘密が明らかになったとき、圭吾も蒼も本当の人生を始めるのではないかなと思いました。読み終えてからずっと余韻にずぶずぶです。木下先生の挿絵も文句なしの神です!!
杉原先生の攻めが好きです。
本作はじっくりと読める時間的余裕と心理的にムラッとくるようなBLに浸りたい時に読みたいですね。
以前、電子で読んでいたのですが、やっぱり紙で欲しいなと思います。もう、BL本の収納スペースがえらいことになっているので、なるべく電子版にも挿絵付けてください笑
本作は作者の『世界が終わるまできみと』に近いものを感じます。受け攻めの物語ではあるけれど、かなり家族が関与してくるところや、ミステリーっぽい要素があるところ。でもやっぱり、結末は穏やかで優しいのです。『世界が〜』も、ものすごく好き。
木原先生をして美青年好きのお墨付き?作家様ゆえ、メインカプはため息が出るほど美しい二人です。彼らの妖しくて官能的で、すぐにでも壊れてしまいそうな関係性を第三者の男が暴いていきます。この人物は物語の進行に一役買っているのですが、二人よりも先に登場するので、読者は騙されがち!
楡崎は頽廃美のカタマリみたいな男です。現代物でこれだけ品良く耽美感を醸し出せるのって、作家様だから可能なんだろうなと思いました。序盤から少しずつ伏線が張られているけれど控えめなので、楡崎のキャラクターがよりミステリアスに仕上がっているような気がします。
他方、子供時代の蒼は明るく気丈な性格でした。圭吾と出会ってからずっと彼を意識してきて、大人になるにつれ狡くなっていきます。蒼の一途さはあと一歩で執着に転じそうなギリギリのラインをせめぎあっているのに、なぜかそうならない。そこに子供の頃に見せていた彼の潔癖さが表れていると感じました。どこまでも罪つくりな楡崎と蒼の同居生活は義務的で、二人はまるで憎しみあっているかのようにも見えるのに…。
少しずつ二人の関係性が見えてくると、無邪気な頃の蒼の思いが、変化を遂げながらも時空を超えて相手と一つに繋がったと感じた瞬間、切なさが溢れてきます。もう、時差でキュンキュンさせられてしまうなんて、久しぶりでした。
画家、その娘と息子、画家の腹違いの弟。画家の友人で美術評論家とその甥。このお話には登場人物が多く、人間関係が錯綜しています。彼らを惑わしていく楡崎圭吾という男が選んだ最後とは?一気に読むと、ハマればかなり作品の世界に引きこまれること間違いなし!電子だとページ数が目測できなくて、二度目なのに読み終えるとかなり時間が経っていたのでびっくりしました。
作者のまろやかな文章が好きなのですが、今回は珍しく硬い箇所がところどころに感じられて、ゆっくりと噛み砕きながら読み直していたからでしょうか。それだけ力作だったからなんだろうなぁ、と思います。
冒頭の星空の描写から、最後の一行にたどり着いて物語が終わった時、胸が震えました。
こういうお話にエロスを見出すタイプです笑
結局の所、この2段組の長い物語、思わせぶりにいろいろなキャラが登場したり、因縁の事件とかあったりしたようでも、
圭吾と蒼の二人が、
お互いに運命の相手として出会ってしまって、
お互いにそれを認め合った。
それに尽きるお話。
まあ、ラブストーリーは総てそれだけ、そこへ行き着くためだけのお話なんだけどね。
それにしても、結末の圭吾と蒼の二人は、あまりにも無傷すぎて、
なんの覚悟もなく、ただ好奇心で蒼に近づいちゃった冨田は、まあ、自業自得としても、
これで、これから二人は末永く幸せに暮らす、で、いいのか?って
まあ、杉原さんのジレジレハラハラは好物なので、とっても楽しくは読んだんだけどね、
最後、なんでも死で昇華しすぎじゃないかって、ちょっと思った。
星空をイメージして作られたというこの作品は、その意図が確かに伝わったのではないだろうか。
元々、この作家さんには映像的、色や風景を連想させる文章もさることながら、登場人物自体がそのイメージを持って存在するので見えやすい。
ただ、今回「星空」というイメージには、主人公の一人である圭吾はどこまでも吸い込まれそうな深い夜空を、星空というには余りに暗い、どちらかというと暗闇を連想させ、
むしろ、蒼のほうが真っ直ぐに一生懸命輝いている星をイメージさせる。
まだ星になれない恒星が、小さくても輝く星にあこがれるように、圭吾は蒼に惹かれていたのではないか?
と、全てを読み終わった時に感じたのでした。
この冒頭に冨田というフリージャーナリストが登場します。
思わず彼が主人公で、ひょっとして彼が蒼を奪っていく役割になるのだろうか?という予想をしましたが、それは見事に裏切られました。
また、圭吾と蒼の関係においても、倦怠期カプのような雰囲気がまん延して、一体この物語の終着がどこにあるのか、全てが明らかになる終盤まで辛抱強く、のらりくらりする圭吾に付き合わなくてはならないのです(苦笑w)
しかし、ダラダラと展開されるわけではなく、ヒントが落ちているのを、読者は読み進める中で、それを回収していく作業が必要になってくるのですね。
作家さんとの、登場人物達との、我慢比べ大会です!さながら・・・
この物語の中で一番の曲者は圭吾。
蒼は、そんな圭吾を手放したくなくて引きとめているようでいて、本当は離れがたく思っているのは圭吾ということ。
富田が現れて、彼等の過去を探りだしたことで、初めて見せる蒼への執着と情熱。
それまで、そんな熱も見せなかったのに、離れなかった二人。
圭吾を引きとめる蒼の気持ちに、色々な家族のしがらみ以外に”愛”以外一体何が存在するんだろうか?
人間的に正体を見せないのは圭吾ですが、愛という点では蒼のほうがわかりにくいかもしれません。
単なる雨降って地固まる話ではありませんでした。
色々なものを背負ってしまった二人の再出発のお話になっていたのだな、と思うのでした。
読んでいる最中は、じつに温度が低く、何度も投げ出しそうになったのですが、読み終わるとじわじわ~と押し寄せてくるものがあるのです。
それがこの杉生作品の良いところなんでしょうね。
主要登場人物は、楡崎圭吾、早坂蒼、富田康之の3人。
う~ん、しかし、誰が主役だったの?というくらい散漫な印象でした。
ドロドロな家族設定や閉じられた世界の閉塞感はあるのですが、それぞれの執着心がなんか甘い(ラブラブという意味ではありません)過去の事件も最後にとってつけた感ありでした。
いっそ彼が殺人犯でそれでも・・・という刹那的な話でも良かったような気がします。
作者が悪者になりきれなかったというところでしょうか?
カテゴリー的に仕方ないかなぁ・・・とは思うのですが、何から何まで中途半端な印象が残りました。