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yoru ni kaoru junpaku no hana
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
とても静かな、しっとりした雰囲気で進むストーリーです。
いやもう、すれ違ってすれ違って『どっかで言葉にしてれば即解決だったんじゃないのか!』と言っちゃあオシマイなんですけどね。でもそれがさほど苛立たないんですよ。
私は『言葉が足りない』(特にダメ男)攻はすっげーキライなんですが、この宏晃(攻)はなんというかヘタレすぎて、しょ~がないなと思えましたね。
でも『いい加減にしろ!』とは言いたくなったけど。
たぶん、言葉は絶対的に足りなくても傲慢で自分勝手じゃなかったからでしょう。暴走しかけながらも、ちゃんと一葉(受)を思っているところでセーフでした。
これ『年の差(年上攻)』しかも15歳差なんですが、作中しつこく『15歳差』を強調されるわりに『年の差もの』のよさはあまり感じませんでした。宏晃に大人の包容力がなさ過ぎて。
『年の差』大好きなので、そこが堪能できなかったのはちょっと残念です。
一葉は『ザ・健気受(しかも不憫)』と、タイプで言えば私の好みのド真ん中です。ちょっと箱入り過ぎではありますが可愛かった。
たぶん、宏晃より一葉の方が好みが分かれそうなキャラクターなんでしょうね。私は好きなんですが。
ただ、宏晃とヤクザの息子・耕嗣が、宏晃の父・康宏のことを『一葉を愛人として囲っていた(体の関係があった)』と誤解をしていたことに関しては、ちょっとどうなんだという感じでした。
一葉が『父のように思う』康宏に甘える姿を邪な目で見てしまうのは、やっぱり宏晃に後ろめたい気持ちがあったからでしょうが、自分の父親がそういうことをするような人間かどうかわからないっていうのがねぇ。素で考えれば『親子』でしょう。
いやあ、康宏はイイ男だったよ。格好良かった。オヤジ趣味はまったくない私でもそう思いました。
切なさも不幸・不憫な健気受も私の好みです。真崎さんのこういう系統は、正直いろいろ甘い(ぬるい)な~とは思うんですが、その分安心して読めます。
トータルでは好きですね。
一葉は、父親に借金のカタにやくざに売り飛ばされかけたところを、鳴宮医院に引き取られた。
鳴宮医院は、養父・康宏とその息子・宏晃の二人暮らしで、恵まれない暮らしをしてきた一葉を大切に慈しまれて育った。
実は鳴宮医院は、昔からの知り合いであるというヤクザのまともな病院へは連れて行けないような病気を実はこっそり見ていた。
そんなある日、いつものように組員から呼び出されて一葉を連れて往診に向かった帰り、いきなり敵対する組のものに銃撃され、足がすくんで動けなかった一葉をかばうようにして康宏が撃たれてしまう。
そしてそのまま康宏は帰らぬ人となってしまうが、一葉はそのことを自分のせいだと悔いていた。
その後、朦朧とした意識の中、次に一葉が目を醒ましたのは、康宏の葬儀のときであった。
そして、それから毎晩、深夜まで外出を繰り返す宏晃に一葉は、自分のせいだと落ち込むけれど、ある日、帰って来た宏晃に声をかけようと寝室を訪ねると、宏晃にそのまま押し倒されてしまう。
どうやら宏晃は一葉が康宏に抱かれていたと勘違いしていたのだった。
幼い頃の後遺症で、いまだ口下手な一葉はその間違いを訂正することもできず、また、宏晃の行為に応えることが「償い」なんだと思ったことで、一葉はその行為を受け入れられてしまう。
以来、昼は診療所で宏晃を手伝い、夜は週末に宏晃に抱かれる日々。
実は、宏晃に対してほのかな思いを抱いていた一葉は、宏晃を失うことを恐れて、恋心を押し殺して関係を続けていくが――
という話でした。
すれ違いがすれ違いを呼ぶ話。
宏晃は、一葉が康宏のことを好きで、身体の関係を持っているんだと考えていて。
一葉は、宏晃がこんなことをしてくるのは康宏のことで一葉に嫌がらせをしたいからだ。
と考えている。
どっちかが素直に自分の気持ちを伝えれば、このすれ違いは起こることがなかったのに、残念ながら起こってしまったすれ違い。
このまま平行線をたどっていた二人がどうやってハッピーエンドになったのか、といえば。
例の組の息子の余計な入れ知恵。
彼も彼なりに責任を感じていて、宏晃に普通に幸せになってほしいと考えて、一葉に宏晃のところから出て行ってほしいと伝えて、一葉が結局、それを受け入れて家を出て行ってしまったことによって二人の関係が動いてハッピーエンド。
実は、宏晃は一葉の中に指を入れてはいたけれども、一葉が家を出て行くきっかけになった出来事さえなければ、実は自分自身を入れてもいなかった、というヘタレ具合。
そんなヘタレな勘違い攻めと控えめな従順受けの話がお好きな方はどうぞ!
拾われッ子が成長したら、あんまりきれいになっちゃったので、お兄ちゃんがうっかり血迷っちゃうお話。
うーーん
ネグレクトは現代的なんだけど、、、
戸籍無しの子供を、そのまま外に出さずに育てるって、、、
それが一葉本人は無自覚な、健気儚げ系属性の魔性の受けで、
世間の男の魔手から一葉を保護する為に外には出さずにいたはずが、
保護者1の父親・康宏が死んだ後、
保護者2の息子・宏晃が、父親と一葉の間に関係があったと思いこんだあげく、
嫉妬に追われるまま一葉を陵辱。
一葉は一葉で、宏晃が好きなものだから、何をされても拒めず、
宏晃の邪魔になるならと、勝手に家を出てみたりと、、
切ない系山盛り、てんこ盛り
小説としてはよくできているんだけど、ここまでされると鼻白むというか、現実感なさ過ぎ。
現実感、ないならないで、時代設定も現実感が無ければもっと浸れたと思うのに、半端に現代っぽい設定なので、ツッコミ所満載になってしまうというか、、
一応評価は中立だけど、同じ作品でも、読んだときのタイミングというか、前後に読んだりしていた他の作品との雰囲気の関係性とかで、随分印象が違っちゃうことはあるので、たまたま今の自分には、この作品を読むタイミングが合っていなかったんだと思う。
05年ノベルス版に同人作品と書き下ろしを1編入れた新装文庫版です。
ネグレクトで戸籍さえない少年が、偶然出会った医者に引き取られ育って行ったお話は、その境遇に、静かに実に日本的に進む言葉にしないすれ違いの愛に、時として涙腺を刺激されます。
父親の借金のカタにヤクザに売られそうになったところを、そこへ出入りしている開業医の鳴宮康宏に引き取られた一葉。
そのヤクザの組の揉め事に巻き込まれ康宏が亡くなってしまった事から、一葉と、康宏の一人息子・宏晃との関係が変わってきます。
今まで愛情を受けて育ってこなかった一葉が康宏に懐いていた姿が、皆に康宏とデキていたと勘違いされたことが、
一葉が箱入りで、色々な世俗の物事を知らず無防備でいること、それが周囲に欲望を掻き立てさせるようなのです。
息子の宏晃でさえ、そんな勘違いをした為、一葉を抱いてしまうことになる。
宏晃の肝心の部分でヘタレである部分、それが不器用な言葉の足りなさを招いているのは一目瞭然です。
『秘密は夜に隠して』でそれがわかるようになっています。
一葉は、箱入りですから康宏に対する気持ち、宏晃に対する気持ちの違いに気が付いているものの、それが一体何なのか解らないでいる。
ただ、康宏の遺言をかたくなに守ろうとするだけの態度でないことは確かなのですが・・・
そんな不器用同士だけに、すれ違いが実に切なさを呼ぶのですね。
ただ、ただ静かに物語は流れていきます。
そして、一葉の健気さと、余りの世俗に対しての弱さに胸を打たれるのです。
ここで、一葉に手を出そうとしたヤクザの秀治という男・・・一体彼はどういう人なんでしょう?
ものすごく気になります!
まもなく続編の『夜に舞う薄紅の花』も出るそうで、そこで色々わかってくるのでしょうかね?
ひたすら、静かに甘くて優しいお話でした。