B.L.T (新装版)

B.L.T (新装版)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神23
  • 萌×218
  • 萌13
  • 中立2
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
11
得点
228
評価数
57
平均
4.1 / 5
神率
40.4%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
元ハルヒラ 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
価格
¥1,050(税抜)  
ISBN
9784862638861

あらすじ

家から一番近いという理由だけで、書店のバイト面接に行った北澤眞人。そこで店長の大宮雄介と再会する。5年前の夏、出会って恋になる前に終わってしまった想い。その想い出が鮮やかに蘇るが・・・。
商業誌未収録作と新たに書き下ろしを加えてのファン待望の新装版登場!
(出版社より)

表題作B.L.T (新装版)

33歳,書店の店長
19歳,アルバイトの大学生

その他の収録作品

  • ライン
  • dessert box
  • dessert box plus
  • あとがき

レビュー投稿数11

サンドイッチ食べたくなる

攻めが14歳年上の元痴漢男(笑)って凄いですよね。
助けた男性とかではないですから。
BLらしいご都合惹かれはなく、弱みをちらつかせ金だったり居場所だったり都合よく攻めを使い始める受けがいます。

どう考えても問題しかなさそうな組み合わせなのですが、目が離せないんですよね。
相手の容姿とかスペックとかそこまで重視されず、惚れてしまった心には自分自身ですら打ち負かせないどうしようもない感が見え隠れしているところが好きです。
木原先生の作品では惚れた相手が完璧には程遠くても好きで好きでたまらずもがく男たちがたくさん見れるので病み付きになります。

今回も最高の男に出会えました。大宮の元恋人、千博です。
もう好きしかない。
ずっとずっと彼のターンでいてほしかった(笑)
その後のスピンオフ切望しちゃうくらい。

我儘で自分勝手で自分の浮気はオールオッケーでも相手には絶対許さない。
冷めた空気が流れ始めていたのに、大宮が別れを切り出してからもう大変。
病的な執着、乱れようにドン引きしつつも美しい男の脆い部分を見るのが大好きな私はゾクゾクきてしまいました。
千博主人公の作品だったらきっと神評価にしてた(笑)

お話としてもメイン二人の出会いから落ち着くところまでたっぷりじっくり読めるので大満足です!!

0

歳の差も運命も破滅的な恋も

「僕はあの子以外の誰にもそんな、気持ちを壊されそうになるほど強い感情を持ったことはない。あの子だったら、あの子とだったら……もうどうなってもいいと……」
「わがままばかりで、いい加減で、口が悪い乱暴者で、人を脅すような性悪で……それでも君を愛してる。大事な仕事を放り出しても、首になっても、何を引き換えにしても欲しいと思うほど……」

歳の差のお話だと、年若い方がおぼこかったり、美しくてそっけなかったり、歳上が翻弄されたりするのがやはり典型的な面白い部分だと思いますが、この作品はそれ以上に運命的で特別でその人しか考えられない夢中さがひたすら甘くて可愛かったです。

歳下の北澤は中学生の時に痴漢に会い、犯人の大宮を突き止めます。お金をせびり、大宮の好意を利用して塾通いをサボる際の居場所を確保します。まず痴漢をしてしまった大宮には強い嫌悪感を抱く(「箱の中」を先に読めば、特に)のですが、それでもこの北澤の悪どいせびりはやり過ぎ感否めません。
そして北澤を嫌な奴と判断しそうなところで、親が離婚し自分が要らない存在なのだと聞かされ、彼に少し同情的になるのです。親に必要とされない寂しい心を埋める大宮の存在を、自分の好きなようにあしらいつつ(生臭いのは嫌いだからキスだけ)、好きなように愛を確認し、手離せない中学生の北澤が可愛かった。

大宮は堅実で地味な印象な男ですが、北澤に振り回され職を無くし宮崎まで車で走らされ、結局振られて(と思った)、5年後に突然再会し思いが通じればとにかく夢中で突っ走ります。コンビニであからさまなお泊りセットを店員の目も憚らず買い、彼のアパートに走るのがとにかく可愛い。その様がとにかく羨ましいくらいで。
この作品はとにかく台詞がどれも素晴らしいのですが、上記の台詞にあるように自分を破滅させる程の恋の相手に出会うって、なんだか久々に羨ましく感じちゃいました。

この作品では登場人物が一人として完璧な可哀想で同情を買う存在にならないよう、多少の残酷さも含めて配慮されています。
大宮と同棲していた千博は浮気性で奔放、高慢な男で、大宮が北澤と再会し別れる気でいると知ると自暴自棄になり、脅迫を繰り返し自殺まで図ります。もし彼がここまで激しい存在にならなければ、付き合っている人が運命の恋に出逢ってしまい別れなければいけない可哀想な存在になると思います。しかし千博にもセーフティネット(というとひどいですが)高野が張られていて良かった。
私はデザイナーも書店員もほんの少し関わったことがあるので、デザイナーの孤独で誇りある仕事も、書店員の社会性ある仕事どちらも理解できます。なので千博が大宮の仕事を馬鹿にするのは一番許せなかったです。大宮がレジでカバー掛けるのを心の中で面倒臭いと思っているのはあるあるで笑いました(笑)

小話は本当に甘々でいくらでも読みたかったです。恋人がいることや行為に慣れない北澤も可愛いし、丁寧で美しい挿絵の体格差も最高でした。
今まで読んできた木原さんの作品で一番甘かったです。また何度も何度も読み返し妄想したくなる、すごく好きな作品です。

2

B.L.Tと恋愛と

タイトルのB.L.Tは、ベーコン、レタス、トマト、マヨネーズ、パンというシンプルな材料で作られるサンドイッチのこと。ベーコンの質や焼き加減、レタスの種類、トマトの収穫時期、マヨネーズの美味しさ、パンの種類やトーストの有無等で、無限のバリエーションがあるのだそうです。
なんだか恋愛と似ているような…。恋愛は心と体と言葉があればできるシンプルな行為ですが、B.L.Tのように、ひとりひとりの恋愛観は実に様々な気がします。どんな恋愛が好きか、どんなセックスが好きか、どんな話をしたいか。タイトルの意味がすごく気になるたちなので、つい物語と結びつけて考えてしまいます。

表題作「B.L.T」のメインの登場人物は、書店の店長・大宮(ゲイ)と恋人の千博(ゲイ)、千博の前の恋人・高野(ゲイ)、大学生の北澤(ノンケ)。大宮は、5年前、中学生だった北澤に恋して、電車内で痴漢をしてしまい、それを盾に北澤に振り回され、挙句に失恋した過去がありました。
大宮は、ちょっとズルくて気が弱いけれど真面目。恋愛に関しては一途で、優しく触れ合うセックスが好き。
千博はプライドが高く我儘で自己中心的な美人。大切なのは容姿とセンスとセックスの上手さ。
高野はカフェを経営するスタイリッシュな40代。千博の良き理解者。昔は他人の恋人をとるのが好きだった。
北澤は中学生の時に親が離婚したため、セックスに忌避感があり。口が悪いけれど、明るく素直。
どう見ても相性がいいのは、大宮と北澤、千博と高野の組み合わせなのですが、ままなりません。北澤に振られた数年後、大宮は北澤の面影を千博に見て、同棲します。その恋愛にも疲れた頃、北澤と再会して、やがて再び北澤を好きになりますが、千博に阻まれて。4人の人柄と恋愛観の違いがとても興味深く、恋愛の甘く、切なく、時として苦く残酷な感情に、圧倒されました。

大宮が初めて北澤を求めるときの穏やかな言葉遣いと優しい行為に、彼の人柄が滲んでいて。そんな大宮だから、セックスに忌避感のあった北澤も体を預けることができたのでしょうね。回数を重ねるうちに、無邪気に素直に求めてくる北澤も可愛くて。大宮と北澤はセックスの前後も最中もよく喋るのですが、互いに心を開いている感じがして、その甘く楽しい雰囲気がいいなあと思いました。

対照的なのが、千博。乱暴なセックスが好きで浮気を繰り返していたくせに、大宮が別れたいと言うと、狂ったように大宮に執着し、自殺未遂を繰り返します。追いつめられた大宮は、北澤に別れ切れない恋人がいることを話せないまま、北澤と別れることを選んでしまいます。大宮が千博の恋人を演じ続ける虚しさを高野に吐露する場面が、この物語の一番の山場だと思いました。北澤との最初の出会いと再会を運命だと感じたこと、気持ちが壊れそうなほどの愛しさ、千博を殺したくなくて北澤と別れた自分の弱さ、北澤を失った辛さ…。不器用な男の涙に、胸が痛いほど、切なくなりました。

そんな大宮を助けたのが高野。大宮の辛い気持ちを聞いて心が動かされたのでしょう。北澤に大宮の事情を話し、自分が千博を引き受けるから待ってやってほしいと言い、そのおかげで北澤は大宮の元に帰ってきます。実は、高野のこのアシストに、本作品中で一番感動しました。いい男だなあと思いました。後日談の短編で、高野と千博が上手くいきそうな気配は、ずっと待っていた高野へのご褒美でしょうか。
B.L.T、自分で作って食べてみたのですが、人に食べさせるレベルに作るのは、結構難しいと感じました。材料がシンプルな料理なので、材料の扱いや仕上げにコツがいるのかもしれません。美味しいB.L.Tを作る高野は、きっと4人の中で一番人の気持ちに敏い人だった気がします。

一冊の作品の中に、大宮、北澤、千博、高野、それぞれの想いがあふれていて、胸がいっぱいになりました。

6

「どうしてそんなことをしたのか解らない」ってのが恋の本質なのかも

電子書籍で読了。挿絵有り(旧版の方のイラストも見たいなぁ)。

「木原作品にしては痛くない」という噂を聞いて気軽に手に取ったのですが、痛いよ。私がもう若くないからなのでしょうか?『ライン』と『B.L.T』の二作はかなりきつかった。同人誌と書き下ろし分が幸せ・あまあまなのはバランスを取ってなんじゃないかと。

『以前から気になっていた中学生に痴漢をしちゃう20代後半サラリーマン』と『それを逆手にとって欲しいものをねだる行き場のない中学生』の出会いって……一歩間違えたらコメディかドロドロ犯罪ものになっちゃうのに、木原マジックは『出会う度に心を奪われてしまう男』と『普段は意識していない寂しさを抱え込んだ子ども』の切ない恋のお話にしちゃうんです。で、読んだ私は「恋って何なんだろう?」と何度も考えこむことになります。

過去にこっぴどく振られたから近寄らない様にしていてもどうしても惹かれてしまう気持ち、好きなのか曖昧だけれどずっと自分を想っていて欲しいと願う気持ち、相手の心がもう自分から離れてしまっていると解っていても別れることが出来ない気持ち、自分以外の人に口説かれて心が動いた恋人を自由にさせてしまう気持ちetc.etc.主要な登場人物四人の心の動きは全部違うけれど、全部恋のなせる技だ。組み合わせひとつで、途方もなく幸せになることも出来るし悲劇に突進していくことにもなるのですねぇ。
と、またしても木原作品で考え込んでしまうのでした。やっぱり木原さんは巨匠だなぁ。

2

そのままベーコン・レタス・トマトサンド

タイトルだけ見るとどんな感じなのか分かりませんでしたが、歳の差ラブのステキな話でした。
攻めの大宮と受けの北澤は14歳差で、大宮が中学生の北澤に痴漢をしたのが二人の出会いです。時にドロドロでいて微笑ましいラブが「ライン」から「dessert box plus」の4編に渡り描かれています。
中学生に振り回される大宮と、不安定な中学生からいい感じの大人になっていく北澤と、美形なのに酷い役回りの千博と、マスター。登場人物全員に私は萌えました。
これまで、攻めは年下のが好みでしたが改めてオーソドックス(?)な年上もいい、と再認識。
大宮と千博のエッチシーンはたまりません!「君は僕以外、一生知らなくていい」とか、コンドーム初体験の酸っぱい北澤とか、とても心にきました。
木原先生の作品の中では、あまり知られていないのかもしれませんが、大好きな一冊になりましたよ。
そして、「BLT」とはそのまんまの意味、ベーコン・レタス・トマトサンドでした。

2

前半で挫折しないで欲しい

わたしの木原さんデビュー作品です。
みなさまが面白いとおっしゃっていましたので、手を出してみました。
初なので、比較的痛さのなさそうなこちらをチョイス。
こちらは新装版ということで、同人誌からと書き下ろしが加えられた厚みのある作品です。

受けの北澤は、大学生。
攻めの大宮は33歳の書店店長。
かなりの歳の差カップルです。

中学時代、自分を痴漢した大宮を脅迫し、食事を奢らせ、欲しい物を買わせ、しまいには家にまで転がり込んでいた北澤。
そのせいかなあ、あまり被害者の様相がなかったです。
痴漢はもちろん言い逃れできないけど、北澤の方もかなりのものだなと。
でも、まあ、子供って意外に残酷で、自己の欲望に流されやすいからなあとも思うんですけどね。
この間のことは本編でなく、始めに収録されている『ライン』でえがかれます。

子供特有残酷さに最後までつきあっていた結果会社をクビになり、今は書店の店長をしている大宮。
そんな大宮の書店へ大学生となった北澤が、偶然バイト面接にきたことで五年ぶりに再会することになります。
わたしは大宮との方が歳が近いせいか、大人のずるい部分は比較的理解できます。
それでも中学生に恋人になって欲しいと言って、それを振られたと未だに恨むのは筋違いかなと思いますが(苦笑
魅力があるかと言われれば『わからん!』と答えたくなる攻めキャラですが、それがかえって後半の北澤を引き立ててました。

大学生となっても、北澤の性格はあまり変わっていないように見えました。
読み始めは。
同人誌よりの再録である『ライン』でのあまりの傍若無人ぶりに、北澤のイメージが悪くなっていたのかもしれません。
これがもし、『B.L.T』本編だけだったら素直に北澤に対して感動できたのにな。
いっそうのこと『ライン』は読まなきゃ良かったかと思ったくらい、本編の北澤は可愛かったです。
初めてしちゃった辺りからは乙女のようでしたし、大宮を最後許すさまも男前でした。
完全に大人と子供が逆転してしまっています。
ただ、ブツっと切られた本編のラストはどうなの?という感じでした。
後ろに二本、その後のお話が入っていたから良かったですが。
そう考えると、やっぱりこの新装版の方を買って正解だったんですかね。
『ライン』で受けに嫌気が差してしまっても、読み進めることをお勧めしたいです。

2

元彼・千博に助演男優賞!

この作品のテーマは ずばり!「人間の狡さ」のみ。
最後の最後で題名の『B.L.T』の意味が分かるというオチが付いてます。
木原音瀬しか書けない作品の醍醐味が思う存分味わえて本当に面白かったです。

私が思わずうまいなと唸った箇所は 元彼・千博が主人公の大宮(攻め)をめちゃくちゃに精神的に追い詰めるところです。「人間の狡さ」丸出しなのです。
心の闇を大宮にぶちまける千博を 心の底から憎いと思わせてしまう凄さ。
主人公の二人よりも千博は目立っていました。
脇役の持って行き方がずば抜けて素晴らしかったです。
木原先生は人間観察が飛びぬけて上手い作家だと改めて思いました。
助演男優賞は『千博』に決定です。

5

何度、読み返してもいい!

幾度となく読み返しても、時間を忘れ、読み終わった後もそのストーリーの中から自分を引き抜いてこれず、やっぱりいい!と思ってしまう作品は【神】なのではということで、この評価になりました。

この話の何がいいって、まずは大宮ですよね。

他の方もレビューで言っておられるように、自分の欲望に負けて中学生に痴漢するは、中学生の眞人に脅されいいように使われているは、そのため仕事も棒にするし、中学生の眞人に手を出そうとするし、その後の話では二股かける優柔不断男だし、挙げればキリが無いのですが、そんな大宮が実に人間くさくていいのです。
人間くさいも人間くさい。
見栄も張れば理不尽な状況でもどうすることも出来ず流されたりする。
しかし彼なりに頑張り、仕事に励み、まわりの助けをかりながら良い方向へと進もうとする姿は、木原さん魅せるなあ~、と唸ってしまいました。

眞人の心理描写、成長も良かった~。
難しい思春期、両親の不仲、離婚に対する眞人の心の揺れが何とも読ませ、彼の人間形成に大きく影響していて、そんな眞人と大宮がする恋愛模様に私はこれ以上ないくらい魅せられてしまったのでした。

もう、あの情緒不安定な思春期に受けた影響ってすごく深くて重いものですよね。
何度離れても眞人は大宮を好きになるんだろうなあ。
後悔したくない、だから大宮を取り戻しに行くと決めた眞人は本当に男らしい。

大宮も何度も眞人に傷つけられてもやっぱり好きになってしまう、もう認めよう、って堪らないですよ!

コンドームの使い方を知りたいとする眞人に、他に好きな人が出来たんじゃないかと勘繰る大宮もよかった!
「君に振られたら、僕は間違いなくストーカーだ」
って、その執着大好きですよ~。

同人誌にあったこの話の後日談も読めて、すっごい満足でした。

7

人物像を踏まえたストーリー展開の上手さ

萌萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
喉から手どころか触手が出そうなほど読みたかったその後の同人誌&書き下ろし収録と聞き付け小躍り。いやもう万歳三唱。
ありがとう木原さん、ありがとうリブレさん。でも1000円越えって高いっす。そんなビンボー人のボヤキは置いといて。

中学生の受けに痴漢しちゃう攻め、という口が開いちゃうこの設定ながら(いやだからこそ?)木原さんがいかに過程を重要視して構成しているのかを改めて実感させられました。
基本的にBLは萌えの副産物なので、こういうシュチュエーションが書きたいんだーっていう作者のシュチュ萌えありきで話作りをされている印象を受けるんですが(そういうのも好き)、木原作品を読んだ時に感じるのは、まず人物造形ありきってこと。
“こんな設定の受けと攻めがこんな出会い方をして、二人がくっつくにはどんな過程が必要なのか”っていうのを念頭に置いて書かれている感触を、読んでいるとビシバシ感じます。

件の痴漢攻め。彼の名前は大宮雄介、28歳。痴漢男ですが変態さんってワケでもなく、中学生相手に本気で恋をするダメ大人です。
優しいっちゃー優しいけど、好きな子相手に思わず痴漢してしまうようなアホな恋愛脳の持ち主。そしてバレた途端に全力で逃走しちゃうような狡い面もあり、そのくせ財布を落してしまうような間の悪さというか要領の悪い人でもある。
恋するへたれ。終始、彼はそんな感じ。

そして痴漢をされた眞人は、当時14歳の中学生。
拾った財布から連絡先を突き止め、いい暇つぶし&八つ当たりの相手を見つけたとばかりに脅してこづかいをもぎ取り、ご飯をたかって、挙げ句には家に入り浸り好き放題のわがままっぷり。
大宮の中に自分への好意を敏感に嗅ぎ取った眞人は、子供であることを武器に28歳の大宮を振り回し、「愛情に飢えている14歳」というカードでむしろ子供の眞人こそが強者の立場を手に入れているのが実に面白いです。
といっても1話目だけですが。
このお話も例に漏れず、ラブのパワーバランスの逆転というか、優位に立っていた側が足元を掬われるハメになるわけですが、その辺がファンにとっては旨味でしょう。

ということで、2話目は大宮のターン。
彼のカードは「要領が悪い男」。
一度は途切れてしまった二人、しかし5年後、大宮は眞人と再会します。親の愛を求める子供ではなく、今度こそ対等な恋愛関係を築ける可能性がある相手として。
ここからがまた、読ませる読ませる。

木原作品の恐ろしいところは、受けだろうが攻めだろうが年齢や社会的地位や恋愛経験に関係なく、恋という制御不能で不合理な事象の前に、鼻面を引き回されるところではないでしょうか。
今回は甘めのテイストですが、そこはしっかり押さえてあります。
余裕なんてものは身ぐるみ剥がされ、恋する一人の人間としてのたうちまわることになる平等さ、いや理不尽さ?
そこにたまらないほどの魅力を感じるのでありました。

そうそう、再読してもう一つ分かったこと。
大宮は面食いの上に下僕体質なんだな。笑
それにしてもエッチシーンでの眞人の可愛さが半端ねぇっす…ハァハァ。

6

こんなお話だったのか、、

絶版本の新装刊シリーズの1冊。

実はこの本、本編は読んだことなくて、同人誌収録のdessert boxだけが既読でした。
その時の感想が、
「珍しく普通にラブラブなお話やなぁ。同人誌の後日談やと商業的にオールNGか、普通に砂吐き甘か、二極化すんねんなぁ」

で、この本編。
新書の割に、厚さの割に、ページあたりの文字数にゆとりがあるのか、
はたまた、お話自体が、比較的ライト(あくまで木原比ですが)だからか、
サクサクッと読めちゃいました。

基本的には、北澤が刷り込みのように純愛を貫いちゃうお話といったら良いんでしょうか。
大宮サイド的には木原風スパイスのきいたアレコレが展開していますが、北澤サイド的には、大宮の事情は全くあずかり知らず、単に、中学生の頃自分を愛して、受け入れてくれた人との恋愛が成就したお話ですもの。

そして、この大宮の二面性というか、その辺が、癖になる木原節、って感じなのかな。

この本の挿絵、私も大学生北澤にはちょっと違和感あった。
大宮と、体格差ありすぎじゃね?

1

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