条件付き送料無料あり!アニメイト特典付き商品も多数取扱中♪
旧藩主の子孫を、当主を「殿さん」、その息子を「若様」と呼び慕い敬うのが当然の旧態依然とした田舎町が舞台。
そこへ、下品でいい加減で口の利き方を知らない住所不定無職の男が東京からやってきたことから起こる騒動が描かれています。
BLなので、それなりにほんわかしたLがあります。
途中まで、BLになり得るのかな?とぼんやり読んでいたのですが、初恋ものでした。可愛いお話でした。(Hが無くても良かったかも)
前述のとおり、設定が少し変わっていて面白く、登場人物にもちょっと癖がありつつも情に厚かったり懐深かったりで、恋愛に舵を切られなかったとしても楽しめたと思います。
また、番外SSは本編よりも可愛さが増していて、良かったです。
正反対の生い立ちの双方が、お互い影響を受けるなどして、少しずつ変わっていくのが見て取れます。
幼馴染み3人についても、本編ではメインではないためあっさり目でしたが、巻末のSSで関係性がよくわかり、「off you go」の3人を想起しました。(あんなに複雑で濃厚じゃないですが)
ただ、一穂先生の作品で特に以前のものは、誰の科白か分からないことが多々有り(と私は思っています)、こちらの本も初版が2010年でご多分に漏れずというところでした。ほかの本に比べると頻度は少な目ですが、何回か前に戻って確かめて、諦めたりもしました。
数行の空きの後に視点が変わるのも読みづらく、書き癖なんだろうなと割り切っています。
風来坊で恐いものもない、媚を売ることもしない、相手によって態度を変えることもしない、だけど周りに人がより付くタイプの人間。来杉隼人は、知人にくっついて東北の田舎にやってきた。旧家の若様である野衣湊と出会い。。。
中盤まで、来杉の人としてのヒドさに、グッタリしながら読みました。ヒドすぎる!
田舎の村では、よそ者と言うだけでも目立つのに、連れてきた慎が可哀相になるほど、他者に対しての態度が。。。
そんな中、若様と言われてきた湊にとっては来杉の態度は新鮮だったようです。
ここから、どう恋心へと変わるのか、すごくワクワクしました。
年齢差もあるし、土地柄的なものもあるし、何と言っても来杉の性格から、恋に落ちるなんて考えられない!
その感情の変化を楽しむ作品でした。
甘々ではないけれど、ほっこりする感覚。
私的には、湊の家族が好き。あのお父さんとお母さんがこの作品の癒やしです。
1ページ目から衝撃でした。
一穂先生が、ワルを…書いている…!
先生の作品はかれこれ15冊ほど読みました。完全に作家追いしています。
ほぼ自身の為の備忘録ですので、長文・ネタバレにはご注意下さい。
発売順ではなく、読みたいものから手にしていたので、『おとぎ話のゆくえ』に辿り着くまで時間がかかってしまいました。
また、一穂先生の作品でなければ絶対に手に取らない表紙である、とも思います。私見ですがカラーリングやキャラクターの表情が、人を寄せ付けてやまない表紙とは、掛け離れていると感じたからです。
難しい所ではありますが、この色でこの構図、この表情には、読後やっと納得できるというか、受け取ってから考えなさいという、試練めいたものを感じてしまいました。
恋愛関係に発展するのは、対極にいる2人。
冒頭から主人公・隼人がかますかます。一穂先生の持つ毒が容赦なく(イエスノーの計のような愛嬌を持たず)主人公から吐き出されていく事、主人公が紛う事なきクズとして描かれている事に驚きました。『おとぎ話のゆくえ』は初期作に当たりますが、先生のキャラクターは清廉性や、確固たる主義、美学を持っている印象が強く『先生もそういう人が好き or 先生もそういう人』なのかなと勝手に思っていたので、あえてそこを曲げ(?)"クズで中身空っぽのどうしようもない男"を書ききったのが、普通に天才だと思いました。文才だけでは出来ない事をやってのけてしまう。しかも兼業で。改めて恐れ入ります…
話が逸れましたが、相手の少年・湊(あつむ)の方は、清廉潔白かつ確固たる主義を持った、この世の光を詰め込んだような人物でした。もはや人間じゃないレベルで清い彼を見ているのは、存外幸せでした。先生がキャラに与えるあたたかさや優しさには、欺瞞めいた美しさがありません。こんな聖人のような人は実際にいなくても、実際に人が持っている柔らかいものを繋ぎ合わせて作られていて、きちんとリアリティと重みを持って、存在しています。
また今作には、グレーゾーンに当たる人物も登場します。冒頭から名前付きで、一瞬この人が受けなのかなと思うほど物語に密接に絡んできます。当て馬なんかでは全然ないのですが、主要2人との絡み方や立ち位置が、他のBL小説ではなかなか見られない、独特な描かれ方でした。人物だけで千文字語れるほど面白すぎます。
作品の舞台は、因循姑息なド田舎、ときどき東京のアングラ闇社会。文章から受ける野山や川のイメージはとても爽やかで、心地が良いです。お仕事分野としては酒屋さんと、政治的なしがらみが少し出てきます。
肝となる設定に田舎に残る因習が出てきます。元藩主の一族・野衣家を地域人が奉るというものです。今もなお大切にされるだけの事を野衣家のご先祖様がされています。崇拝は決して悪ではないですが、その家の子を今も"若様、姫"と呼ぶなど、時代遅れで排他的な部分が強く、隼人はもちろん地域外の人間はややドライな目で見ています。
湊はよその地域の人には、若様と呼ばないでほしいと頼んでいましたが、地元の人には受け入れの姿勢を示し、立派な次期当主として振舞っていました。
そんな地にフラフラとやってきたシティボーイ、ワル代表・隼人。まあ好き放題します。
女で遊びまくり、初対面の人物に悪態をつきまくり、働かずに衣食住を得、地域の不文律はぶち破り、周りからどんなに白い目で見られようが隼人は隼人のままでいます。そんな隼人を湊は気にかけ、犬の散歩のバイトを依頼するのです。2人は徐々に惹かれ合います。何もかも正反対、交わるところが1つもない2人が、出会った瞬間から化学反応を起こすように、実はお互いを気にしていて、変化し合う描写が本当に秀逸でした。
文章なのに空気でわかる、この2人好き合うんだろうなと。
この感覚は非常に不思議でなりませんでした。
当然ですが、2人が恋愛関係に発展していくこと(そもそも友人関係にあることさえ)に賛成する人は1人もいませんでした。隼人は湊を守りたいと思うようになり、身を引きます。心が通い合う場面と離別の場面は近く、胸が締め付けられました。
また、隼人が湊にグワッと惹きつけられるキス未遂の場面はここ最近で1番ドキドキしました。
湊を好きになることに抗えなくなってしまった隼人。湊を本当の意味で傷付けたくないから、平気で別の傷付け方をする隼人。湊のために、頭を地面に擦り付けた隼人。空っぽのクズが愛を知って人の子になっていく、そう見えました。
少し疑問に思ったのは、その後の2人がトントンと上手くいってしまったこと。いやいや、思いは通じ合っても隼人はダメ人間で変わりないし、湊はまだ幼すぎるし互いの想いを叶えられるのはざっと10年後でしょうみたいな2人ですから。一穂先生のバッド・不明エンドは見たことがないし、レーベル的にも(?)そのような方針なのかな…と。尺の問題もあると思いますが、もう少し別の切り口で2人のその後を見たかった…‼︎と激しく思っております。めちゃくちゃ面白かったので…‼︎
隼人の言動が読み手を選ぶと思います。
一穂先生の作品は時たま、後引くほど突き刺さることがあります。『藍より甘く』という作品も、キャラクターの持つ主義にグサグサ来てしまい、面白かったけど素直に受け止められない、そんな感じでした。この作品は一穂先生のファンになってから、一穂先生のきつい部分にも耐性があれば楽しめる作品なのかもしれないと思いました。いずれにせよ、私にとっては神作品となりました。先生の過去作を探してらっしゃる方には、注意付きでおススメしたいと思います。
現世のロミジュリ的立場な二人の、ピュアなお話でした。
まず攻めの隼人が魅力的に書かれています。
口調は荒いし態度もでかいけど自分を持っていて飄々と生きている様に、お坊ちゃんの湊が惹かれる気持ちが分かります。
特に印象的だったのが、湊の姉が不良に絡まれてるのを助けるためにタバコの火を舌で消したシーン。
ぶっ飛んでて若干引いたけど、平気でこういうことやってのける所に何とも言えない魅力を感じてしまいました。
あと、湊の歯のブリッジを見て隼人が感情に任せてキスしそうになるシーンも良かった。
それまで、隼人の中に湊への恋心があるのかまだ微妙な段階に思えたのが、湊のそれを見て一気にブワッと感情が動いたのが伝わってきてとても萌えました。
あとは、満月の夜隼人が湊に別れを告げた直後の湊のモノローグ、
「目の前で、月が揺れた」ってすごく綺麗な文だなって思いました。
一穂さんの文章が美しいって言われてる理由がよく分かります。
剣道のシーンやエレベーターのシーンなど、名場面や名言がたくさんあって何度も読み返したくなる、まさにおとぎ話のようなお話でした。
ただ、視点がころころと変わるのでどっちに感情移入していいか分からず、落ち着かない感じも。
それぞれがどういう感情なのか逐一分かるのは良いんですが、一人の視点でもっとじっくり読んでみたかったです。
造り酒屋の息子、森山慎が家を出て七年後、東京で知り合った来杉隼人を連れて故郷に戻ってきた。このご時世、未だお殿様が御座す城下町。不躾で口の悪い隼人が、高校生の「若様」こと野衣湊(あつむ)になぜか気に入られ、飼い犬の散歩を頼まれる。
町の歴史。湊を取り囲む人々。湊の高潔さ、生真面目さ。そして隼人の孤独。読み進めるほどに魅了されました。やっぱ、すごいなぁと思ったのは、剣道のインターハイ決勝シーン。広い会場で、応援客が沢山いて、試合中の湊と隼人いる観客席は離れているのに、二人が精神的な部分で一瞬同化する。二人が通じ合っている証拠を示す、秀逸な描写だと思いました。
残念だったのは、キャラ、視点、BL的に少々違和感を覚えたこと。中でも気になってしまったのは隼人と湊の発言と内面のズレ。隼人のバックグラウンドからすると彼は相当の荒くれだと思いますが、モノローグで語られる心情や抱く感想が繊細で知的。湊はお育ちが良すぎるくらいなのに、時々言葉が荒い。意図的な演出だったとしても、キャラにちぐはぐさを感じてしまいました。
視点については隼人、湊の入れ替わりについていくのがちょっと大変だったこと。BLの部分については、このお話にエロシーンはそぐわないと感じたこと。湊が漕ぐ自転車にニケツした隼人のエッチな視線、湊が口を開けて隼人にブリッジを見せるシーンで、わたし的には十分萌えました。あ、あと、忘れちゃいけない、湊の修学旅行中のエレベーターのシーンも。
正反対の境遇にいる者同士がどうしようもなく惹かれ合って、気持ちを確かめ合って、その後は…?おとぎ話の続きはどうなるのだろう。
竹美家らら先生のイラストがわたしはとても合っていると感じたので、次の挿絵に辿り着くまでワクワクしながら読みました。一つ目の挿絵に描かれた湊が可愛いです。
最後に収録されているスピンオフ、「共犯者のゆくえ」はフワッとした慎と喬雄の関係がちょっと物足りなかったかなぁ。このお話に続きはあるのでしょうか。もしあるのなら、女性を交えた三角関係は大好物なので、ムッチャ読んでみたいです。
アレコレ申しながらも個人的にはお話自体が好きでしたので、レビュー内容に沿わず評価は高めかもしれません。
あ、自分はこういう無垢な受が苦手なんだな、と気づいてしまいました。なんだろうな…二人の温度差がどこで縮まったのかよく分からず、お互いに「この人じゃなきゃダメなんだろうな」という気がしませんでした。
あと、この作品には竹美家ららさんのイラストはマッチしてないんじゃないかな~。特に、隼人が普通の優しいお兄さんにしか見えませんでした。表紙絵の感じもこう、優しいしね。
作家買いしそうなほど好きな一穂ミチさんの作品に「しゅみじゃない」を付ける日が来るとは思いませんでした。「自分の趣味じゃない」のであって「悪い」のではないです、こればっかりはどうしようもない。それだけ作風の幅が広いということで改めて好きになりましたが。
田舎の小さな城下町、その故郷に帰ってきた慎と、それにくっついてきたチンピラめいた慎の友人・隼人〔攻〕
慎の家に居候する形で隼人はその町に居つくのですが、そこで出会うのが慎の知り合いでありこの町の「若様」でもある湊〔受〕
湊は、この城下町の殿様の血統の跡継ぎで立場的にも、あと町の人々にも「若様」と呼ばれていてまた若様な存在でもあります。
勿論、現在では殿様などというものは存在はしていないのだけれど、この田舎町ではまだその血統が尊ばれ敬われているのですなー。
「田舎の城下町の若様」ともすればトンチキな設定にもなりがちなこの設定を無理なく、読み手にひょっとしたら日本にはまだこういう人達が居そうな気がするという現実味を帯びて書いている匙加減は流石と言うべきか。
そんな「若様」を敬う田舎町であるから、そこへ東京からやってきた素行の悪い隼人は異分子として歓迎はされない。
そんな中でも、湊の飼い犬の散歩を接点として彼ら2人は少しずつ近付いて行く。
田舎にありがちな閉塞感が陰湿ではなくむしろ心地良くさえ書かれていて、まさにある意味そこは「おとぎの国」であり、本来ならおとぎ話で終わったであろう隼人と湊の恋愛は、そのおとぎの国を飛び出して現実の話となるのです。
一穂さんと竹美家さんのゴールデンコンビふたたび、なこの作品。登場人物たちのひとりひとりが生きてる、いる、という感じがして胸に迫ってきました。
そのなかでも攻めくんのすさんでだらしなく、だけど芯のあるキャラクターが、受けくんに出会いいっしょにいるうちにかわっていく過程が丁寧に書かれているので、ふたりにしあわせになってほしくてたまらないという気持ちにさせられました。
攻めくんの成長物語であると同時に、受けくんもまた、攻めくんに出会い、純粋なところはそのままに、でも成長していく。
あのラストに近いシーンのキスと抱擁は最高っ!いとしいおとぎ話となりました。
根無し草の来生は知り合いにくっついて彼の実家のある田舎町にやってきた。
そこは都会暮らしの彼にとっては未知の世界とも言える場所。
昔からのお殿様が存在し、息子である若様はみんなから慕われる。
その良くできた若様、奏に懐かれうっとうしく思いながらもいつのまにかそんな毎日が楽しくなってきた来生だったが……
城下町で現代の若様としてまっすぐに育った少年と、都会でふらふらと生活していたアウトサイダー。
正反対の二人が出会って、お互いの持っていないものに惹かれて恋をする。
かけがえのない一瞬一瞬の空気感の鮮やかさは見事の一言。
中盤からもっとロミジュリ悲恋な展開になるのかなあと思いきや、意外とあっさりくっついてしまいました。
おとぎ話にはハッピーエンドが必要なので仕方ないのかなあ。
寄せては返す波のように、さざめく感情が静かに
満ちてゆく過程と、飾らない言葉が魅力だと思う作家です。
一穂先生の作品にはそれぞれに色を感じる事が多く、
それは情景や風景の描写が感情の流れの奥に
佇んでいるからかもしれません。
今作は長閑でも緩く閉ざされた曇天の街、
薄墨色のイメージでした。
世が世なら殿様一家であるやんごとない育ちの湊と、
人にも物にも一切の執着を持たない根無し草の隼人の、
身分違いも甚だしい恋の道行きが、旧家の因習や
それを背負う者たちの様々な思いとからめて語られます。
どうしようもなく粗野で下品なのに、
その自由奔放で何にも依らず媚びない姿は
男女を問わず惹きつける隼人。
あらゆるものが煩わしいと思ってきた彼が、
自身の感情に惑い他者と向き合う変化には
可愛気が見え隠れします。
一穂先生がちょっと崩れた人物を書くのは新鮮で、
その口の悪さと無頓着さは結構魅力的です。
いつの間にか満ちていた想いを一度は諦めようとした隼人が、
一転、まさにその身を翻す場面が好きですね。
今までの作品では、緩やかな恋情の昂りが主だったのが、
感情が理性を突き破る瞬間をやっと書いてくれたな、
という気がしました。
甘い言葉もムードもないエッチシーンに大っ変萌えたのは、
大好物の噛みつきやら軽い罵りがあったからでして、
最中の「バカ」って言葉にはどうしてこうギュンギュンくるんでしょう。
素っ気ない言葉とは裏腹の貪るような求め合いが
もっと読みたかったです。
自ら共犯者となった酒屋の息子、慎が幼馴染たちと
いつまでも輪でありたいと望む胸中には、
どんな秘めていたのでしょうか。
彼は地味ながらも気になる人物で、きっと語られない
物語があるのでしょう。
辛口です。
すいません。
萌えたのはエレベーターのシーン。
あそこ良かったー。
流れが完璧。
神シーンでした。
で…ここから辛口です。
まず、野衣家の人間をみんな「物分かりのいい人」にしちたことに違和感。性善説で作品を構築するのがダメという意味じゃなく。
茶鬼さんの感想とちょっとかぶるのですが、脇役がみんな「いい人」なら違和感を覚えなかったと思う。「いい人」と「物分かりのいい人」、この二つは似てるようで絶対的に違うのだ。
そのせいで、受けが長年抱えてきた葛藤に説得力がなくなるような気がしました。
受けをジワジワ追い詰めたのはいわゆる「田舎の因習」なんですが、そちらの側にきっちり立つ、次元の違う価値観を持つ登場人物が必要だったんじゃないかな。両者はけして解りあえないんだけど、どちらの価値観も間違いではない、みたいな。或いはどっちも正しくどっちも間違ってる、みたいな。
このストーリー、ド田舎出身者としてちょっと悲しい。
そう思ってタイトルを見ると「おとぎ話」
そうか、おとぎ話ならokなのかも。
あと攻めも私の趣味じゃない。
「本当はいい人」ってオチがくるのは最初から分かってたのですが、それにしてもなァ…。
初対面の人間やら世話になってる相手に対する最低限の礼儀は必要だと思う。不幸なおいたちだからって、あの態度はない。私も弟のいる身ですが、あんな紐男に可愛い弟が傾斜していってたら…ひえええ絶対ヤダ!いびり倒してやる!排他的な田舎者になってやる!弟の目を覚ますため、あの攻め誘惑してエッチしたっていいぞ!(すいません、ブラコン病なもんで、想像して思わず取り乱しましたw)
あんな態度で受け入れてくれる世界なんて、田舎だけじゃなく、夜の世界にもないと思うよ~。
性格の悪い攻めは大好物なんだけど、こういう攻めは好きじゃないんだよね。
あと保険証がないという話のときの記述で、作中、「病院に行かないか、借りるか、そうじゃなかったら後ろ暗い医者に行く」みたいなことが書かれてたんですが、そこは普通に実費で解決では。わざわざ後ろ暗い医者に行ってぼったくられずとも。
夜の世界を紋切り型の「悪い世界」にしてるのも、おとぎ話たるゆえんなのか。
ただこの本、苦手ではあったけど、前作までにあった文体へのモニョモニョが減ったのは嬉しかったです。
過剰な修飾が削がれ、『雪よ~』のテイストが仄見えて「オッ♪」と思ったりもしました。
現代でも、まだ、お城の若様として、地方の城下町で暮らしている湊。
定職も持たず、人の空気を読むことだけで渡り歩いていた隼人。
それにしても、なんでこんな二人が出会っちゃったのかね?
という、根本的な疑問は持ってはイケナイ。
それこそがおとぎ話だから。
吾川という地方の城下町での暮らしは、紛れもないおとぎ話のよう。
なにも持たない、なにも持つ気がない隼人が、そんなおとぎの国に迷い込んで、大事な物を見つけてしまうけど、それは夢の中の宝石、現実に手に入れられる物ではないと、夢の国を後にします。
ところが、おとぎの国の若様は、思いがけない前向きさで、国を出てきて隼人を見つけ出してしまうのです。
おとぎ話のそれからは、
ずっとこのままでいられますように。
と願う事で続くのでしょう。
何日も前に読み終えているので、記憶も曖昧になりつつありますが、キュンキュンさせてもらったお話でした。
持ち前の世渡りの上手さで、東京の底辺で生き延びてきた来杉が、なんとなく友達の帰省に着いてきた田舎町で、殿様の子孫・湊に出会ったことにより始まるお話です。
何につけ冷めていて、自分の気の向くまま“今”だけを生きている来杉と、おっとりとしながらも芯は強く、“若様”としての公の立場も保ちながら、自分としてはどう生きていきたいかを模索している高校生の湊。
まるで正反対なのに引き合うものがあり、二人の関係はどんどん近づいてくるのですが・・・
どう足掻いても来杉は湊にふさわしいような人間ではなくて、それが分かっているからこそ離れようとするのに、湊は慕ってくるのです。
来杉の内側の暖かい部分を掘り起こすように・・・
そして、来杉もどんどん湊に傾いていくのですが・・・
結果はハッピーエンドなのですが、来杉が湊をあきらめることにしたとき、裸足の湊を担いで「駆け落ちでもすっか」と言ったところが一番好きなシーンです。
最終的に、来杉がいい感じに更生してくれたところも好感が持てました。
あとは慎ちゃん(来杉のともだち)の幸せを願うばかりです。
何も持ちたくないアウトローの大人と、生まれながらに色々なものを持たされて、それを大切に抱えようとしている子供が、そっと寄り添うようなお話でした。
本当に一穂マジック!
最初から2人が積み重ねる日常が淡々と描かれるだけ。これといってなにか事件があるわけでもなくて、思いや考え方が変わる大層なきっかけがあるわけでもなくて、本当にどこにでもある日常の積み重ねです。
よくBL読んでいると、恋愛未満の感情の自覚を、地の文で「ドキッとした、なんだこれ」的に表現することがあるけど、この作品は本文中で「こんな大人初めて。ドキドキ」とか「なんだあの子供。ドキッ」的な感情表現があるわけではないんです。
なのに、2人が初めてキスをしようとする場面では、読み手も2人も、お互いに惹かれ合っていると分かっています。
それまでまったく、恋愛に発展するようなことはなかったのに。
だから、全部すっ飛ばしていきなり「駆け落ち」に発展しても、ぜんぜん唐突だとは思わなくて、ただ、ああ、そこに行き着くのか、とか、本当は出来ないって分かってるくせに、とか思って切なくなるんです。
2人の距離は、「知らない人」⇒「なんか気になるあいつ」⇒「超気になる。好きかも」⇒「好き!」と発展するわけじゃなくて(というか、そういう表現まったくなしに)、でも気付けば、積み重ねる時間の中でちゃんと近づいてるんだって後で気付くんです。
すごく不思議。
2人の別れのシーンで、「一穂マジックにやられた!」と思いました。
読み返せば、あんなに沢山の、どこにでも転がってそうなエピソードの山だったのに、無駄なものは一切無かったと思います。
アロエとか、矯正とか、お好み焼きやさんとか。
一穂さんはホント、こういう誰かの日常に当たり前にあって、当たり前すぎて目にもつかないようなものに、ほんのささやかな意味を持たせるのがお上手だと思います。
大層な意味じゃなくて、本当にささやかな意味ってところがイイ!
本人同士以外にはまったく無意味だけど、本人たちにはなにかの小さな証や足跡のようなものだからこそ、あったかい気持ちで見守れるんだと思います。
素敵なお話でした。
隼人のバックボーンが希薄だったなとは思うし、目線や時間軸が行ったり来たりする構成はちょっと読みにくかったりもしたので、正直評価は「萌」と迷いましたが、あの月夜の別れのシーンで「やられた」と思ったので、ぜーんぶ吹っ飛んで「神」です。
それにしても…ホント一穂さんのお話は評価がしにくい。
どこが良いとか、どこが好きとか、そんなのがいざ書こうと思うとなかなか出てこなくて、「作品ぜーんぶの印象」としか言いようが無いんですよね。
どこか一箇所を取れば、本当に取るに足らないシーンでしかないんだもの。
「全部で一本の作品」の見本だと思います。
今、映画の撮影で東北の城下町がクローズアップされているからでしょうか?
今回の舞台は、そんな古さを残した城下町が舞台の、まだ城主の子孫が「お殿様」として別格の扱いを受けている町で、そのお殿様の若様と、都会からやってきた風来坊なアウトロー男のお話でした。
読み終えて、いつものキレイな文章はあるものの、殻をぶち破りたいと願う少年の不安定さが、文章にも現れていて、読んでいて不安にさせられる部分もいくらか見えたものの、これは挿絵がかなりマイナスイメージを作っている、今回は選択ミスだな~とおもわざるを得ません。
隼人は定職も決まった家もない、その日暮らしをしている世渡りのうまい男
のようですが、自分に素直でストレートでTPOをわきまえないもの言いをするものの、決して悪い人ではありません。
湊は、その家柄と生まれから町の人々に若様と呼ばれ、特別扱いをされていて、一見それに馴染んでいるようですが、それを打ち破りたいと願っていると思うのです。
だから、都会から来た何の偏見も持たず接してくれる隼人になつくのですね。
湊の飼い犬が、すぐ隼人に懐いたという描写が冒頭すぐに登場するのは、常識はずれだけど、本当はイイ人というのを表現するためだったとは思います。
隼人に近づきたいけれど、特別扱いの自分の身分が(こんな今どき!)邪魔をして、周囲の人々が隼人を良く思わない。
それなりに、隼人は周囲と馴染んでいるようではあるのですが、湊絡みになると隼人を排除しようとする動きが働くのは、閉鎖的な田舎の町ならではの特徴だとは思います。
それで、湊を思い隼人は町を出ることになるのですが。。。
不思議なのは、自分というものをしっかり持ち、隼人に最初はよい印象はないものの、彼の良さを認める湊の姉・桜。
どんなに厳格なんだろうと予想したら、意外にフランクで砕けていた湊の両親。
なのに、どうして湊の悩みとかを理解して助けてあげないんだろう?
その役割が隼人であることに不思議を感じてしようがありません。
みんなイイ人設定にしてしまった為でしょうか?
また、湊も態度や口調を使い分けている設定なのかもしれないのですが、子供のように無邪気で無垢な時、男らしいちょっとツンとしたもの言いの時、そんな部分が混在するので、一体誰がしゃべっているセリフなのか見分けがつかなくなる会話が何か所か発生してきました。
そこが湊の不安定を表現する部分なのかもしれないと、思った時に、この挿絵が邪魔をするのです。
竹美家さんのかわいらしい、はかなげな絵で表現される湊は、御坊ちゃま風な少年。
だけど、違うんです。
変わろうと、強くあろうと、男の部分もちゃんと持った剣道の強い高校生男子なんです。
だからこの一見ショタっぽい少年では弱さが目立ってしまって、頭の中に浮かぶ各シーンの絵がイメージにそぐわなくなってくる。
もっと凛とした青年で描いてほしかった、そういう作家さんにするべきだっと思います。
全体の小説のカラーは、重苦しい曇天のイメージ。
決して明るいモノではなかったと思います。
特徴である、子供っぽい会話の描写の仕方が、どうしても気になりますが、
「連れて~逃げてよ~」な演歌的世界だったな、とふと読み終わった感想を持ちました。
デビュー作が印象的で高評価の作家さんだけに、見る目がかなり厳しくなってしまうので、辛いところでしょうが、やはりもっと男臭いドロドロを表現できるようになれば、雰囲気のメリハリがついてもっと広がるのでは、と思いました(やはり、ちょっとキレイすぎて、、)
全体としては悪くないけど、評価に悩みます~~~