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木原音瀬の幻のデビューノベルズ、ついに新装版で登場!
木原さんの絶版作品は、バカ高い値段がついていて二の足を踏むのだが、ビブロスのものは絶対再販が出ると信じていたので、待っていたかいがありました!!
デビューノベルスになるとういことで、初期作品なんですが、「性格の悪い男」というのが少しイタさを含んで、これが木原作品の原点なのか、と思うのと同時に、その奥に秘められた優しさも感じ取ることができて、今読んでも充分に古臭さを感じさせない、とてもよい作品でした。
『水のナイフ』~『セカンドセレナーデ』へと時間の経過と登場人物の推移がなめらかにバトンタッチされ、二組の恋愛模様が描きだされる手法は、木原さんならではの上手い手法だと思います。
校内一の美人・大友さんを手に入れようと、大友が好きな砂原先生に、大友を好きにならないように姑息な手段を遣う明智。
自信過剰で自意識過剰で、砂原を見下していた明智が、ウソの愛を砂原に告げるうちに、ミイラ取りがミイラになっていく様は滑稽であるのだが、散々に砂原を傷つけていく様もまた見どころなんだろう。
姑息で性格の悪い男が真剣になるとき、そのエネルギーの向かう先が本物の真摯さというより、自分がズルイだけに小手先を遣った執着を見せる姿が愛おしく感じられる。
砂原の諦めに似た、年上ならではの受け入れは、良いペアリングだと思う。
そして、砂原を本当は好きだったのに明智に出し抜かれた掛川。
砂原の彼氏が明智だと知った時、誰でもいいからと寝たのが橋本。
この橋本が、とても性格の悪い男として描かれているのだが、それならどうして掛川は、最終的に盲目的に、束縛する愛を橋本に見せるのか?
そう見た時に、橋本は性格が悪いのではないのだということに気がついた。
かれは正直なのだ。
思った事をダイレクトに言う。
言葉を飾らず、それは相手の非をとがめる発言が多いのだが、それは全く間違っていないのだ。
どうして性格が悪いと思うかというと、それはズバリ、言われた人に思い当たる、確信をついた発言だからだ。
本当のことを指摘されれば、それが自分の非を素直に認めなければとても居心地の悪い言葉になる。
だから、性格が悪い、嫌な奴、自分に不快感を与える奴という認識に移行するのだ。
掛川は、この橋本がどうしても手放せないのは、この正直さが好きだからに違いない。
橋本の態度は決してツンデレではないのだ。
この本を手にして数日で、実に何度も何度も読み返してしまった。
それほどにとても魅力的な登場人物達の姿に、再版してくれて本当によかった、と嬉しくおもうのデス♪
デビュー初期の作品なのに全く色褪せない木原作品はやはり凄いです。
「水のナイフ」と「セカンド・セレナーデ」はどちらも大好きな年下攻め。しかも更にどちらも攻めが受けを自分本意に利用していたのに、いつの間にかこっちがハマっている「こんなはずじゃなかったのに」な展開。大好物です。
登場人物が嫌な奴に書かれている分だけその思考の泥沼が楽しい。木原作品の性悪が恋にハマる過程は、私にいつもカタルシスを与えてくれます。ニヤニヤが止まりません。
よく「木原作品はBLを超えている」とか「BLじゃない」という評価を見ますが、私は木原先生は実は誰よりも大真面目にBLドリームを書いてる方だと認識しています。
それは作中での砂原の「99嫌いでも1好きだと思えば仕方ない(意訳)」という台詞が全てを表しています。これは「嫌な奴なのにどうしても好き」という木原作品の根元にあるもの。
でも実際、人間は「嫌い」になるより「好き」になるほうが全然難しいです。少しでも嫌なところを発見すれば、どうしてもそこに目が行ってしまいがちで、好意を抱くのは難しいです。
だけどこの作品だけでなく、木原作品の登場人物達は「ひとつだけでも好きなところがあれば好き」だと、盲目的な愛を抱いているのです。
それは正に「愛は全てを超える」「愛の前では全てが無力」を地で行っている。それこそ夢物語。現実的ではありません。それをリアリティーのある登場人物達が展開させることこそ、木原作品の魅力なんだなあとしみじみ思いました。昔から一貫して同じようなテーマの作品を書き続け、なのに飽きさせない木原先生はやっぱり凄い作家さんです。
ある意味下手なハーレクイーンよりとても憧れる恋愛ですね。「この人だけ」なんて恋愛を一度はしてみたい。疲れそうだけど(笑)。
木原さん=イタイの頭が離れなくて、まいど覚悟して読むのだが
実はそんなに痛くないんだよな。。というのが最近の雑感。
最近読んだものがその傾向なだけなのかしら。
今回も、ホロ甘い作品でした。
いろいろ皆欠落してるというか、どこかダメなんだけど。
なんだかんだで、最終的なラスト、落とし方がすごく可愛くて好きです。
このホッコリ感はなんだ。
紆余曲折あっての到達点、
思わず顔が綻んでしまったw人´∀`*))
>>水のナイフ
読み始め、こちらのほうが主題だと思ってたのですが、複線でしたね。
高校の生徒と教師。
好きな女の子を取られたくなくての、ちょっとした嘘から始まった筈なのに、あれ・・・・・あれれ・・・・・おれ・・・もしかしてパターン。
ミイラ取りがミイラwwwwwww
チビでブサイクで、しかも男。こんなヤツ好きになるはず無いのに。
この胸のうずきは・・・・・・ぐふっ
アホの子っぷりが可愛かった。「いやなやつ」の表現のとおりに、あんまりよい性格ではなかったのかもしれない。
だけれども、好きになって、本当の恋をしって一途になる。
ある意味、木原さんのパターンにも感じますが、これがまたイイ。
大人になった2人の甘く、甘すぎるほどのいちゃつきっぷりにキュンv
>>セカンドセレナーデ~
噛ませ犬だった、掛川くん。
そうだよね!そうなるよね!!!
この子こそ、まっすぐ一途。一生懸命なところが
お姉さん泣いてしまうわ(*ノД`*)・゚・。
先生に、告白、玉砕。好きな相手がいるとの告白を受、最終的に友人だったヤツと付き合っていると知ってしまう。
自暴自棄になり、抱かせてくれるなら誰でも。
性格の悪そうなやつを選んで上にのる。
相手は自分に一目ぼれしたと勘違いして喜んでいるようだ。。。。
これまた、お互いになんだかんだで駆け引き云々。
途中の、傍若無人っぷりがお互いにちょっと心イタイのですが
最後が最後だけに、読後の感想としてはなんだかすごく心が穏やかでありまして、そのワガママも、暴挙も可愛いと思えてしまった。
掛川くんは、なんだかんだで童貞差し上げたわけだし。
好きだと気づき、両想いになってからは、甘やかし放題w
なにこの愛妻家wwベタ惚れですかwそんな露骨な部分が好きです。
受である橋本さん、これがまたダメな人間。
後半にいくにつれて、「あ~あ」な残念な人間なわけですが、そのワガママも、可愛いと思えてしまうのは、掛川君との掛け合いもあるのでしょうな。
年上の癖に~なツンデレ具合が可愛いのもあるのだが。
プライドが高いくせになこの人も最終的にすごく可愛かった。
キュンw
今の作品よりも痛さがなくて眩しさみたいなのがあって、けども木原作品らしさはたっぷり詰め込まれていて、本当に大好きなお話です。
だからといって初々しいかというと、そういう新人らしさみたいな不安定さは既になく、超一流の作品だと思うから、木原さんはデビューしたての頃からすでに「木原音瀬」だったんだな…と、本当に尊敬します。
当たり前とか言わないで!他に言葉が見つからないくらい、本当にこの作品を読んで爽やか学園ものにも関わらず「あ~、木原音瀬だ」と思ったんです。
同じ学校出身の男の子たちが登場する2カプのお話なんですが、どっちもとても魅力的でした。
「水のナイフ」の明智は、性格も悪く計算高く、無駄に美形で根性捻じ曲がってて、頭も良いくせ、妙に要領悪くて迂闊な愛しい奴でした。
読みながら「馬鹿だなぁコイツ」と思うしムカつきもするんだけど、途中からはじれったくて応援したくなってしまう、まさに「木原さんの書く嫌な攻め」です。
逆に、「セカンド・セレナーデ」の橋本は、美人で性格悪くて、人に嫌われていてそれも自覚しているから尚たちが悪くて、なのに妙に可愛いところがあって手放すに手放せない、まさに「木原さんの書く嫌な受け」です。
どっちも今の木原作品に脈々と受け継がれている「嫌な奴」で、最初は本気でムカつくのに読みながらだんだん愛おしくなってくるのも、駄目なところは最後まで駄目なまんまなのも、やっぱり木原さんです。
木原さんの原点を覗けたような嬉しい気持ちと、「やっぱり木原さんだ~」と思う嬉しい気持ち、どっちもが感じられて、大好きな作品です。
以前、雑誌デビュー作「眠る兎」を読んだ時、その文章力の高さに驚きと尊敬の念を禁じ得ませんでした。その後、12歳頃から小説を書いていらっしゃると知り、そうだったのか、さすが!と納得。本作も単行本デビュー作ということで、期待を胸に手に取りました。
目次
●水のナイフ(攻・明智拓磨×受・砂原先生)攻め視点:34%程
●ONE NIGHT(攻・明智拓磨×受・砂原先生)受け視点:2%程
●セカンド・セレナーデ(攻・掛川進×受・橋本道也)攻め視点:44%程
●その後のセカンド・セレナーデ(攻・掛川進×受・橋本道也)受け視点:6%程
●わがまま(攻・掛川進×受・橋本道也)割石友和視点:8%程
●いじわる(攻・明智拓磨×受・砂原先生)攻め視点→受け視点:6%程
上記目次からもお察しの通り、本書は2組のCPのお話しです。砂原を除く3人が、共に性格が悪いというのは私も同感です。でも、みんな許容範囲 ( ˆ◡ˆ )
●水のナイフ
・あらすじ
恋の四角関係です。分かり易く図式化してみました。
明智→大友(美少女)→砂原先生←掛川
ご覧のように明智は大友に片思い。また大友や掛川は砂原に片思い。肝心の砂原は、この時点では誰のことも眼中にありません。クラスで文化祭の出し物を「映画」に決め、映画作りをきっかけに4人+1人は急接近することになります。ある日、明智は掛川から大友が砂原を好きらしい、と聞かされます。明智は一計を案じ…。
・感想
面白かったです。特に明智が嫌いな砂原に愛の告白をするシーンが!もちろん砂原は信じません。そこでありとあらゆる手を使って信じさせようとします。そこのところが楽しくて。とりあえずデートを重ねる二人。さすがの砂原も、いつしか明智の演技力に丸め込まれ陥落。そして明智も徐々に砂原になびいていきます。少なくとも私たち読者にはそれが分かります。ところが明智自身は自分の本当の気持ちに気づけず…。考えてみれば砂原も明智もノンケ中のノンケ。自分の気持ちに気づけという方が無理。でも明智の揺れ動く心の内、それはもう恋なのです。
悲しかったシーンは、丸め込まれすっかり明智を好きになってしまった砂原が振られるシーン。イイ雰囲気だったのに…デートの帰り道、明智は砂原に別れを告げました。この時の砂原先生の何げない一言「ああ、ね」が、胸にズドーンと来ました。そして最後の会話。
明智「今日は楽しかった」(←社交辞令)
砂原「俺は最低だった」(←振られて凹む)
ズドーン! (๑T﹏T๑)
この後もいろいろありましたが最後はハッピーエンド。明智から「ごめんなさい」という謝罪の言葉が聞けて胸がスーッとしました (*˘︶˘*) にしても!砂原1人に対し、3人もの人が恋をしていたとは!モテモテやん…。
●ONE NIGHT
・あらすじ
「水のナイフ」の実に6年後のお話し。砂原の30歳のお誕生日を巡っての2人のハートフルストーリー。明智は意外にも几帳面で、砂原の誕生日を忘れたことがありません。そこいくと砂原は…。
・感想
明智がだんだんイイ男になっていくのが分かり、心温まります。
●セカンド・セレナーデ
・あらすじ
「水のナイフ」からは3年後のお話し。掛川は砂川先生に大失恋。傷心のあまり誰でも良いからと、第一印象最悪の橋本をターゲットに体の関係を築きます。昼間は大学に通い、夜は橋本のマンションに寝泊まり。大学では「映画に出演してほしい」と林田からのアプローチ。砂川先生との交流も続きます。そうした中だんだんと橋本を好きになっていく掛川。橋本の結婚話が浮上し…。
・感想
二人とも同じく性格が悪い。ただし掛川は外面が良いので一見良い人に思われがち。一方、橋本はズケズケと本音を言うので皆から嫌われるタイプ。正直者って美徳のように言われますが嘘も方便。人間関係を円滑に進めていくためには、事実でないことを表現できる力も必要なんです。正直者と言いましたが、橋本はプライドのため嘘もつきます。落ち度を人に知られたくないのです。でも…何となく気持ちがわかると思ってしまう私。最後には可愛く見えてきてしまって ( *´艸`)
●その後のセカンド・セレナーデ
・あらすじ
掛川は俳優への道を一歩一歩踏み固めている真っ最中。撮影現場に恋人の橋本を連れて行くのが日課となりつつあります。
・感想
受け視点です。どうやらやっと橋本の気持ちが少しずつ見えて来ました。攻め視点の時には、掛川は橋本の性格の悪さを嘆いていました。ところがどうでしょう。立場が変わると景色も変わるもの。橋本が掛川の意地の悪さを嘆いているのが妙にシュールで面白かったです。
●わがまま
・あらすじ
芸能事務所の社長がめちゃくちゃ惚れ込んだ俳優、それが掛川。マネージャーの割石は、掛川のことを何も知らないまま面接。掛川に悪印象を持たれ、部屋を出て行かれてしまいます。社長に怒鳴られた割石は、掛川に土下座して謝り事なきを得ます。ところが今度は掛川の恋人の橋本と接触。綺麗な顔の嫌味な男。割石の橋本に対する印象は最悪でした。どんな手を使えば円満に二人を別れさせることが出来るだろうか…。
・感想
映画俳優を目指す掛川の真摯な姿を拝めて幸せを感じました。ここでも橋本の毒舌ぶりは凄まじく、嫌われまくっていました。でも割石が安堵したように、橋本の毒舌は特定の人に向けてのイジメではありません。あくまでそういう性格の人なので許せてしまいます。それに可愛いと思える瞬間も沢山。
●いじわる
・あらすじ
明智は友人から合コンに誘われます。ドタキャンした別人の代わりとして。拝み倒され、仕方なく出席の返事をします。でもちゃんと「彼女いるけどいいの?」と断りを入れるのを忘れません。合コンを終え、砂原の元へ。そして合コンに出席したことを報告。砂原はムッとして…。
・感想
うん。二人のイチャイチャぶりがとても良かったです +。:.゚(๑>◡╹๑)(๑╹◡<๑):.。+゚
新装版だけど、前回の旧作とあとがき以外は同じ内容で書き下ろしもありませんでした。しかし、久々に読んでも「水のナイフ」は木原作品で一番好きだと再確認しました。高校教師と生徒という設定はありがちですが木原マジックにかかれば新しく息吹が芽生えます。格好良く勉強も出来る優等生だが最悪な性格の年下(攻)×チビ不細工教師(受)というお互いに何かしら欠点のある2人に萌えました。真骨頂と言うべき歪んだ性格のキャラや人の嫌なところを描いたら随一ですね。砂原先生がちょっとツンデレっぽいところが可愛いくてなりませ、チビで不細工でも何の問題ありません。表題作での受も可愛いところありますが相当に性格歪んでます。このボリュームにして内容の濃さは素晴らしいです。
前半の「水のナイフ」と「ONE NIGHT」は、高校生・明智(攻)と教師・砂原(受)の恋の話。文化祭の映画製作中、明智は自分が片思いする女子が砂原に告白するのを牽制するため、砂原に嘘の告白をします。恋人のふりをするうちに、やがて明智も、初めは取り合わなかった砂原も、本気の恋に落ちてしまいます。
後半の「セカンド・セレナーデ」と「その後のセカンド・セレナーデ」は、高校時代に砂原に恋していた掛川と、性格の悪い男・橋本の恋の話。砂原の恋人が友人・明智と知った掛川は、失恋の痛みを慰めるために、行きずりの橋本と体を重ねますが、やがて橋本との恋に落ちていきます。
二組の恋を読み、恋はしようと思ってするものじゃなく、落ちていくものなのだなあと思いました。
そして、「セカンド・セレナーデ」の前に、掛川が知りえなかった砂原の恋模様が描かれることで、掛川の一方的な片思いが、より際立つように感じました。恋愛関係になった明智だけが知る砂原の様々な顔。掛川はそんな砂原を知らないのに。教師としての顔しか知らないのに、誰かに慰められたいと思うほど、一途に砂原を好きで。片思いは、恋愛のほんの入り口。相手を深く知ることはできないというのが残酷で、だからこそ切ない感じがするのかもしれません。
それなのに、恋にどっぷりとつかってからは、掛川と明智は好きな相手に意地悪をするのです。
橋本を好きな気持ちに気付いた途端、裏切られた掛川は、偶然主演した自主映画がきっかけで俳優の道を歩き始めます。形勢逆転し、落ちぶれた橋本が頼ってくると、掛川は橋本が自分を好きなことを確信し、言葉でいたぶり、橋本を自分のアパートに住まわせます。明智も短編「いじわる」で、自分がいかにモテるか砂原に自慢して嫉妬させ、泣かせて、そんな姿に欲情するという…。
恋って、そんなものでしたか?!と戸惑いを感じながらも、意地悪は恋愛のスパイスなのかもと思いました。好みの辛さが人それぞれなように、意地悪で仲が深まるカップルもいるのかもしれませんね。砂原も意地悪に泣きながら、明智に夢中ですし、橋本もすっかり掛川に甘えています。恋は不思議ですね。そんな恋は経験したことがないので、羨ましいような、そうでないような。
映画の自主製作で、掛川を主演に誘った林田の彼女・高木さんが、すごく透明感のある魅力を出していました。掛川が体だけの関係の相手がいると話したとき、「そういうのってよくないわよ、多分…心に」と、控えめに諭すのですが、その一言があって、掛川は橋本への恋を自覚したと思うのです。彼女の生き方がすごく素敵です。
多少意地悪しても、明智・砂原、掛川・橋本のカップルは、心と体が一致しているのですから、幸せなのかもしれないですね。
セレナーデとは、音楽の形式のほかに、恋人や女性を称えるために演奏される楽曲の意味もあるそうです。セカンド・セレナーデは、二番目の恋の歌、という意味でしょうか。掛川の二度目の恋にかけたタイトルが、たまらなく甘いです。
作中、懐かしの映画のタイトルがいくつも出てきて、それらのテーマ曲を思い出しました。砂原の昔の恋には、「カサブランカ」の『As time goes by』が似合うみたいですね。二組の恋には、どんな曲が似合うだろう…と考えて、恋の歌をいろいろ聴いてみたくなりました。
最後まで面白かったですー!読む前はタイトルに「セカンド」と付くのと、説明に総集編的な感じ?に書いてあるので今までの作品の続きとかかな…と思っていたのですが、問題なくこれ1冊で完結です。同タイトルで2冊リストに出ますが、新装版と旧版が同じカバーデザインぽいですね。
セレナーデとは夜曲、セカンドは2つ目の恋だからです。
2cpどちらも学生×社会人です。木原さんの他作品ですとそういった歳の差の恋愛は「B.L.T」「眠る兎」等最高に魅力的な作品がありますが、この本にしかない面白さは好意が他者へ移っていく描写です。
登場人物全てが初めに好きだった人から他の人へ心変わりをするのです。本来であれば元々好きだった人から心移りするなんて許せないだとか、読んでるこっちが2人目についていけなくなりそうなところですが、そこを軽々と乗り越えさせ読み切らせる木原さんの筆力に感服です。
明智は好きだった女子から先生へ
女子は先生から明智へ
先生は昔好きだった人から明智へ
掛川は好きだった先生から橋本へ
橋本は冒頭彼氏と別れて(ドン底に落ちて)掛川へ
そしてこの本の主役は何と言っても橋本(3話目「セカンド・セレナーデ」〜)!
1話で先生に夢中だった掛川、あんなに一途だったのに…「一生を賭けてもいい」と言うくらい先生好きだったのに…泣。その掛川が失恋し、ちょうど居合わせた最低な性格の美形・橋本を引っ掛けます。「嫌な男なら少し位利用させてもらっても罪悪感が無くて済む」とか言っちゃって…どうしたの…泣。なんて混乱するのも束の間、木原ファンには堪らない(と思う)嫌な奴vs嫌な奴が始まります!最高に高まりました。「嫌な奴」の2人よりBLしていて行為もあり、清々しいクズさです。
そしてボロクソのドン底に落ちて(あ〜ニヤニヤが止まらない)掛川のところに落ち着いた橋本、それでも彼はブレずに高飛車なまま。嫌われようが無職だろうがこの安定感!なんて魅力的なキャラクターでしょう。
俳優を目指す掛川の監督やマネとのやり取りも全く奢らず悪びれず爽快です。ずっと読んでいたい…
最早バカップルな「一日中俺のこと監視して悪い虫がつかないようにすればいい。ね、そうしなよ」「もっと根性見せてよ。誰にも俺を渡さないって気合い入れてよ」恋人・橋本への掛川からの可愛い台詞が最っ高でした!
どちらのカップリングのお話にも映画が関わっていて、掛川の
「俺のディートリッヒ。ハンサムだろ」
にはくぅう〜〜っ!となりました。BL実写映画も増えてきている中、木原さんの作品で実写化するとしたら、どの作品になるのでしょうか(ワクワク)
初恋は実らないと言うし、現実的に叶わない人が多い(と思う)訳です。好きな人が自分の中に居座り、他の人も入ってきて混ぜこぜになり自分なりに感情を処理していく…そして相手と折り合いをつけていく。キャラクターの魅力だけでBL話に留めずそういった心の精算的な部分を描かれているので読後感も良いです。
積読したまま年月が過ぎてて、、やっとたどり着きました。
木原先生の作品は、読みかかるまでには時間がかかるのですが(心の準備が…)読み始めるとあっという間です。途中でやめられないんです!
どうしても始まった恋を見届けるまで本を閉じれない、という感覚に憑かれて読み耽ってしまいました。
木原先生の描く”嫌な奴”、デビュー当時から研ぎ澄まされてますね。
魅力的な性悪たちが、恋に身を焦がす姿がたまりません。
ハラハラするくらい性格が悪いんですよ。優しくないの(笑)。
嫌いで見下したいと思っていたはずの相手(砂原)を、どうしても自分のものにしたいと思う明智の劣情にはゾクソクさせられました。好きな人をいじめたくなる小学生男子の心理が拗れきっている感じ。まさかの感情を受け止めきれずに混乱する明智の様子や、狡い男に絆されてしまう砂原の心の動き、甘さ全然ないのに、このモダモダな展開に萌えてしまうんです。これぞ木原マジック!
砂原に大失恋した掛川と美形な嫌味リーマン・橋本との身体の関係から始まる恋もパンチが効いてました。つか、橋本、そんなにダメな奴かしら(毒舌でわがままだけど、顔と身体がいいって相当な取り柄では…?しかも、最初のほうでは、掛川を相当好きなんでは?という様子がうっすらみえる)と、私はやや橋本寄りの視点でした。すったもんだの揚げ句、徐々に溺愛バカップルに変化していく過程が最高でした。本性を曝け出した果てに、互いを飼いならした感のある二人の仕上がりに、マイナススタートって最強だな、としみじみしました。
当事者同士にしか理解できない厄介で不可解なはずの恋心を、手に取るように、嫌というほど味わいつくせる作品です。
初期作品を読もうとこちらを手に取りました。
なんというか、痛い、辛い、切ない、どーしようもない、の木原音瀬作品の原点なのかもと、神評価。
ただ、萌えられるか?というとそこはちょっと違うんだけど。純粋にBL文学作品として読ませるものを出されている木原音瀬さん、の根っこというか新芽というのか、それを思いました。
水のナイフでは、何故に砂原に惹かれるのじゃ?
とそこに疑問が残るものの、実際のところ恋に落ちるときってそうよね、と思う。
掛川の屈託のない砂原とのデートに喜ぶ姿とか高校生らしいし、その勢い?がセカンドセレナーデにもつながって掛川のキャラクタが確立されてる。
セカンドセレナーデの橋本は嫌な奴だろうけど、憎めない奴でもあって、きっと掛川と出会ったことでいいヤツになる可能性が開けてきたんだろうなぁ。
掛川の周囲にカムアウトしちゃうとこもらしいなって。映画と言えばリバーズエンドの監督と山岡監督がつながっているのかなとか。
この本で描かれている四人のCPはリアルに居そうな、紙面から動き出しそうな感覚になるのがね。
この本は新装版で(新新装版?)出てありがたいです。今の木原音瀬さんの作品達はもう少し深いし興味深く読ませる作品になってますが、なんだかニマっと口角が上がるような読後感でした。