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彼は甘く冷たいキスをして ──ぼくのすべてを奪っていった
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
アラブですね。
結構王道アラブだったんじゃないでしょうか。
一瞬、最初、アレ?と思うくらいラブなのかと思ったんですが、それも戦略でした。
納得。
中東への旅行のためにビザ申請に訪れた薫はそこで漆黒のアラブ衣装を着た男に目を奪われる。
サイードという名を頼りに帰って調べてみると、彼はカリルザードの皇太子の第一王子で。
もう会うこともないと思いつつ想いを募らせていった薫はある場所で再会を果たすのだが…。
健気受ですね。
最初は夢見るような気分で。
けれど、それは偽りで。
騙されていたことを知って利用されて。
凌辱としか思えないような扱いを受け続けても尚、胸に残るのはサイードへの想いで。
少しも憎まずただひたすらに想うだけ。
死の危機からは逃げ出したいと思ったりもするけれど、憎しみでもいいから視線を合わせて欲しいと思ってみたり。
この薫の一途な想いがサイードをも揺り動かしたとも言えて。
利用するためだけに連れてきたはずだったのに、自分でもわからない衝動に突き動かされるような部分があったり。
けれど、最初からあえて憎まれるようにと辛く当っていることを考えれば惚れないための予防線とも取れて。
最初の夜は本当はどこかでただ自分がそうしたかっただけというのもあったんじゃないのかな、と思ってみたり。
「楽園の略奪者」
………。
もう、サイードのやりようには開いた口が塞がらないというか、呆気にとられるというか。
ここまで自分の財とか政治力とかを利用して薫との時間を作ろうとするあたりがアラブ系俺様クオリティーとでもいいましょうか。
何が何でも手に入れる主義とでもいいましょうか。
本当にすごいとしかいいようがありません。
それだけ、薫のことが好きってことではあるんですが。