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kouketsu dearu to iukoto
終始暗いモヤモヤが続く。ストーリーはとても面白い。ただ志田のすべてに共感できないし、作品のキモといえる真岸の復讐心を支えるものが謎。でもそれでもストーリーに惹かれるものがあり、自分の中で不思議な位置づけにある作品。
復讐に燃える真岸は、心理描写から窺える性格をみても人間関係をみても、特段変わったところのないキャラに見える。弟と約束したからといって、五年経っても同じ気持ちを保って復讐に臨む原動力が分からない。
もう少し被害者とのつながりの深さがあれば説得力が出たんじゃないかと思う。
志田は事件の加害者。最初は志田視点で描かれることに、加害者に寄り添う形かと微妙な気分になった。これこそ序盤に書かれていたマスコミの手口だし。
同情を誘う描写ばかりだが、個人的に黙って耐えることを美徳とするのが大嫌いなので、志田の不幸に同情できない、自身が呼び込んだ不幸としか思えない。まあ本人に耐えているつもりはないかもしれないが。
そんな感じでキャラへの好感度のない状態で読んでいたのに、二人がくっつくまでのあれこれには心に刺さる部分も多かった。
過去に真岸が志田を見かけたエピソードがあるおかげで、出会って絆されたりヤって情が移ったりしただけの突発的な恋心でないと分かるのがすごく良い。
もうダメになったかと思われた最後の最後、そこまでの状況を作ったのは真岸の方だったけど、やっと自ら手を伸ばす志田が見られて良かった。
他人に嫌われ疎まれ都合よく利用されてばかりの志田は、一つくらい何らかの反論なり反撃なりして欲しかった。真岸に出会うことでそこに変化があればもっと良かったのにな。特に養育費の件はずっとムカついている。
真岸の復讐にこだわる心理は理解し難かったけど、時間経過での感情保持や忍耐強さといった面に目を向ければ、志田には真岸しかいないような気がしてくる。すごく後日談を読んでみたいカップルだと思った。
ラブっていうより、サスペンス、ヒューマンドラマ的な印象強めでした。
数年前の事件の復讐のため、その対象人物に接触し、観察していくうちに、果たしてこの人が、本当に自分が思っているような人なんだろうか…?と主人公が葛藤する様子が丁寧に描かれていて…適度な緊張感と読み応えがありました。あるべき善意や優しさってなんなんだろ?と考えさせられました。
ただ、主人公(攻め)がそこまで近所の”ジジィ”の復讐にこだわった動機がいまひとつ見えにくかったんですよね。でも、BL的な読み方をすると、なんとなく、これは”ジジィ”の復讐というより、公判の際に忘れられない表情をしていた志田という人物への執着だったのかなと思ったり。そうなると、なんとなく個人的にはしっくりくるんですよね。
脅迫のように送られるメールの謎があるんですけど、これはネタバレなしで後々”なるほど”って思ってほしいかもです。さらに、ちょっと”税理士のおしごと”ものとしても面白かったです。最後に、やはり砂原先生のキレのあるエロ描写は素晴らしいです。
電子で読みました。挿絵なし。九號さんの絵が好きなので拝めなかったのは残念。
物語は主人公、真岸悟の子供時代の回想シーンから始まる。彼は弟の徹と交わしたとある約束を果たすため、前職を辞し、ある男の税理士事務所で募集されていたアルバイトの面接を受ける。徹の子どもらしい好奇心が縁となって兄弟二人が小学生の頃に慕っていた、隣家のゴミ屋敷に住む「ジジイ」。ある日、車の轢き逃げ事故に巻き込まれ、亡くなってしまう。その加害者が真岸のバイト先の雇い主、志田智明だった。兄弟の約束とは、彼をジジイと同じ目に遭わせてやるという復讐だったのだが…。
真岸は志田と接するようになり、この事故がきっかけでそれまでの安泰な生活を失い、感情すら無意識に殺して生きている男であること徐々に知る。次第に志田へ抱いていた思い込みが払拭されていくのですが、真岸が復讐に徹しきれないのは、彼の記憶の奥底に残っていた志田の姿があったからだというタネがさりげなく仕込まれていました。
真岸の復讐を忘れないようにという五年に及ぶ執念は、法廷で志田の姿を初めて見た時から、既に彼に何かしら惹きつけられるものがあったからなのではないかと思わせます。真岸視点で描写される志田の第一印象がなんとなく色っぽい。志田の方にも大学時代の男子学生との他愛のないエピソードが描かれており、二人が同性なのに惹かれ合う不自然さはあまり感じさせませんでした。(お互い目覚めちゃったってことで。)真岸の人好きのする性格や、脇を固める登場人物のおかげか、深刻になり過ぎず読みやすかったです。孤独な志田がベランダで一人、天体観測をするシーンが印象的でした。
物語序盤は作家さまに抱いていた作風のイメージとはちょっと異なる、意外なトーンのツカミでしたが、最後まで安心して読ませていただきました。うーん、砂原先生の描く濡れ場はツボです。
真岸(攻め)が復讐をするために、志田(受け)に近づくのですが、志田のあまりの不憫さに驚き、復讐する甲斐がないと嘆きます。そして、自分を好きにならせてから捨てることで、復讐しようとするのですが…と、ここまで書いたところで、復讐する理由が人の死じゃなかったなら、コミカルテイストにもできた作品じゃないかと思いました。男が男を好きにならせようとしている時点で、既にちょっと面白い。
でも、読んでいる最中は、そんなに違和感も覚えませんでしたし、笑いもしませんでした。
志田が落ちたおにぎりを買う様を、眺めている真岸の表情が眼に浮かぶような、情景が浮かびながらすんなり読んでいけました。安定の筆力です。
徹底的に不幸な人はいないので、安心して読んでみてください。風で春の訪れを知るような後味だと思いました。
高潔であろうとするあまり人から疎まれて利用されまくった男の恋物語。読んでいる間は受に同情して泣きっぱなしだったのですが、感想を書こうとしたら受の不幸っぷりが笑えてくる不思議な作品です。萌えたかと聞かれると微妙ですが、心を揺さ振られました。
攻は感受性が強い青年(転職前の臨時アルバイト)。
受はコミュニケーション能力の低い税理士。
攻は幼い頃親しくしていた老人の命を奪った相手(受)に復讐することを誓います。社会人になった攻は不幸のどん底につき落としてやろうと受に近づきますが、受は既に幸せとは縁のない生活を送っていることを知ります。攻は自ら受に幸福を与えてやり、それを奪うという復讐を思いつきます。
受は自分を冷たい人間だと思い込んでいます。自分を捨てた母親や自分に愛情を注がなかった父親を恨んでいないし、浮気した挙句他の男との間に作った子供を養育費目当てで自分の子だと言い張る元妻を責める気もない。しかし、ロボットのように見える受にも心がないわけではなく、誰からも愛されないことに傷ついて苦しんでいます。感受性の強い攻は受の脆い部分にいち早く気づき惹かれていきます。
攻は憎悪と恋心の間で揺れますが、最後は愛が勝つ!罪を憎んで人を憎まず。天国のジジイも可愛がっていた攻の恋が叶って喜んでいることでしょうと勝手に結論づけました。
受についてはこんな無欲な人間いないよ!とツッコミを入れつつ、本当にいたらいいなと思いました。言った者勝ちの現代で生きている身としては沈黙の美徳は目に眩しく映ります。受のネタ元は砂原先生のお父様だそうです。萌え×2と中立どちらにしようか迷ったのですが、あとがきのお父様エピソードに萌えたので萌え×2にしました。
それにしてもレビュー数多いですね。さすが砂原作品。レビュー数が神評価の数を上回っている作品は面白いと感じることが多いです。
真岸悟は、今、ある作戦を決行しようとしていた。
それは――復讐だった。
昔、真岸の家の隣に住んでいた老人がいた。
老人は、どこからともなくごみを集めてきていて、家はごみ屋敷となっていた。
そこにおいてあったものに興味を惹かれた弟に付き添うように、真岸は、その老人の家に出入りするようになった。
ところがある日、その老人が轢かれて殺されてしまう。
ひき逃げだった――
酔ったまま路上で寝ていたところを轢かれた不幸な事故だったが、相手の男が三日経って出頭してきたこと。
その直後に週刊誌に男が酒を飲んでいた、と居酒屋の店員が証言したことから事件はワイドショー等で大きく取り上げられることになった。
当初は、老人に同情的な報道が相次いだけれど、老人の家がごみ屋敷だったこと、普段から泥酔状態で路上で寝ることを繰り返していて、近所でも迷惑に思われていたこと――が記事になると、今度はその老人ばかりが悪くかかれるようになった。
真岸は弟と一緒に裁判を傍聴し、判決が言い渡されるのを聞いた瞬間、男が笑ったのを見た気がした。
相手の男に下されたのは、執行猶予付きの判決。
そして真岸は、男に対する復讐を決意する。
という感じのストーリーでした。
実際は、そんな後ろ向きのドロドロした話ではなくて。
真岸は、たまたま相手の男・志田智明がアルバイトを募集している記事を見て、彼の税理士事務所にアルバイトとしてもぐりこむことに成功する。
けれど、そこにいたのは真岸が長い間思い描いていたような男ではなくて、うまく感情表現ができない不器用な男であり、今となっては何も持っていない男だと気がついて、真岸は逆に志田に惹かれ始める。
そんな話でした。
正直、賛否両論あるなー……と思うんですよ。
何かそれによって被害を受けたことのある人からしてみれば、到底受け入れられない話だろうし、かといってこれが「ダメ」っていうわけでもないなとは思います。
でも結局のところ、理想論だなー……と思うんですけど、その理想論が文学を作っているのも確かなので、それはそれでありだなー……とも思います。
悪い話ではなかったですが、テーマがテーマなだけによしあしです。
立て続けに重たい話読んでまして、そのあとにコレ。
また重たいのかよぉ(´Д⊂汗
なんて思いながらの読後。やぁ、なんというか、
砂原さんらしいといいますか、面白かったです。
もともとは、復讐するつもりで近づいた。
一人だけ幸せになっているであろう男の幸せをぶち壊してやろうと思っていた。
それなのに、近づいた相手は幸せのひとにぎりも持っていない。
何もかもを失い、これ以上失うものがないほどに。
それどころか、知る程に、惹かれていく想いを止められず~なお話なのであります。
自分を戒め、復讐を近い、5年も執念深く。
あまつさえ、爺さんってのが実際は血のつながりさえなく
よくよく考えればさほど・・・それほど?と思えてしまう相手だったりw
ただ、相手に触れて、自分が思い描いていた人物と違うことの気づき
もろもろ~の進み方が丁寧で、読んでいて少しドキドキさせていただきました。
好きになってはいけないはずの相手が・・・
ただ、正直なところ「もう少し苦しめばよかったのに」と思ってしまったのが実際。
もちろん、当人どうしは苦しんでいたのではあろうと思うのだけれど
せっかくの復讐、5年の・・・積年の恨みとなると
もっとズシンとくる何かがあってもよかったのかなと思ってしまったのであります。
ん~・・・・
まぁ、面白かったからいいんだけど
タイトルに惹かれて読みました(*^^*)
話自体はおもしろいけどいくつか引っかかった点がありました。
確かに子ども時代に仲のよかった近所のおじいちゃんがひき逃げされたらショックだけど、自分の労力を割いてまで復讐してやろうとは思わないんじゃないかなー
しかも5年も経ってるし。
それに轢いた志田のほうにはあまり過失はないんじゃないのかな?
それなのに復讐するって無理があるなぁと思いました。
だけどいろいろな引っかかりをスルーしてけば、とてもおもしろい話です!
いろいろ書きましたけど私はこの話好きでした。
むつこさんと同じで、自分も弟の感じ方が自然だと思えたんですよね、それだけに弟を作中で否定的に書かれているのが引っかかりました。
幾ら仲が良かったとしても近所に住んでて交流のあった老人が交通事故で亡くなってその時やもっと子供であればともかくとして、事故から5年もたって社会人になったら弟の考え方の方が自然だと思うんですよ。
まあオークションで高値が付いたって喜んでる辺りは多少無神経なのかもしれないけど、基本的な考え方としてはむしろ弟の方がよく分かる。
反対に不可解なのが、真岸〔攻〕の方なんですよ。
これが例えば極端な例で亡くなったのが父親とかでこの事件のせいで一家離散、散々な人生を送る事になった位の動機があるなら真岸の行動も納得が行くんですが、社会人の真岸が正直何故5年後にここまで復讐に固執して行動するのか?と思っちゃいました。
もしくは真岸が人格的に極端な性格であるとか、んでも真岸は体育会系な面もあるし復讐行為以外は真っ当で人間性に酷く歪んでいるとも思えない。
あと5年後に真岸が色々調べて、志田〔受〕の無実を知るんだけど5年間も復讐を待つ位の根性があったらその間に調べれば分かったんじゃ……っていう気もしました。
どうもそこの設定が引っかかるんですが、互いの視点が切り替わって書かれる感情描写や冷血で無感情と見えていた志田の本当の姿が次第に真岸に伝わって行く部分とかは丁寧な描写で良かったし、メールの送り主が分かるシーンも成程~って感じで伏線が上手かったですな。
それだけに何故に真岸がそこまで復讐に拘ったのかのその根っこの部分に説得性が無いのが残念、そこがですね、どうも惜しいなー、と。
でも話的には面白いし読みがいもありましたが、それだけに惜しいなーとも思いましたです、はい。
砂原さんだからこそ読むハードルを上げているっていう点もありますけど、やっぱ惜しい。
小説はあまり読まない方(BLは)なので、他の方よりも甘い評価かもしれません
悪しからず…
キャラクター、ストーリー、九號先生の表紙と挿絵
すべてが私好みでした◎
特に志田さん
私は「高潔」であったのはやっぱり志田さんだったと思います
誰にも知られない優しさが切なくて、上手くできない不器用さがもどかしくて…
それに気がついた真岸はえらい!
真岸のおかげで志田さんは救われて、志田さんのおかげで真岸は解放された
お互いなくてはならない存在だった訳です
もしジジイと真岸が知り合わなければ、車を運転していたのが志田さんでなければ、志田さんがバイトを募集しなければ、2人が2人でなければ…
運命ってきっとこんな2人のことを言うのでしょう
見えない糸に導かれて2人は出会うための道を歩いてきた、その道のりはとても楽とは言えないものだったと思います
志田さんも真岸もお疲れさま、と言いたいです
それともおめでとう、の方がいいのかな
そういえばこのレビューを書くため読み返して気がついたのですが、志田さんって元々少しゲイの気があったのでしょうか?
大学の時人気者に頼られて~のくだりを読んで思いました
繰り返しになりますが、購入に至った理由のひとつである九號先生の表紙と挿絵、本当に美しいです
元々好きな作家さんでしたが、ますます好きになりました
表紙の雰囲気が内容にぴったりなんですよね~
額縁に入れて飾りたいくらい気に入ってますw
冒頭に書いた通り、小説は数えるほどしか読んだことありません
そんな私にこの本は小説の面白さを教えてくれました
オヤジ受とシリアスな雰囲気が好きなことも、この本で気づいたと言っても過言ではない!
砂原先生ではこういったシリアスは少しめずらしいとか…
先に他の砂原作品を読んでいたらこの本は読むことがなかったかもしれません
とにかく巡りあえてよかった!
そう心から思います